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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「……それにしてもつくづく、私は父上とは違うなと思うよ」―皇太子視察編③―

 ヴィダディとジャダッドは帝国貴族の領地に訪れている。

 帝国の皇太子がこんな国境付近の領地にまで訪れることはあまりない。だからこそ、その領地の貴族は湧き出っている。



 ヴィダディの見た目は絶世の美少年と言えるほどの美しいからというのもあるだろうが、その下級貴族の娘は目がハートマークである。



(また一人落としたな。本当にヴィダディはもてるんだよな。……見た目もいいし、権力も持っているし、努力家で驕らないし、そりゃ羨ましいぐらい周りが騒ぐのも当然と言えば当然か)



 ジャダッドはそんなことを考えながら、ぽーっとヴィダディを見ている令嬢に目をやる。



 というか、令嬢だけじゃなく貴族夫人もぽーっとしている。……旦那が隣にいてもその綺麗さに見惚れているようだ。



(というかあれだな。皇室の騎士がいるから問題はないだろうけれど、ヴィダディが変な女の毒牙にかからないようには目を光らせておこう。恋はしてほしいけれどどうしようもない女には引っかかってほしくないし)



 ジャダッドはそんな決意もする。


 ヴィダディは帝都からあまり出たことがない。幾ら完璧な皇太子に見えても世間知らずなことには変わらない。知識としては知っていても実際に知らないことも多い。

 そんな皇太子を外に連れ出したのはジャダッドなので、その辺はちゃんとしたいと思っている。



 ちなみにその貴族令嬢は愚かな夢を抱いているのか、ヴィダディにまとわりつこうとして冷たくあしらわれていた。

 どこまでも冷たい瞳を向けられ、びくついている。

 そういう風にヴィダディの睨みに対しておびえるようではヴィダディの相手は務まらないものである。







「……私が此処にいるのを知って、近隣の貴族が挨拶しに来ようとしているらしい。面倒だ」

「それは仕方ないだろう。普段はこんなところには来ない皇太子様が来たらそりゃあ騒ぐって」




 この領地で一泊することになっており、ヴィダディは一番良い客室に案内されていた。

 ジャダッドはその近くの客室を与えられているが、ヴィダディの部屋に遊びに来ていた。



 帝国の皇太子が来ているというのもあり、近隣の貴族たちが挨拶にこようとしていた。ヴィダディはわずかな時間しかないので、その間に顔を繋ぎたいのだろう。特に下位貴族だとヴィダディと挨拶を交わしたこともないものである。



「拒否するか、相手にするか」

「どっちでもいいんじゃないか? なんか後々役に立ちそうなら相手にしてもいいし。その中にヴィダディが気に入る奴がいたらそれはそれだし」

「人脈も、ある意味力か」

「まぁ、そうだな。顔が広ければ広い分、ヴィダディが皇帝になった時に動きやすくはなるんじゃね? ちょっとしたことでも後につながったりするって父上も言ってたぞ」




 外交官であるジャダッドの父親は、様々な人たちと顔を繋いで、そして上手く世渡りをしてきた人間である。色んな言語を話せたり、文化を知っていたりもする。ちなみにジャダッドもそんな父親と一緒に他国に居たのでそれなりにその辺は上手く出来たりする。




「……それもそうか。面倒だからと相手にしないのもあれか」

「でも無理して全部相手にする必要はないと思うぞ。俺や使用人や騎士たちだっているんだし。厳選してもらってもいいんじゃね? 俺も手伝うぞ。ヴィダディが会ったら疲れそうでためにならない奴は省いてやるよ」

「いいのか? ジャダッドもこういうの好きじゃないだろ」

「好きではないけれど、友人のためならそんくらいしてやるさ。俺が他国に行くの誘ったしな」



 ジャダッドはそう言って笑った。それに対してヴィダディも小さく笑う。




「助かる。……それにしてもつくづく、私は父上とは違うなと思うよ」

「なんだ、それ」

「父上は後から役に立つかもとか全く考えないんだ。本当に自分がやりたいようにやっている。会いたくない人間には会わないし、気に食わない相手にはすぐ手が出る。あれだけやりたいように生きていて、それで皇帝として長年この国を治めているから本当に凄いと思う」

「それは陛下だからだろう。ヴィダディは親子とはいえ、陛下とは違う人間なんだから同じようになる必要はないだろ」

「ははっ、ジャダッドは私の周りと同じことを言うな。私も分かっているよ。私は父上のようにはこの帝国を統治は出来ない。だから私のやり方で治めていきたい」




 ――ヴィダディの父親である『暴君皇帝』ヴィツィオは何の柵もなく自由である。やりたくないことはやらない。それでもヴィツィオは帝国を治めていくことが出来ている。それは他でもないヴィツィオだからである。

 だからこそヴィダディはそれを目指すのではなく、自分にあったやり方をずっと模索している。

 まだ十三歳のヴィダディは、この偉大なる帝国を継ぐことを決まっている。その重圧がどれだけのものなのか、ただの外交官の息子でしかないジャダッドには想像もできない。





「じゃあその手助けを俺は出来るだけしてやるよ。俺に何が出来るかは分からないけどな。まぁ、ひとまずヴィダディに挨拶に来た連中の選別はこっちでやっておくから休んどけ。どうせ夕食の場でも絡まれるぞ」

「あれだけ怯えてたのに絡むか?」

「ちょっとは怯えているかもしれないけれど、それ以上にヴィダディが優良物件なんだからまた復活するかもしれないだろ。ほら、休んどけ」



 ジャダッドはそれだけ言って部屋から出ていくのだった。




 それからジャダッドは使用人や騎士たちと一緒に来訪者の選別を行うのだった。



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