「沢山の人や物を持ち帰ることになりましたね!!」―属国観光編⑩―
「ねぇ、ヴィー様。沢山の人や物を持ち帰ることになりましたね!!」
「ああ」
属国を色々と見て回っている中で、マドロールが気に入ったものは全て帝国へと持ち帰ることへとなっていた。
それは人であったり、物であったり様々である。もちろん、人に関して言えば本人の同意をきちんともらった上でだ。……ヴィツィオは本人の意思関係なしに連れ帰ろうとしていたが、ちゃんとマドロールが話をつけていた。
帝国の皇妃から気に入られるということはその人にとっても大きな財産である。ただしマドロールが気に入った優秀な職人でも男は騎士たちによって対応されていた。帝国に来るとしてもマドロールと関わることは必要最低限になるだろう。
ヴィツィオは独占欲が強いというか、マドロールの元へ他の男を近づけたくないと思っている。
そういう対応を間近で見ている騎士や文官たちは「皇妃様は心が広いなぁ」と思ってならない。
マドロールがもし仮にヴィツィオの言うことを聞かずに「異性でも友達なの」などと言ってしまう系の存在であったらおそらくすぐに閉じ込められていたことだろう。ヴィツィオは自分勝手なので、マドロールの行動を制限するし、自分のやりたいように生きている。
相手がマドロールなのでこんな風に仲睦まじい様子を見せているのであって、そうでなければもっと悲惨な皇帝夫妻になっていたのではないかと周りは思っていたりする。
「ヴィー様も行ったことがない場所をぶらぶら出来たのも凄く楽しかったですし、ヴィー様がどこにいてもヴィー様で解釈一致でした。連れてきてくれてありがとうございます」
マドロールは束縛されても、そのことを嬉しいとさえ思っている。
マドロールの行動は全部ヴィツィオに報告されているし、ヴィツィオの許可がなければ何も出来ない。一見すると籠の中の鳥のように囲われているのだが、マドロールはそんな生活を心から幸せだと思っている。
マドロールが嬉しそうに笑えば、ヴィツィオも笑った。
楽しい属国観光だが、皇帝夫妻というのは暇ではないため帝国へと帰国することになり、その道中。
竜の上で、マドロールは今日も幸せそうだ。
「ヴィー様、帝国に帰ったらヴィー様色の素敵なドレスを仕立ててもらいますからね! それをお披露目したいです」
「じゃあパーティーでも開くか」
「はい! ヴィー様の衣装もおそろいで仕立ててもらいましょうね。きっと素敵なものになるはずです!」
……ヴィツィオはパーティーにも必要な範囲でしか参加せず、自分からパーティーを開くこともそんなにない。しかしマドロールが望むのならば簡単に開こうとしていた。
「凄く楽しみです! あと、ヴィー様。今回属国を巡って思ったんですけど、世の中には沢山埋もれている才能があると思うんです。そういう方たちを適材適所でちゃんと仕事してもらった方が帝国の発展にもつながると思います! だからなんていうか、そういう才能がある方を発掘する仕組みが作ったらどうかなって思うのですけれど」
「それもそうだな」
「はい! 才能がある方って凄いですよねぇ。私、そういう皆に誇れるような才能ないから凄いなって思います」
「マドロールは十分凄い」
「そうですか? ふふっ、私にとって一番凄いヴィー様にそう言ってもらえるとなんだか私も凄いのかなってなりますね」
ヴィツィオの言葉に、マドロールは笑った。
『暴君皇帝』相手に臆することなく無邪気に話しかけ、推しの行動なら全部受け入れるといった様子のマドロールは本当に周りから見ても色んな意味で凄い。
「ヴィー様は例えばどういう才能を持った方を発掘したいとかありますか?」
「……マドロールが喜ぶやつ」
「もー、ヴィー様ったら! 私を喜ばせるの本当にお上手ですよね! そんなこと言われたらときめいて仕方ないですからね! ヴィー様は他人に全然興味ないのに私を喜ばせるためならって全部持ち帰ってくれますし、もうそういう所大好きです!!」
マドロールはヴィツィオの言葉にときめいて、竜の上で大興奮していた。
「じゃあ、そうですね。帝国に帰ったらこういう方たちが居たらいいのではというのを考えてみますね。一回ヴィー様に見てもらってそれで大丈夫そうなら実際に探してもらっていいですか?」
「ああ」
今日も今日とて、マドロールに甘いヴィツィオは即答していた。
帝国につくまでの間、ずっとそういう会話が二人の間ではされていたのであった。
ちなみに後々、マドロールが思い付きで言ったこの才能発掘の制度は帝国の発展に大いに貢献することになる。
それはまた別の話である。
属国観光、一旦ここで締めます。
ヴィツィオはマドロールの気に入ったものは全持ち帰りしました。




