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肉々しいスープ

そんなわけで、俺は取り敢えず、(ひさし)状になった部分の屋根に板を打ち付けて延長、浴槽に雨水が落ちるようにした。まあ、取り敢えずはこれでいいだろ。さらに、雨漏りしてる部分にも板とかを打ち付けて、少しでもマシにしていく。俺がそうしてる間にリーネとトーイにはパンを焼いてもらったり、スープを作ってもらったりした。スープは、猪肉がたっぷり入った肉々しいスープだ。


朝から中々ハードではある。でも、体が肉を欲してるんだよ。


そうしてできた朝食を、三人で食べる。トーイも肉はしっかり食べてくれる。肉はな。野菜ももっとしっかり食べてほしいところではあるものの、まあ、ちょっとは食べてるからいいか。


で、朝食を終えると、部屋の手直しを再開する。床は張ってなくて土のままだから、雨漏りと、地面を伝って入り込んできた雨水でぐっちゃぐちゃだ。できればやっぱり床は張った方がいいかなと思う。


屋根の雨漏りを何とかしたら、今度は壁だ。とにかく板の切れ端でいいから打ち付けて隙間を減らしていく。それがもう最高に不細工な出来で、自分でも笑うしかない。DIYでももっとマシなものを作る奴はいくらでもいるだろうな。


でも、もう一度言うが俺は大工じゃない。鍛冶屋だ。鍛冶屋としての仕事がちゃんとできてたらそれでいいんだ。


と、自分に言い聞かせる。でないと凹むよ。正直。なのにリーネは、


「トニーさんは、すごいですね。鍛冶もできてこんな小屋まで作れて!」


とまで言ってくれる。


「ありがとう。そう言ってくれると励みになる」


俺は素直にそう応えた。ただのおべっかなのか、本当にそう思ってくれてるのかは、表情を見れば分かる。火事場泥棒をやった時に俺に対して生じかけていた不信感も、感じ取れなくなってきている。


何とかここまで持ち直したってことだな。これからも努力を続けなきゃと思う。


『そんなことばっかり気にしてて疲れないか?』


ってか? は! いかにも前世の俺が言いそうなことだ。だが、自分のことしか考えず、面倒なことから目を背け続けた結果があれだったんだ。目先の楽を取って問題を先送りして、大爆発を起こしたのが女房と娘からの絶縁宣言だったってこった。


それと同じ失敗を繰り返す気なんかさらさらねえよ。考えるべきことは考える。やるべきことはやる。見るべきことは見る。聞くべきことは聞く。仕事でもそのはずだ。


それに気付いてしまった以上は、元には戻れない。愚かだった自分になんか戻りたいとも思わない。


愚かでいたい奴は勝手にすればいいけどな。



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