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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「むふふ、はぁ……素敵すぎる!!」―制服デート編②―

「妄想?」

「はい。とても幸せな夢だったのでこう……、妄想が広がってしまって!!」



 マドロールは基本的にヴィツィオに対して大変素直である。というより推しに対して彼女は嘘がつけない。推しからひとたび見つめられたマドロールは、すぐに喋ってしまうものである。



「ヴィー様が夢にも出てきてくださっていて、私、起きていても寝ていてもヴィー様が居てとても幸せだなって思いました!」



 現実でも夢の中でもヴィツィオがいてくれて幸せなのだと、マドロールは全く恥ずかしがりもせずに口する。



「そうか」

「はい! ヴィー様、私の夢にいつも出てきてくださってありがとうございます。ヴィー様は私のこと、夢で見たりします?」

「俺はあまり夢を見ない。ただ出る時は出る」

「それは嬉しいです! ところでヴィー様、またお時間があったら……、ヴィー様が大丈夫そうだったらでいいので制服着てくれませんか?」

「マドロールが着て欲しいなら着る」

「やったー! ありがとうございます。ヴィー様。あのですね、今見た夢で私とヴィー様が学生みたいな感じだったのです!」

「学生?」

「はい! 私もヴィー様も学園には通ったことはないですけど、でも夢は現実に起きないことも起きるでしょう? 私、今見た夢の中でヴィー様と学生をやっていて、とっても楽しかったんです!!」



 マドロールは元気に夢で見た世界についてヴィツィオに語る。

 本当に心の底から楽しかったのだろう、頬を赤らめて高揚した様子である。興奮していて何処までも楽しそうなマドロールを見るとヴィツィオも幸せなのか、口元を緩めている。




「そうか」

「はい。夢の中でヴィー様は学園内で一目置かれている感じで、同じ教室で一緒に居て……、もしヴィー様と学園生活を送っていたらこんな感じだったのかなぁ……ってそれを考えるだけで凄く妄想が膨らみますよねぇ」



 マドロールは前世からも推しであるヴィツィオのことで沢山妄想していた人間なので、そういう夢を見てしまったら中々止まらないものである。



「ヴィー様が制服を着てくださったらますます妄想が広がりそうですわ」

「これから着て仕事するか」

「まぁ!! いいんですか? ふふっ、とても嬉しいです。今日は一日中、ヴィー様の制服姿に妄想する日になりそうです! はっ、でもヴィー様の制服姿なんてものが目の前にあったら、私、全然集中できないかもです……」

「別に一日ぐらい集中できなくてもいいだろ」



 ヴィツィオはマドロールの行動を制限する気は全くなく、何かを強要するつもりもない。

 例えばマドロールが皇妃としての責務を何もこなさずに自堕落に過ごしていたとしても気にしないだろう。






 そういうわけで今日の皇帝夫妻は、学生服で公務をこなすことになった。……ちなみにマドロールも着ているのは、ヴィツィオが望んだからである。




 周りの侍女や騎士、文官たちの間でもそのことはすっかり噂になっていた。彼らは「皇妃様が望むからと制服姿で公務をするなんて」と驚いていた様子だったが、皇帝が皇妃に甘いのは周知の事実なのですんなり受け入れていた。





「むふふ、はぁ……素敵すぎる!!」


 ヴィツィオを見つめながら、マドロールはそれはもう幸せそうであった。





(制服姿のまま書類に目を通すヴィー様。はぁ、なんて素敵なのかしら。あれよね、学園にヴィー様が通っていたとしたらやっぱりヴィー様はトップに立っているイメージもあるから生徒会長とかやっていてもいいかも! 生徒会のメンバーは全員部下って感じで、ヴィー様が一人で統治している感じ。もしくは生徒会なんかに入らずにただ一匹狼みたいな感じで過ごしていて、それでいて学園では発言力が強いみたいな? どちらでも素敵よね!! どちらも凄く想像出来るわ。ヴィー様は世界で一番かっこいいからもちろん色んな方がヴィー様に近づいてくるのだけど、それを全部どうでも良さげにしていて……、一人でこう誰もいない場所で過ごしている感じとか? 何をするにも目立つから、ヴィー様をライバル視するような生徒もいたりする感じかしら? でもヴィー様はそういうの相手にしない感じよね)




 マドロールの妄想は止まらなかった。




 目をキラキラさせてじっとヴィツィオを見ており、その手はあまり進んでいない。たまにはっとして書類に目を通しているが、制服姿のヴィツィオという素敵なものを前に集中など全くできないマドロールであった。




(夢の世界みたいに私とヴィー様が一緒に学園に通っていたら、一緒に授業を受けて、昼食を食堂とかで食べて、それで放課後はデートとか? 制服デート……とても素敵な響きだわ。ちょっとやってみたいけれど、流石に難しいかしら? というか、ヴィー様は私の希望で制服は着てくれているけれど、流石に制服姿で外に出るのは嫌がるかな? でもやばいわ! 妄想が止まらなさ過ぎて、行きたい……)



 マドロールはヴィツィオと制服デートをしたいという欲望でいっぱいになっていた。



「マドロール、どうした?」



 楽しそうに目をキラキラさせていたマドロールが、急に表情が変わったのでヴィツィオが声をかける。



「妄想がはかどって学園に通っていたら私とヴィー様は制服デートとかもしていたのかなって思ったら、制服デートしたいなぁって気持ちでいっぱいになりました! えっと、でも流石にそれは難しいかなぁとか、ヴィー様は皇帝で私は皇妃だからそういうのどうかなーとか思っちゃって……」




 ちなみにマドロールがそう口にした瞬間、皇帝夫妻のお忍び制服デートが決行されることに決まったのは言うまでもないことである。



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