「ヴィー様の絵、もっと上手に描けるようになりたいです!」
ヴィダディ、妊娠前ぐらいなイメージ
「よしっ、完成!」
マドロールは、満足気に頷く。
そんなマドロールの前には、不遜に椅子に腰かけているヴィツィオがいる。
――今、皇帝夫妻が何をしているかと言えばマドロールがヴィツィオの絵を描いていた。
マドロールの頼みじゃなければヴィツィオはまず絵のモデルなどやらない。皇帝夫妻の絵に関しても最近描かれることが多いのは全てマドロールが頼んだからでだる。
結婚してからヴィツィオの絵は増えている。
「終わったか?」
「はい! ヴィー様の絵を描きました!! もう、本物のヴィー様の五分の一とかそのくらいしか表せなくて、自分の下手さに落ち込みます! でもヴィー様の絵を描くのは凄く楽しいですけど」
マドロールはそんなことを言いながら、自分の描いた絵を少し不満そうに見ている。
マドロールにとって最高の旦那様であり、一番の推しであるヴィツィオ。その絵を好きな時に描けることは嬉しいけれども、その良さを十分に描けてないと思っている様子である。
「そうか」
「はい!! ヴィー様のかっこいい姿も可愛い姿もちゃんと描きたいのに難しいですよねぇ」
「マドロール、それよこせ」
「はい!! 下手ですけど、どうぞ! というか、毎回、私が描いたヴィー様回収してますけど、どうしてるんです?」
「全部保管してる」
「まぁ、全部ですか? はっ、まさか私がなんとなく描いた落書き的なものとかも?」
「ああ」
「ちょっと、恥ずかしいです! そんなに上手じゃないので、あまり他の人には見せないでくださいね?」
「ああ。俺だけが見る」
マドロールの描いたヴィツィオの絵はもれなく全て本人の手に全て収まっている。
マドロールが描いた自分の絵を他の人に見せるつもりも全くなく、そういう所も独占欲に見ている。
「私、ヴィー様の絵、もっと上手に描けるようになりたいです!」
「今の絵でも十分だろ」
「もー、ヴィー様、私が描いた絵なら何でもいいって思ってません? ヴィー様が甘やかしてくれるのは嬉しいですけど、でも客観的に見て私の絵ってそこまで上手じゃないでしょう?」
「マドロールの絵を下手とかいう奴はどうにかするから言え」
「ヴィー様! そういうのは大丈夫です! それより私的にはヴィー様のかっこよさを十分に表わせてないのです! なので、こう、私が満足するためにももっとヴィー様の絵を上手く描けるようになりたいです!」
ヴィツィオはマドロールに周りがびっくりするほど甘いので、マドロールの決してうまくない絵でも全く問題ないらしい。おそらくマドロールの言う通り、彼女の描く絵ならばなんだって良いと思っている様子である。
しかしマドロール本人的には、もっと素敵に自分の推しを描きたいので自分の絵の実力には不満があるようであった。
「というわけでヴィー様、絵を習いたいので画家を呼んでもいいですか? もちろん、女性で探します!!」
自分がヴィツィオにどれだけ愛されているか知っているマドロールは、異性だと絶対にヴィツィオが許さないだろうなというのを分かっているのでそう提案する。
「好きにすればいい」
「はい。ありがとうございます。ヴィー様、一生懸命練習してもっとかっこよくヴィー様描きますからね? だから私が描きたくなったら付き合ってくださると嬉しいです!」
「ああ」
「ふふっ、ヴィー様、本当に優しいです。大好きです。沢山これからもヴィー様の姿を描かせてもらえるって考えただけでニマニマしちゃいます!!」
マドロールはそう言って、幸せそうに微笑む。
マドロールにとって、帝国の皇妃として、推しの奥さんとしてこの場にいられる日々は本当に幸せで仕方がないのである。
(私にもっとヴィー様を上手に描ける技術が身についたら、描きにくい構図のヴィー様とかも描けるわけよね!! 完全プライベートのヴィー様を素敵に描けたらもうきっと楽しいに決まっているもの!!)
考えただけでワクワクしているのか、一人息を荒くして興奮気味のマドロールであった。
「マドロール、画家はこっちで探しておく」
「ありがとうございます。ヴィー様! ヴィー様が選んでくださった中から選びますね!」
マドロールはヴィツィオが選んだ相手ならば問題はないと信頼しかないので、笑顔で頷くのであった。
――それからマドロールが絵を上手くなりたいという理由だけでヴィツオは皇室の影たちを動かして探させた。
基本的に影たちはヴィツィオとマドロールに対しての忠誠心が強いので、そういう仕事も喜んでこなしている。忠誠を誓う皇帝と、その皇帝に唯一意見が出来る皇妃は彼らにとっては何人にも代えられない存在である。
あと幸せそうなヴィツィオとマドロールを見るのが好きなものも多数いるので、マドロールが喜ぶためならと彼らの行動は早い。
そういうわけで早急に画家の情報は集められた。そして一人の女性画家が皇室へと召されることになり、元々下位貴族の娘であったその画家はその後、幸せに暮らしていくこととなる。
――そして絵が上達したマドロールは、楽しそうにヴィツィオの絵を描き続けることになる。その絵は当然、ヴィツィオ以外は基本的に見れないようになっているのだった。




