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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「別に悩んでもいいと思うぞ」―皇太子視察編⑪―


「話にだけ聞いていたが、とてもここは派手だな」

「この国は芸術面が強いからな。先代の国王が芸術家を重宝していたというのもあって、そういう文化が凄い」



 現在、ヴィダディとジャダッドがいる国は芸術文化がとても栄えている。その国の首都を訪れているわけだが、なんとも革新的というか、帝国とは全く異なるありさまを見せている。



 これだけ芸術に力を入れられているというのは、この国が平和な証である。



 芸術文化に力を入れているこの国は、逆に言えば軍事力などはあまりない。それでもこの国が攻め入られることがあまりないのは、二つの理由がある。

 一つはこの国の芸術を他国の人々も愛していること。

 もう一つはこの国が偉大な帝国と同盟を結んでいること。

 この国に手を出せば、帝国が反撃をする。

 そういうのが抑止力になっているのである。それもあってこの国は帝国のことをありがたがっている国民の方が多かった。



 それもこの国は帝国と同盟国になる前、戦争をしていたからというのも要因ではあるだろう。他国から攻められ、多くの命が失われた。勝者となったものの、国力は下がってしまった。そこで帝国と縁を結び、今の形がある。

 この国ではそういう戦争のことが話継がれており、今平和なのは帝国の威光があるとされているのである。




「……なんか、帝国に好意的な国しかないな」

「あのなぁ、ヴィダディがお忍びで視察に行くのならそういう国以外にはいかせられねーよ」

「それは分かっているが、世の中には信じられないことだけど父上のことを気に食わない人もいるんだろう?」

「それはそうだな。そういう愚か者も世の中にはいる。それに陛下は敵対する者を排除することはためらわないだろう。そういう排除された側の人間は陛下を憎んでいてもおかしくない」

「……そもそも父上と敵対しなければいい話では?」

「まぁ、俺もそう思う」




 ヴィダディとジャダッドは、その国の首都を馬車で移動しながらそんな会話を交わす。



 ヴィダディは帝国の皇太子である。その身は何よりも優先される。だからこそ今回お忍びで向かう場所も限定的である。皇太子という身分であるヴィダディは行動は制限されているものである。

 ヴィダディは皇太子という身分でありながら、それなりに自由に生きさせてもらっていると思う。

 それは皇妃であるマドロールが子供をのびのびと育てたがったからかもしれない。ヴィダディは家族に愛されている自覚がある。家族に愛されているからこそ、少し不自由でも満足して暮らしてはいる。




「でもそういうやり取りって難しいな。どこまで許して、どこまで罰するか。父上は全く悩んだりもしないから、私もそうありたいものだ」

「別に悩んでもいいと思うぞ。反旗を翻したと一口に言っても様々だろう。その辺は別に一人で決めずに、周りに相談して決めればいい。どちらにせよ、そういう連中へ対処をするってことは少なからず恨みを買うことだしなぁ」




 皇帝であるヴィツィオは、誰かからの評価を気にしない。周りから恨まれようが、どういう感情を向けられようがどうでもいいと思っている。そういう人間だからこそ判断を迷うことはない。




「それもそうだな。でも父上が許可してくれるなら、いつか対話はしてみたいかな。何をどう思って父上に反感しているのか」

「その辺はヴィダディに行かせても問題がないと陛下が判断したら行けるだろ」

「そうならなければな」



 ジャダッドの言葉にヴィダディは笑った。



 ヴィダディはまだ十三歳で、親の庇護下にある年齢である。だからこそまだそういう風に行動することは出来ない。そういうのはヴィダディがもっと自分一人でなんでもでき、判断できるようになってからのことになるだろう。

 そういう会話を交わした後に、ヴィダディとジャダッドは馬車を降りて、まずは宿を取った。

 そして宿に荷物を置くと首都の探索を始めた。




「派手で革新的な雰囲気で、たまに来るのはいいけれどずっと見ていると飽きそうだな」

「この首都、結構頻繫に様変わりしているはずだ。大々的に首都内のデザインが変わっていくから時折来る分には楽しいと思う」

「そんなに変わるのか?」

「ああ。何年かに一度あるコンテストで優勝すると、首都を塗り替える権利を与えられるとか、そういうのだったと思う」

「そのコンテスト、名前は聞いたことがあるがそんな副賞あったのか……」

「そうそう。去年コンテストがあったから、しばらくこのままだろうけど」

「へぇ」




 ヴィダディはジャダッドからの説明を聞きながら、興味深そうな表情を浮かべていた。






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