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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「ヴィダディ、今日はまずは美味しい朝食とれる場所探してもらったから行こう」―皇太子視察編⑥―

 結局、ヴィダディが勉強のために買おうとしていたものに関しては一旦保留になった。

 確かに一つ一つの製品にしても生産国が違えば異なるものである。それぞれの国で名産品や文化も違うものだ。しかしこうして国の外に出てもヴィダディは帝国の皇太子としてどこまでも真面目だ。




(素なんだろうし、学ぶことも好んでいるから全然苦にはなってねーんだろうけど。ただヴィダディも俺と同じ年なんだからもっと何も気にせず過ごせばいいと思う)



 ジャダッドはそんなことを宿の部屋の中で考えている。



 流石に十三歳という年齢で夜の街を出歩くのはやめた方がいいという結論に至り、夜は大人しく宿に戻っていた。

 ちょっと街に出た間でも、ヴィダディはどちらかと言えば勉強を注視しているように見えた。




(皇太子として教育をされてきたからこそそうなんだろうなぁ。皇太子としての教育ってどういうものなのだろうか。俺には想像が出来ない苦労があるんだろうな)



 ただの外交官の息子であるジャダッドには、その苦労は分からない。分からないけれど、友人なので折角のこういう旅行の機会を楽しんで欲しいとそう思っている。良い気晴らしになればいいとそう思ってならない。



(あいつがもっと年相応なところを見せる場所ってどこだ……? うーん、なんでもヴィダディは興味は持ちそうだけど、ヴィダディが一番興味を持つものってなんだろう?)



 まだ短い付き合いというのもあり、ヴィダディが一番興味を持つものが何なのかぴんと来なかった。

 一旦ジャダッドは部屋の外に出て、帝都からついてきた騎士や侍女たちに話を聞くことにした。





 そして翌日、



「ヴィダディ、今日はまずは美味しい朝食とれる場所探してもらったから行こう。大衆食堂だけどいいか?」



 そんな風にジャダッドはヴィダディに提案する。



 これらの情報は騎士と侍女たちに集めてもらったものである。夜に頼んだことであるが、皇族仕えの者たちは皇帝一家を大変慕っているので喜んでジャダッドの頼みを聞いてくれた。

 彼らは大変優秀でもあるので、すぐにジャダッドの求める情報を集めてくれたのだ。

 そして朝から大衆食堂に向かうことを決めたのは、ヴィダディがまず行ったことがない場所に連れていきたいとそう思ったからだ。




「父上と母上から聞いたことがある。私も行きたい」

「陛下と皇妃様から聞いたことがあるっていうのは……」

「父上と母上はお忍びデートで昔行ったことがあると言っていた」

「そうなのか。陛下と皇妃様が大衆食堂にいるのって全く想像が出来ねぇ。まぁ、それはヴィダディにも言えるけど」

「そうか? 大衆食堂とは色んな人が来るのだろう? ならば私が紛れても問題ないだろ」

「いやいや、お前なぁ、自分の存在感とか分かってねぇな。それにお忍びとはいえヴィダディは良い所の出だと言うのはすぐに分かる」



 皇族として生まれ、そして教育を受けてきたからこそヴィダディはその所作とかで良いところの出だというのはすぐに分かるものだ。

 そんな会話をかわしながらヴィダディとジャダッドは出かける準備を済ませて、大衆食堂へと向かった。




 その食堂はこの街でも大変人気で繁盛している場所らしいというのはジャダッドも聞いていたが、朝から思ったより混んでいた。





「あー、ヴィダディ、別の所にするか?」



 列をなして並んでいるのを見て、ジャダッドがそう声をかける。



「いや、大丈夫だ。こうして並ぶのも良い経験だろう」



 ヴィダディが真顔でそんなことを言うのでジャダッドは笑ってしまう。



(そうだよなぁ。帝国の皇太子がこうして立って並ぶなんて経験したことないよな。寧ろこういう美味しい食事も向こうからくるものだろうし。そういえば前に皇妃様が気に入った食事を作った職人はそのまま城に召し仕えられたりしたんだっけ……。ヴィダディは望めば向こうからやってくるからわざわざ並ばないしな)




 ヴィダディが皇太子としてここにいるのならば、食堂を貸し切りする手続きでも出来ただろう。それだけの力がヴィダディにはある。しかし今はただのヴィダディとしてここにいるので、大人しく並んでいる。



 それなりの時間を並ぶことになったわけだが、こういうことも初めてなのでヴィダディは楽しそうにしていた。

 いざ、席に案内されたわけだが相席である。そのような経験も初めてなヴィダディは興味深そうだ。あと注文の仕方も当然分かっていないので、ジャダッドが教えることになった。



 そして食事を注文し、しばらくその場で待つことにする。



「よう、坊ちゃんはこういうところは初めてか?」



 ヴィダディが興味深そうにあたりを見回していたからだろう。相席の男性がそんな風に声をかけてくる。



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