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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「家族で食事をするのは楽しい」

 ヴィダディの朝は早い。

 侍女たちから起こされる前に大抵目を覚ます。



 母親であるマドロールから「子供はよく寝た方がいいのよ」と言われているので、その言葉通りになるべく早くベッドの中に入るようにしている。



 朝からヴィダディは本を読んでいる。ヴィダディはいつか尊敬する父親のようになりたいと思っているので、こういう時間がある時には勉強をしたりしているのだ。

 そうしているうちにヴィダディ付きの侍女たちが部屋の中へと入ってくる。



「ヴィダディ殿下、おはようございます」

「おはよう!」



 にこやかに挨拶をする侍女たちにヴィダディも元気よく挨拶をする。



「ヴィダディ殿下、本日の予定は……」



 そして傍にやってきた侍従がヴィダディの本日の予定を教えてくれる。ヴィダディは今、五歳。まだ幼い身であるがこの帝国をいずれ統治することを約束された皇太子という立場である。なので、しっかり教育が進められている。



「わかった! 今日も頑張る」


 ヴィダディはやる気満々でそう答える。




 皇太子教育というのは、ヴィダディにとってみれば嫌なものではなかった。

 なぜならヴィダディが結果を出せば出すほど、母親はそれはもう褒めてくれる。尊敬する父親は「よくやった」と短い言葉だけど褒めてくれるし、頭を撫でてくれる。

 ヴィダディは両親のことが大好きなので、そんな両親から褒められるとより一層やる気も増すものである。

 それに二歳年下の妹であるロルナールも内容は理解していないだろうが、「おにいたま、すごい!」と無邪気に笑ってくれる。そうやって家族が笑ってくれるから、皇太子教育も頑張ろうと思うのである。




 自分に出来ることが増えること、分からないことが分かるようになることはヴィダディにとって達成感を感じるものでもあるので、ヴィダディは大変勉強熱心である。

 それこそ周りの侍女たちが心配するほどである。ただヴィダディは本当にその教育を苦に思っていないらしかった。

 やはりそこは『暴君皇帝』ヴィツィオの息子ということなのだろう。ヴィツィオと同じく天才肌というか、なんでもそつなくこなすタイプなのだ。




 ヴィダディは着替えをすませてから、朝食をとるため自室を出た。

 何かしらの事情がない限り、毎日食事は共にするようになっている。








「ヴィダディ、おはよう」





 家族が挨拶をしてくれるので、ヴィダディも元気よく返事を返す。




 その広い食卓につくのは、皇帝であるヴィツィオ、皇妃であるマドロール、そしてヴィダディとその妹のロルナールだけである。




「おかあたま、聞いて、昨日ね」




 食事中に会話のない家庭も貴族社会にはよくあるものだが、皇帝一家の食事というのは和気あいあいとしたものである。それは皇妃であるマドロールが楽しい食事を望んだから。

 ヴィツィオとマドロールが政略結婚した後、一緒に食事を取るようになってから皇帝一家の食事は大変にぎやかなものになっている。まだその当時生まれていないヴィダディには想像が出来ないことだが、ヴィツィオが一人で無言で食事を取って終わりというのがマドロールが嫁ぐ前の食事の光景だったらしい。





 ロルナールが一生懸命、昨日何があったかマドロールに語れば、それに楽しそうにマドロールが返事をする。ヴィツィオはそんなに口を開くことはないが、時折会話に口をはさむ。

 ロルナールがある程度話し終えるとヴィダディも最近の出来事などをマドロールとヴィツィオに話す。こうして何気ない日常の話をしているだけでヴィダディはとても楽しくて仕方がない。





 朝、昼、晩の食事の時間がヴィダディは毎日楽しみである。まぁ、時々ヴィツィオとマドロールが二人きりで食事をしたい気分の時は別にロルナールと食事を取ったりするわけだが、基本的には毎日こういう感じである。





(家族で食事をするのは楽しい。今日の昼は父上と母上とは別だから、夜が楽しみ。今日も頑張る)




 和やかな毎日の食事はヴィダディにとっては楽しいもので、幸せなものだと思っている。

 というのも毎日こうやって過ごす皇族は結構珍しいと周りから言われたことがあり、この日常はとても幸せなことなんだと改めて思ったから。




(父上が母上に会ったからこうなったって言ってた。母上に会わなかったら父上は家族を大切にしなかっただろうって、母上に出会う前の父上はどんなだったんだろう?)




 ヴィツィオとマドロールの息子であるヴィダディは当たり前のことだがマドロールに会った後のヴィツィオしか知らない。

 だから少しだけ昔のヴィツィオがどうだったのか気になるのだった。






 それからどうしても気になったのか、ヴィダディはヴィツィオの昔のことを周りに聞くことになる。



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