91.ほーむぱーてぃー
カーテンの隙間から朝日が差し込み、俺は目を覚ました。時計を見ると、時刻は朝5時。早く起きすぎちゃったな。
半身を起こすと、目の前にはラブホテルもびっくりな趣味の悪いハート型のベッドが広がる。
とりあえずここで寝るしかないから寝たけど、こんなに寝覚めの悪い朝は初めてだ。視界がピンクピンクしてやがるぜ。
隣で眠るアリスは俺がいるのと逆側に寝返りを打ち、再び寝息を立て始めた。
同じベッドにアリスがいるのは初めてじゃないけど、なんかこう、新婚感があって良いもんだな。ベッドが普通だったらもっと良かったのに。
「〜〜♪〜〜〜♪」
下の階からミーナちゃんの鼻歌が微かに聞こえてくる。彼女はもう起きて朝食の準備をしているようだ。なんて幸せな朝だろうか。ベッドさえ普通なら以下略。
「うーん......ルーシャス様......?」
おもむろにアリスが薄く目を開けてこちらを向いた。まだ完全に起きてはいないみたいだ。
「アリス、おはよう。俺は目が覚めちゃったから先に下に行ってるね」
「わかりましたの......おやすみなさいですの......」
そう言ってアリスは再び薄く開いていた目を閉じた。ほとんど寝ててもですわ口調なんだな。流石生粋のお嬢様。徹底してるね。
なんてことを考えながら長い螺旋階段を降りる。そう、螺旋階段なんだよ。まじ誰がこんな絵に書いたような豪邸にしろっつったよ。
「あ、ルーシャス様〜、おはようございます〜」
「おはようミーナちゃん。いつも朝早くからありがとうね。今日のメニューは何?」
「今日はサンドイッチですよ〜!見てください〜、形が普通ですよ〜?」
「ああほんとだ普通だ。いやでもなんか多くない!?」
「ああ、アリス様がよくお食べになると聞いたので〜」
「あー......そういえばそうだったね。昨日の夜も物足りなさそうにしてたわ」
山積みになったサンドイッチにちょっと引きつつ、俺はサミットテーブルに着く。
ほんとでかいよなこのテーブル。アリスが食べる量を考えたら結果オーライだけど、長方形の長いテーブルは威圧感が凄い。せめて円卓とかにしたら良かったのにな。
「ルーシャス様、今日はお2人ともお休みでひゃぶ〜?」
「おい噛みすぎだろ!!そこまで噛んだら言い直せよ!まあ休みだけど」
「でしたら〜、お引越し記念にホームパーティーでも開くのはどうですか〜?私頑張っちゃいますよ〜?」
ホームパーティーか。そういや騎士団に入ってから仕事の会話ばっかりしてたから、家族や友達ともゆっくり話ができていない。確かに良い機会かもな。
「良し、そうと決まれば早速呼べるだけ人を呼んでくるか。夜なら大体集まれるかな?」
「あ、できれば最初にイーナお姉ちゃんとセシリアさんを呼んできて欲しいです〜。お手伝いが欲しいので〜」
「あんたって子はご主人様をパシリにして......まあいいよ、とりあえず実家とオルグレン家に行ってくるね」
「ありがとうございます〜、お願いします〜」
ミーナちゃんの声を背に受けて、俺は転移魔法陣の部屋へと向かった。
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時間は夜。仕事を終えた人から家に来るように伝えてあるから、そろそろ誰が来る頃かな?
「ルーシャス様、誰が最初に来るか予想しませんの?外した方が今晩背中を流すでいかがですの?」
「いいね、やろうか!うーん......こういう時張り切ってくるのはコーディかな?」
「私の予想はメイヴィスですわ!彼女は真面目だから最初に来ると思いますの!」
「あらお2人なんか楽しそうなことやってますね!私も予想したいです!人間の魔獣とかどうでしょう?」
「うんセシリアさん、冗談でもやめてね?まあ相当な人数騎士が集まるからむしろ安全かもしれないけど」
ひょこっと顔を出して強引に会話に入ってきたセシリアさんに軽くツッコミを入れていると、奥の部屋のドアから光が漏れ出す。早速誰か来たみたいだな。
「え、誰もいない!ちょっと早く着きすぎちゃったかも......」
そう言いながら出てきたのはなんとハンナ。コーディと一緒に来なかったのか。
「コーディは訓練が長引いてたから置いてきたのよ。それにしても立派な家ね!私はこんなところに住めないわ」
相変わらず何も聞いていないのに説明してくれるハンナ。慌てん坊なところは変わってないんだな。
「2人とも予想が外れましたわね......流し合いっこですわね?」
「そうなるな。まあそれが1番平和的だろ」
アリスとそんな会話をしていると、続々と招待した人たちが転移してくる。
シルヴィアとメイヴィス、ジュリアお姉ちゃん、コーディとマリサさん、クレアさん、母さん、エリック先輩、ブラウン先生、ファーノン先生、ダスティンさんの順だ。騎士団に所属してる人たちは自分の隊の人と一緒に来たんだな。見慣れない組み合わせだ。あ、でもハンナだけジュリアお姉ちゃんと一緒に来なかったな。慌てて来たんだろうなあ。
そして最後に父さんとイアンさん、ジェームズがやって来て全員揃った。俺とアリス、メイドさん3人を含めて総勢20人。ずらっと並んで座る景色はとても賑やかだ。
「ルーシャス様〜、みなさん揃ったので音頭をお願いします〜」
ミーナちゃんにそう言われ、俺はまだ座り慣れない家長席から立ち上がる。
「みなさん、今日は俺たちの為に集まってくれてありがとうございます!まだお酒は飲めない人が大半だけど......めいいっぱい楽しんで行ってください!それでは乾杯!」
俺の音頭でみんなはグラスを合わせる。みんな口々に話し出すが、話題は専ら俺とアリスの結婚式のことだ。
「ルーシャスがもう結婚する歳になるなんてねえ......ジュリアも良い人を見つけてくれたらいいのに」
「ママそれは無理だよ。ルーシャスくんより良い男がいないよ?」
「ジュリアさん、あっしはどうでやんすか?ルーシャスのアニキに1番従順でやんすよ!」
「コーディ、こんなとこで、ナンパ、ダメ」
なんか思ってたよりかなり賑やかだな。こんな機会滅多に無いからやっぱりみんな喋るんだなあ。
そんなことを思いながらアリスと一緒にゆっくり食べていると、ジェームズのお母さん、マリサさんが俺たちのところへやって来た。
「ルーシャスくん、アリスちゃん、結婚おめでとう!改めてお祝いさせてちょうだい!」
「マリサさん、ありがとうございます!」
「そういえばジェームズはそういう話は無いんですの?」
「それが聞いてくれる2人とも!ジェームズったら結構騎士団でモテモテみたいで!ルーシャスくんの親友ってのも効いてるみたいでね、この間あの子ったら......」
そうだった、マリサさんはうちの母さん以上によく喋るんだった。アリスはあまり面識が無いからこの人に話題を振っちゃいけないってこと知らなかったんだな。
マズイぞ、このままだとマリサさんの独壇場だ。誰か助けてくれないかな......。
「マリサ、ルーシャスくんが困っているからその辺で止めとこうか?あとジェームズが凄い顔で見てるぞ」
「あなた!あらやだジェームズったら照れちゃって!良いのよここでお相手を見つけちゃっても!ほら、あの黒髪の子とかどう?」
「えっ私!?ジェームズくんはよく分かんないこと言うからちょっとなあ......」
突然指名されたシルヴィアが困り果てる中、父さんとダスティンさんは熱心にブラウン先生を騎士団に勧誘している。あの人めっちゃ強いもんな。ちょっと筋肉が過ぎるけど。筋肉が過ぎるってなんだよ。
そしてエリック先輩はファーノン先生と話し込んでいるようだ。聞いてる限りファーノン先生に転移魔法陣の仕組みを話しているらしい。小学校にも導入できたら便利だもんな。というかファーノン先生が通勤で楽をしたいだけかもしれない。相変わらずダルそうだし。
「ルーシャス、アリス、結婚おめでとう。結婚式での2人は綺麗だったぞ。まるで具を食べ尽くしたおでんの汁のようだった」
「ジェームズお前ほんと例え酷いな!?おでんの汁を綺麗だと思ってたのかよ!」
「ありがとうですわジェームズ。実は私、知ってますのよ。あのこと」
アリスが小声でジェームズにそう言うと、ジェームズは一瞬ギクッとしたようだった。なんのことだ?
「ルーシャス様、ジェームズはメイヴィスにお熱なんですのよ。2人のこと、応援してあげませんの?」
「おおそうなんだ!応援してやろうじゃないか」
「アリス......後で覚えておけよ。ダスティンさんにお前らの性生活を暴露してやる」
「うんほんとに止めろ!?てかお前知らねえだろ!!」
「あら、それぐらいでは私は揺らぎませんことよ?むしろ自分で暴露してますの」
「それはそれで止めてねアリス!?どんな罰ゲームだよ!!」
ボケ率の高い集まりは賑やかなまま時間が過ぎ、明るい夜は更けていった。
ルーシャス「長い割に内容が無えな!?」
アリス「まあまあ、楽しかったから良いではありませんの。たまには息抜きも必要ですわ」
ルーシャス「いやこの作品息抜きし過ぎじゃないかい!?抜きすぎて萎んでるわ!」
アリス「まあ作風が作風ですから......文句なら作者に言うのですわ」
え、また飛び火してきたんだけど!?




