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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「ヴィー様が私のお願いを叶えてくれようとしてくれるだけでも嬉しいんですよね」―制服デート編④―

「わぁ、やっぱり竜の上から見る景色はとても素敵ですね」



 さて、マドロールとヴィツィオは竜の上にいる。学園都市までの道のりをすべて馬車で移動すると時間がかかってしまうため、途中まで竜で移動し、その後馬車で移動することになっている。

 今回、お忍びで学園都市に行くのでそういう手筈になっている。




「見て、ヴィー様。あっちの街、上から見ると芸術的ですねぇ。凄い綺麗に並んでいるっていうか」

「ああ」

「帝都も上から見ると綺麗な街並みですけど、帝国は上空から見ると考えて建てられている街が多いんだなって思います。私の祖国のティドラン王国は上空から見るとどんな感じなんだろうって気になります!」

「今度行くか」

「いいんですか? 嫁いだからには中々帰れないのかなーって思ってたんですけど」



 基本的に嫁いだ後に祖国に帰ることはあまりない。それだけ移動に時間がかかるのも大きな理由である。それに竜での移動が出来るならともかく、馬車で移動する場合は特に魔物の脅威にさらされてしまうので、危険もある。

 また嫁いですぐの帰国は、夫婦の不仲の噂などが流れたりもする。そもそも嫁いだら生家に帰らないものである。



「マドロールが望むなら構わない。俺も行く」

「わぁ、ヴィー様も一緒に来てくださるんですか? 凄く行きたいです。ヴィー様がティドラン王国に来てくださるなら紹介したいところ沢山あります! お父様たちに私のヴィー様がどれだけ素敵なのか語りたいです! ヴィー様が私の大事な家族と仲良くしてくれたら嬉しいですし、ヴィー様が私の祖国気に入ってくれたらいいなぁって思います!!」

「ああ」



 マドロールとヴィツィオはそうやって未来の話を楽しくする。


 ちなみにこの後しばらくして妊娠が発覚して安静にする必要が出たため、皇帝夫妻がティドラン王国に足を踏み入れるのは数年後となる。






「ヴィー様は学園都市で何をしたいとかありますか?」

「マドロールが楽しめればそれでいい」

「ふふっ、私はヴィー様と制服デートが出来るというだけでも楽しくて仕方ないと思います。想像しているだけでワクワクして、もう大興奮してますから」

「そうか。なら良かった」

「あとなんていうか……ヴィー様が私のお願いを叶えてくれようとしてくれるだけでも嬉しいんですよね。もう本当にヴィー様は私を喜ばせる天才です」



 マドロールの言葉に、ヴィツィオは笑った。


 その笑みを見ただけでまたマドロールは興奮した様子を見せる。




「もうその笑み最高です! 私の言葉が嬉しいって喜んでくれているヴィー様は素敵すぎますよ!! その笑みが私にだけ向けられているかと思うと……ふぅ、はしゃぎすぎて疲れました! 落ち着きます!」



 マドロールはこれから学園都市で制服デートが出来ること、ヴィツィオが自分のお願いを叶えようとしてくれていること――そういう全てが楽しくて大興奮しているようだ。




「それにしても学園都市って名前はワクワクしますよね」

「そうか?」

「はい! なんかワクワクします。学園都市の中では学生たちが沢山のドラマを作り上げているんだなって思うと楽しそうですよね。学園都市のことがもっと知れたら妄想がさらに広がりそうで……ちょっと色々話を聞きたいものですね!!」

「マドロールが望むなら語らせる」

「強制は駄目ですよー。お忍びでデートした時に学生に話を聞くのもいいかなぁって。現役の学生たちの話聞いたら楽しそうですし、何か改善するべきことがあったら施策を考えることも出来ますしね! まぁ、私が話を聞きたいだけですけど」





 マドロールはお忍びでデートをする時、学生から話を聞こうと提案して笑った。

 マドロールは人と話すことが好きだ。あまり喋ったことのない人たちと会話を交わすことも好きである。





「したいようにすればいい。でも男とはあまり喋るな」

「ふふっ、分かってますよー。せめてしゃべりかけるならカップルにしましょう! お相手がいる方ならばまだ安心できません?」

「じゃあ俺が聞くからあんまりしゃべるな」

「本当にヴィー様は可愛いですねー。ヴィー様が望むならなるべく男の人と喋るときはそうしますね」





 独占欲満載の発言にマドロールはにこにことしながらそう答えるのだった。




 ――それから会話を交わしているうちに、まずは一つ目の宿泊する街へたどり着く。



 そこの領主に歓待を受けて一泊した後、また竜に乗って移動する。学園都市にほど近い場所で竜から馬車へと乗り換え、今度は馬車の旅へと変わる。





「ヴィー様、馬車での移動も楽しいですね。ヴィー様とくっつけるの、幸せです。なんだか暖かくて眠くなりますね」

「寝ていい」


 そう言われたマドロールは、それからしばらくしてヴィツィオに寄りかかって眠り始めるのだった。






 そうやって皇帝夫妻の幸せな道中は過ぎていく。



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