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決定的な差

親と子供の間にゃ、何をどうやってもひっくり返ることのない<決定的な差>があるんだよ。


それは<生きてきた時間>だ。これは言い換えれば<経験の差>でもある。


もし、リーネやトーイが、


<百歳まで生きた前世の記憶を持つ転生者>


だったとする。そうすりゃ<人生経験の差>は逆転するかもしれないが、少なくとも二人の様子を見てる限りはそれはない。いくら隠してても、同じ転生者の俺にはたぶん、ピンときちまうだろうな。


ふとした仕草とかで。


そもそも『隠す』場合だって、


『前世の記憶があるなんて言ったって信じてもらえない』


と思うから黙ってるだけだろうしな。相手に一切悟られないようにするために慎重に隠す必要もない。何しろ、『前世の記憶がある』なんてことが普通にあるとは思わないから、ついつい前世の記憶が漏れ出ても悟られる心配もないわけで。


となればやっぱり、俺の方が人生経験は圧倒的に上なんだよ。その俺が上手くできねえなら、十数年や五年やそこらしか生きてない経験を積んできてないリーネやトーイが俺以上にできなくて当然じゃねえか。そんな子供に自分より上手くやってもらおうとか、情けないとは思わねえか?


俺は思うっつーの!


なのに世の中にゃ、


『できて当然。できなきゃ罰しないといけない』


とかホザく奴らがいる。いや、意味が分かんねえよ。自分より未熟な相手にそれを期待する甘ったれた性根が理解できねえ。どこまで自分を甘やかしてほしいんだ?


と、今の俺なら感じるんだけどな。まあここまで言っても、


『親も人間なんだからちゃんとできないこともあるのは分かれ! でも子供がちゃんとできないのは許さん!』


って考える奴はいるんだろうし、前世の俺がまさしくそれだったから、だから村の連中にも俺の考え方を普及させる気はねえんだよ。理解する気もねえだろうし、一方的に押し付けられても反発するだけだろ?


前世でもそういう話ばっかりだったしな。


だから期待しない。周りに変わってもらおうとは思わない。同調する人間が増えてくりゃまだ<大きな声>でゴリ押すことはできても、それも結局は反発を招いて揉めるしな。


そうやって他人と揉めてる暇がありゃ、リーネやトーイと寛いでいたい。


それが俺の本音だ。




そうしてリーネとトーイに癒されて、仕事をする。同時に、俺がリーネとトーイを労って、


『生まれてくるんじゃなかった』


って思わせないようにする。それだけでぜんぜん違うぞ。実際に違うのを俺は確認したぞ。





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