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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「母上はああいう人たちに囲まれて生きてきたからああなんだろうなって分かる」―皇太子視察編⑩―

「皇太子殿下、大きくなりましたね」




 ティドラン王国の王であり、皇妃であるマドロールの兄であるユラルは柔らかい笑みを浮かべてヴィダディを見ている。

 互いに国を治める一族であるというのもあり、ユラルとヴィダディが最後に会ったのは三年ほど前である。



「お久しぶりです。伯父上」



 ヴィダディはユラルとは数えられるだけしかあったことはない。ただ手紙のやりとりはしているし、贈り物もよくもらう。何より母親であるマドロールがユラルのことを慕っている様子を見せているので、ヴィダディはユラルに好感を抱いている。




 その場にはユラルだけではなく、マドロールの両親である元ティドラン王国の国王夫妻、ユラルの妻とその子供たちの姿もある。

 ヴィダディは従兄弟にあたる彼らに会うのは初めてのことである。

 ヴィダディよりもいくつか年下のティドラン王国の王女は、ヴィダディのことをキラキラした目で見ている。



「凄くかっこいい!!」

「ありがとう」



 従兄弟から向けられる言葉に、ヴィダディはお礼を告げる。



 基本的には他人に対しては冷たいヴィダディだが、初めて会うにしてもマドロールの血縁者なのでその王女に対してもそれなりに優しい態度をしていた。



 ジャダッドも緊張しながらもその場で挨拶をした。



 緊張した面立ちで、取り繕った様子のジャダッドにヴィダディは口出ししていた。その結果、諦めてジャダッドはユラルたちの前でもいつもの調子の口調になったので、ユラルたちは驚いていたものである。




「ヴィダディ様、マドロール様の話聞きたい!」



 王女はまだ幼いからとマドロールに会ったことがないため、噂でしかマドロールを知らないらしく、興味津々と言った様子でヴィダディに話しかけていた。



 ちなみにティドラン王国には現在、王女が一人と王子が一人いる。

 王子はまだ五歳である。その王子の相手はジャダッドがしていた。




「母上はとても優しくて素晴らしい方だ」

「そうなんですね! 皇帝陛下はマドロール様のことを大変溺愛しているって聞いてます!」

「そうだね。それと同様に母上も同じぐらい父上のこと愛していると思う」

「まぁ! 凄く素敵!!」




 今年十一歳になる王女は楽しそうに声をあげている。


 まだ初恋もしたことのない王女は恋愛小説を好んで読んでいる。それは創作小説や実話をもとにした小説など様々である。このティドラン王国ではマドロールの話は沢山されているので、特に皇帝ヴィツィオと皇妃マドロールの物語はお気に入りである。




「私もそんな風に誰かから愛されたいですわ! ヴィダディ様はどなたか好きな人いたりするんですか?」

「私は今の所いないね」

「そうなんですか? ヴィダディ様、とってもかっこいいからそういう方いそうって思うのに」

「そういう相手はゆっくり決めるべきだ」

「ゆっくり……私も王族だからいずれお父様が決めた方と結婚しないといけないしなぁ」

「政略結婚でも上手くいくパターンはある。父上と母上もそうだから」



 王女は仲睦まじいと噂の皇帝夫妻が政略結婚と聞いて驚いた顔をしていた。

 皇帝夫妻は政略結婚であるというのは周知の事実なのだが、それよりも仲睦まじい様子が広まっているので恋愛結婚のように思われているようだ。




「政略結婚でもそれだけ愛されているって凄く素敵です!! 私も結婚した後、愛されるようになりたいなぁ」

「相手に対して思いやりを持って接すれば、良い関係を築けると思う。もし結婚して大変な目に遭ったら私に連絡してくれればいい。親族が大変な目にあっているのを放っておくと母上が悲しむから」

「ふふっ、ヴィダディ様が助けてくださるの? 凄く心強いです! それにしてもマドロール様ってとても家族思いなんですね」

「ああ。母上は周りのことを大切に思っている。だからもし本当に心から困ったことがあったら連絡をすればいい」



 ヴィダディがそういえば、王女は嬉しそうに笑った。

 それからしばらく話してからヴィダディたちは王城を後にする。








「ジャダッド、思ったより楽しそうに話してたな」

「ああ。それにしても流石皇妃様の家族って感じだよなぁ。話していて嫌な感じが全然しない」

「母上はああいう人たちに囲まれて生きてきたからああなんだろうなって分かる」

「そうだよな。皇妃様の家族らしいっていうか、感じが良い人たちで凄い幸せな感じがする」




 ティドラン王国の王族はヴィダディとジャダッドの目から見て、とても印象がよかった。



 ジャダッドは外交官の息子として色んな国に行き、色んな人たちと出会い――、その中で一緒に過ごすことに苦痛を感じてしまうような権力者だっていた。

 皇妃であるマドロールはああいう一緒に居て心地よい人たちに囲まれ、周りから愛されて生き、だからこそ今ああいう風にただ幸せなのだろうというのがよく分かる。





「ヴィダディ、この後はどうする?」

「しばらくこのあたりで母上の情報を集めて、商品などを買ってから別の場所に行く。あとお土産も買う」

「なんで情報集めたがってるんだ?」

「父上が自分の知らない母上の情報あったら知りたいって言ってた。私も知りたいし」



 ジャダッドはヴィダディからそんな答えが返ってきて、呆れたような表情を浮かべるのだった。



 それから少しティドラン王国で過ごした後、ヴィダディたちは次の国へ向かうことにした。


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