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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「一番最初に作りたいのは、この手紙をくれた方のドレスです」―とある職人の成り上がり④―

「ラッヘメナさん、こちら製作依頼の手紙です」

「お、多くないですか」

「それだけ貴方の作ったドレスが素敵だったということです。マドロール様がパーティーに着ていったので、帝国中の貴族令嬢が貴方のドレスを求めるのですよ」



 ラッヘメナは文官の言葉と、目の前にある大量の手紙を前にふらついてしまう。



 マドロールにその腕を買われ、この帝国で仕事を出来るというだけでも幸運なことなのに、これだけの依頼が舞い込んでくるとは想像もしていなかった。

 ラッヘメナは貴族社会のことを知らないので、マドロールというこの帝国で一番位の高い女性の着るドレスがどれだけ影響力があるものか分からなかったのだ。




「ここにあるのは検閲を通ったものだけになります」

「そ、そうなんですか?」

「はい。マドロール様からの指示で、きちんとした依頼のみこちらに持ってきました。この中からラッヘメナさんが受けたい依頼だけを受けたらいいです」

「貴族様からの依頼なんですよね……。断っても問題ないんですか?」

「問題ありません。貴方は帝国お抱えの方ですから。断り文に関しては難しいと言うのならこちらで作成します」

「ありがとうございます」

「またラッヘメナさん一人での作業が難しければ、人を雇うことも出来ますのでそのあたりも検討してください」

「わ、分かりました。ひとまず手紙の内容を確認します!!」



 ラッヘメナがそういえば、文官はひとまずその場から去って行った。




 大量の手紙。それをラッヘメナは一つ一つ読むことにした。



(こんなに沢山の依頼が来るなんて……、どれから受けたらいいのだろうか。依頼を受けるかどうかは私の判断でいいと言われたけれど……)



 本当に自分の判断で受ける依頼を決めていいのだろうかと少しだけラッヘメナは頭を悩ませる。だけど、マドロールの笑みを思い浮かべると大丈夫だろうとラッヘメナは判断した。



(マドロール様が決めていいといってくれているんだもん。大丈夫だよね。自分が受けたい依頼を探そう)



 ラッヘメナはそう思ったので、ひとまず受けたい依頼を探すことにした。


 その手紙に書かれている内容は、マドロールのドレスがどれだけ素敵だったかということと、ぜひドレスを作って欲しいというそういうことばかりが書かれている。

 届けられた手紙の中で高圧的なものに関してはラッヘメナに渡される前に排除されているので、そこにあるのはラッヘメナにただドレスを作って欲しいと望む問題がない手紙だけである。




(これだけ多くの人が私のドレスを求めてくれている。……なんて嬉しいことなんだろう。出来れば全部お受けしたいけれど流石にこの量だとすぐには難しいわ。時間がかかっても良ければ順番に全部作ることも出来るけれど……、それだけ待たせてもいいのかな?)



 ラッヘメナはそんなことを思ったので、手紙に目を通した後文官に相談した。

 文官からは待たせる分には問題がないと言われ、どこから順番に手をつけたいか聞かれた。



「そうですね……。一番最初に作りたいのは、この手紙をくれた方のドレスです」



 その手紙は、マドロールに憧れているという令嬢の社交界デビューのドレスを作って欲しいというものだった。その手紙の送り主は子爵令嬢で、手紙を送ってきた令嬢たちの中では位が低い。

 ただラッヘメナはマドロールのことを慕っているので、マドロールの事ばかり書かれている手紙に共感したのだろう。




「わかりました。次はどうしますか?」

「ええっと、ひとまずマドロール様のドレスとこの方のドレスを作りたいとは思っているのですが、その後のドレスもどこから作るか決めておいた方がいいですか?」

「はい。出来れば。ラッヘメナさんのドレスがいつ出来上がるかによって、ご令嬢たちもどのパーティーにどのドレスを着ていくかが変わっていきますから」

「……分かりました。決めますね」



 ラッヘメナは文官の言葉に頷き、ドレスを作る順番を決めていった。



 それでひとまず四か月先までの予定は埋まった。それでもまだ送られてきている依頼の予定が全て埋まったわけではない。




「ええと、とりあえずここまでは制作期間を決めましたが、それ以外の依頼に関しては制作次期は未定ですのでお時間がかかりますと返事をしようと思います! あとマドロール様のドレスが最優先ですから」

「それでよろしいかと思います。返事は私共もお手伝いしますので、ラッヘメナさんは制作を優先してください」

「はい。ありがとうございます」



 ラッヘメナは文官たちに手伝ってもらいながら、手紙に返事を返した。



 時間がかかるのでキャンセルしてもらっても構わないと伝えていたのだが、誰一人としてキャンセルはしなかった。


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