89.とつぜんのけつい
数日後、俺は先日のメイヴィスとの会話について考えていた。
アリスにプロポーズかあ......。行く行くはそういう時が来るもんだとは思ってたけど、もうそんな話をされるとは思わなんだ。
この世界での12歳はもう大人なんだなあ。
ちなみにメイヴィスとの会話を聞いていたシルヴィアは、「え!?まだ結婚してなかったの!?」と驚いていた。いやだから結婚できるのは14歳からだってば。
思えばアリスと出会って恋人になったのは5歳の時。もう7年ほど経っていて、アリスが隣にいるのは当たり前になって来ていた。
小学校でも高校でもずっと同じクラス。飛び級も一緒にして、騎士団に入っても時期総司令官夫婦(見込み)として常に隣にいたのがアリスだ。
このままずっと一緒にいるんだろうなとは思っていたが、家族になることはぼんやりとしか考えていなかった。もうちゃんと考えないといけない時期に来てるのかなあ。
「あ、ルーシャス様!お疲れ様ですの!」
そんなことを考えながら騎士団本部を歩いていると、前からアリスが俺を見つけて駆け寄って来る。
「ああ、アリス。弓術隊の視察は終わったの?」
「さっき終わりましたわ!お母様ともお話してきましたの!」
「へえ、クレアさんはなんて?」
「私たちの結婚式を早く見たいって言ってましたわ!私も楽しみですの!」
おお、なんかめちゃくちゃタイムリーな話題だな。ていうかクレアさん、前からずっとその話してないか?娘の結婚式が楽しみなのは分かるけど、気が早いと思うんだ。
「ところでルーシャス様、何か考え込んでいらっしゃるようでしたけどどうしましたの?」
「えっ?あ、ああ、魔法陣のことをちょっと」
虚をつかれた俺は適当に誤魔化してその場を逃れる。まさかここで本人にプロポーズの話をするわけにもいかないもんな。
「また魔法陣のことですの......。ちょっと私へのプロポーズをどうしようか、なんて考えてるのかと期待しましたわ」
冗談めかしつつもちょっと本当に残念そうなアリス。手を後ろで組み、落ちていた小石を蹴飛ばす。
お嬢さん、当たりです。本当はあなたへのプロポーズについて考えてましたよ。
なんてことを言えるわけもなく、言いたい気持ちをぐっと堪える。
「でも、本当にそろそろプロポーズしてくれてもいいんですのよ?私、いつしてくれるのかってずっと待ってますの」
「えっ......やっぱり、そうなのか」
「もちろんそうですわ!私たちがまだ結婚できない年齢なのは私も分かっていますの。でも、婚約者にならなれますわ!婚約自体はいつしても問題ないですもの」
「そっか......そうだよな。よし、ちょっと待ってて!」
もう決めた。俺は懐から転移魔法陣が描かれた紙を取り出し、花屋の前へと転移する。
「すみません、バラの花束ください!108本で!」
「へ!?ど、どこから今来ました!?」
「それはいいから!お願いします!」
「わ、分かりました!」
強引に花屋さんに作ってもらったバラの花束を受け取ると、俺は転移魔法陣でアリスのところへと戻った。
「アリス、ただいま!」
「お、おかえりなさいですの......。一体どこに行ってましたの?」
「それはこれを見れば分かるんじゃないかな?」
そう言って俺はさっき受け取ったバラの花束を背中から出す。
「えっ......!これは!」
「アリスの言葉で俺も決心がついたよ。アリス、まだちょっと気が早いけど、14歳になったら俺と結婚してください!」
俺は片膝を着き、アリスに花束を差し出す。
思い立ったが吉日って言うだろ?俺にロマンチックな演出なんて難しいことはできない。
いや、やろうと思えばある程度のシチュエーションは用意できるけど、こういうのはサプライズだから良いんだよ。多分。
なら、今この場でいきなりプロポーズしちゃうのが一番サプライズだ。
それに、アリスはずっと俺のプロポーズを待っていてくれた。そんな健気な娘を、これ以上待たせて何の得があるというのか?
善は急げだ。俺はここで、アリスとの将来を決める。
突然のことにアリスはフリーズしてしまっている。やべ、流石にいきなりすぎたか?
「ル、ルーシャス様、これは現実ですの......?」
「もちろん現実だよ。俺は今から、アリスの婚約者になりたいんだ。もっとロマンチックなシチュエーションを用意した方が良かったかな?」
すると、アリスの目から二筋の涙が流れた。
「そんなの、要らないですの!ルーシャス様が私との結婚を考えてくださったことが何より嬉しいですわ!本当に、私と婚約してくださいますの?」
「ああ。他に誰とするって言うんだ?受け入れて、くれるかな?」
「もちろんですわ!私、正直ルーシャス様からプロポーズしてくださるとしたらもっと先だと思っていましたの。ルーシャス様は私との結婚を成人してからと思っていらしたようだったので。でも、今ここで心を決めてくださったことが本当に嬉しいですわ!こちらこそ、私の婚約者になって欲しいですの!」
涙声ながら一気に話すアリス。その顔は真っ赤になっていて、涙でぐちゃぐちゃだ。
だけど何故だろう。彼女の涙は、世界で一番美しく見えたんだ。
アリス「遂にこの時が来ましたの!!私、嬉しいですわ!」
ルーシャス「突然になっちゃってごめんな。俺も作者も不器用だからこんな形になっちゃったけど」
アリス「全然問題無いですわ!そのストレートさが嬉しいですの!作者、今回はナイスでしたわよ!」
お褒めに預かり光栄です!




