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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「ヴィー様、楽しい夢を見ました」

 気持ちよさそうにマドロールは眠っている。

 大きな枕に頭を乗せて、幸せそうにふにゃふにゃと口元を緩めている。



 眠りの世界へと飛び立っているマドロールの横で、ベッドに腰かけているヴィツィオは優しい目でマドロールを見ている。

 寝ている間に乱れているのか、少しだけ寝癖がついている。

 何か楽しい夢でも見ているのだろうか。少しだけだらしない表情を浮かべている。




「えへへ……」



 何か口をもごもごとさせているマドロールの頭をヴィツィオは左手で撫で、反対の手では書類を見ている。

 ヴィツィオはそういう書類の確認をしている。

 撫でられているうちに、ぱちりっとマドロールの目が開く。




「ううん……」

「おはよう、マドロール」

「むにゃ……ううん……おはようございましゅ、ヴィー様」



 寝転がったまま、焦点のあってない瞳でマドロールはヴィツィオを見る。

 そしてその顔が、幸せそうに緩む。



「ヴィー様、楽しい夢を見ました」

「どんな夢だ?」

「ヴィー様が、出てきました。ちょっと小さなヴィー様がいて、可愛かったです。ヴィー様の昔の肖像画を見たからかもです」



 マドロールはそんなことを口にして、ベッドに座っているヴィツィオを見上げている。




「昔の俺か?」

「はい。とても可愛いヴィー様でした。小さい頃のヴィー様、きっと可愛くて、素敵だっただろうなって……。その頃のヴィー様に会いたかったです」




 マドロールはヴィツィオのことが大好きでたまらない。なので、もっと小さい頃にヴィツィオに会えていたら……とそんな風に思っている。




(私が小さい頃に、ヴィー様と出会っていたらどうなっていただろうか? 私はヴィー様と会った時に前世の記憶を思い出したけれど、もし出会い方が違ったらどうなっていたのかな? 前世の記憶をすぐに思い出せなかったとかもあるのかな?)



 マドロールはそんなたらればの妄想をするのがなんだか楽しかった。





「昔のマドロールも可愛かっただろうな」

「でもその頃に会っていたら、ヴィー様に好きになってもらえていたか分からないなっては思ってます! 出会い方って大事ですからね。私はヴィー様を見た瞬間、前世の記憶を思い出したけれど、記憶を思い出してなかったらヴィー様に嫌われてたかもです!」

「……そういう生まれる前の記憶があるからこそマドロールだろうけれど、もしその前世の記憶がなかったとしても俺はマドロールに惹かれてたと思う」

「ふふっ、本当ですかー? それだと嬉しいです!」




 マドロールは嬉しそうに笑って身体を起こす。そしてまじまじとヴィツィオのことを見る。





「ヴィー様は本当になんていうか、綺麗ですよね。凄くかっこよくて……見ているだけで幸せです。夢の中で小さなヴィー様が私に呼びかけてくれてたんですよねぇ。その頃、出会ってなかったのに。凄く楽しい夢だったなぁ。ヴィー様と幼馴染とか、そういう立場だったらどうだったんだろうなーとか考えちゃいますね」

「マドロールと昔から知り合いだったら……、マドロールの傍に人を近づけさせないようにしていただろうな。俺の知らないマドロールの知り合いが居ないように」

「ふふふっ、ヴィー様ってそういう独占欲が素敵ですよねぇ。嫁ぐ前の私の知り合いのことを考えてもやもやしてたり、ヴィー様ってそういうところ、本当に可愛いです」




 独占欲の強いヴィツィオの発言にも、マドロールはにっこりと笑う。



 ヴィツィオがマドロールと幼い頃から知り合いだったとして、それで今のような関係になるのならばおそらくマドロールの世界はずっとずっと狭かっただろう。それだけヴィツィオはマドロールに執着しており、独占欲を露わにしている。




「ヴィー様との子供が生まれたら、夢で見たような小さなヴィー様そっくりの子が生まれたりするのかなってわくわくします。なんだか昔のヴィー様はこうだったのかな? とかそういう妄想をいっぱいしてしまいそうです」

「俺はマドロールに似た娘が見たい」

「ふふっ、ヴィー様も小さい頃の私はこうだったのかなとか妄想しちゃいます?」

「妄想はしないが、俺の知らないマドロールを知っているのは少し嫌だ」



 ヴィツィオがそんな風に言えば、マドロールはまた嬉しそうに笑った。



「子供が生まれたらってそういう未来を考えるだけで凄く楽しいですよね。ヴィー様ってあんまり子供のこと好きじゃなさそうというか、あんまり周りに興味ないですけど、子供は欲しいって思ってくれてますか?」




 皇帝として子孫を残すことは義務であると言える。とはいえ、マドロールはヴィツィオが自分との子供を欲しがってくれていたらいいなと思っていた。

 最も、ヴィツィオが子供を苦手だったとしてもその分マドロールが可愛がればいいとは思っているようだが。




「ああ。マドロールとの子供なら、欲しい」

「はぅ……その言葉、反則です。ヴィー様は私を喜ばせる天才です!」




 ヴィツィオがマドロールとの子供だからこそ、欲しいと。そんな風に望んでくれているというだけでマドロールは本当に幸せである。




(ヴィー様との子供、生まれたら今よりももっと幸せな気持ちになれそう。今だって本当に人生で一番ってぐらい幸せなのに、こう……幸せってどんどん更新されていくんだなって思うわ)




 ヴィツィオと政略結婚でも結婚が出来ただけでも幸福だった。もうそれ以上の幸せはないと思っていたぐらい。

 それがヴィツィオが自身を愛してくれて、それでいて子供まで望んでくれている。

 マドロールの幸せな日々は、常に更新され続けているのであった。



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