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これは必要なことなんだ。頼む

『俺が寝てる時にリーネにはトーイの様子を見ててもらわなきゃいけないから、今は寝てもらわなきゃ困るんだ。分かってくれ……!』


そんな俺の言葉に、


「はい……」


リーネは顔を伏せながら呟くように返事をした。納得はいってないんだろう。ただ、俺の言ってることは理解できるだけで。でも、今はそれでいい。トーイの隣で横になったリーネに、俺は、


「すまないな。心配で寝られないかもしれないが、これは必要なことなんだ。頼む」


改めてそう言った。


「トニーさんの言ってることも分かります。だからごめんなさい。おやすみなさい」


「ああ、おやすみ……」


何か頼みごとをされる時、頭ごなしに言われて素直に従おうって気になるか? 嫌々従って、だから何か手を抜こうと考えたりしないか? それじゃ意味ないだろ? なるべく丁寧に、なぜそうして欲しいのかを分かるように説明して納得してもらった方がいいに決まってるだろ?


なのに大人ってヤツは、その手間を惜しんで、


『子供は大人の言うことに従ってればいいんだ!』


って態度を取る。そうだ、『丁寧に分かってもらおうとする手間を面倒臭がってる』だけなんだよ。かけた方がいい手間をかけたくないってだけなんだ。


本当にくだらないし情けない。それで大人ぶろうってんだからな。


リーネは、確かにまだ子供かもしれねえが、でももう、それなりに道理も理解できるような歳なんだよ。だったらちゃんと説明した方が結局は確実じゃねーか。『急がば回れ』って言葉もあるだろ? 敢えてちゃんと手間をかけた方が結局は早いし確実だって、昔の人間も分かってたってことだろ。


それがなんで現代人には理解できねえ? 違うな、『理解できない』じゃねえ、『理解したくない』だけだ。自分が楽をしたい手間を省きたいってことでよ。


これもまさしく前世の俺だ。目先の手間を省きたくて、分かり切った厄介事を呼び込んでただけなんだよ。


愚かにも。


ましてやそれを繰り返すとか、冗談じゃない。


「ありがとうな……リーネ……」


俺の言葉に従って寝ようとしてくれてるリーネに感謝の言葉を捧げる、俺の気持ちを正直に口にする。


もちろんすぐには寝られなかっただろうが、しばらくすると、スースーと寝息を立て始めてくれた。それにも安心する。ここでリーネにまで倒れられたりしたらそれこそどうにもならなくなる。


トーイの容体は安定してるんだ。今の時点で無理をする必要はまったくない。そんなことも分からないで<大人>とか言ってられるか。




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