叱らない方がマシ
そう言えば、
『親も人間だから完璧じゃないが、それでも子供を叱るためには棚に上げなきゃいけない場合もある』
とか言ってるのも前世にはいたが、いやいやいや、
『子供を叱るために自分のダメなところを一時棚上げしよう』
ってえその魂胆がそもそもダメなんだって。分かるだろ? 政治家とか見てたらそのまんまじゃねえか。えっらそうな御託並べるクセに、自分がもうロクでもねえことをしてるってのが透けて見えてて、
『お雨が言うな!!』
みたいに言われてんじゃねえか。『親も人間だから完璧じゃないが、それでも子供を叱るためには棚に上げなきゃいけない場合もある』ってんなら、
『政治家も人間だから完璧じゃないが、それでも自分の政策の正当性を語るためには棚に上げなきゃいけない場合もある』
というのも認めなきゃおかしいだろ。なのに実際には、気に入らない政治家のことは何を言っててもひたすら揚げ足採ってバカにするだけだろ?
同じことが親子の間で起こるってなんで分からねえ?
子供に『お前が言うな!!』って思われたらもうその時点でアウトなんだよ。叱ったところで説得力の欠片もない。へたすりゃ、
『叱らない方がマシ』
ってレベルまで落ちることだって有り得るぞ?
主に俺自身のことだけどな!!
とまあ、ブルーノことがあったから、これまで以上に自分を律しなきゃならなくなってるわけで、自分が暴走しないようにこうして猛烈な勢いでブレーキになる理屈を探さなきゃいけない状態だ。
俺がもし、自分の感情のままにブルーノの親をぶん殴ったとする。でも、村の連中にとってはブルーノの親の考えの方が<普通>で、そこで暴力を揮えば俺の方が<悪>だ。そうなりゃ俺は村の連中からリンチを受けて死ぬかもしれねえ。
で、血は繋がってなくても実質的にそんな悪人の子であるリーネとトーイは、どうなると思う? よくて慰み者&家畜。もしくはその場で死ぬまでリンチだろうよ。
もっとも、こう考えてること自体、
『俺がブルーノを救わなかったことを正当化するための言い訳でしかない』
ってのも事実だろう。ブルーノを救ってやれなかった俺が正しいとは言わない。俺の判断は間違ってたかもしれない。
それでもし、俺の判断が間違ってた、もしくは何か他に方法があったってのが第三者の目からは判明して、それで俺がブルーノを救ってやれなかったことを棚に上げて偉そうにリーネやトーイを叱ったら、納得してもらえると思うか?
少なくとも俺は納得しねえな。
『お前が言うな!!』
と間違いなく思うだろう。
『親だって人間だから完璧じゃない』と言うなら、『子供だって人間だから完璧じゃないし親の事情まで気が回らなくて当然』って考えなきゃおかしいだろ?




