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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「聖獣ってどれだけもふもふなんでしょうね?」―聖なる乙女と聖獣③―


「眠っているヴィー様、可愛いー」




 マドロールは、目を覚まして横ですやすやと寝ているヴィツィオを見ながら幸せそうに笑っている。




 いつも朝起きた時、マドロールは幸せを実感する。

 ヴィツィオが、自分の傍ですやすやと眠ってくれている事実が嬉しい。そして他でもないヴィツィオの眠っている姿を間近で見られることが嬉しい。

 マドロールはにこにこと笑いながら、ヴィツィオの頬に指をあてる。こういう風に『暴君皇帝』が眠っている中悪戯のようなことを出来るのもマドロールだけであろう。

 おそらく他の誰かがこんなことをしたら即座に殺されるだろう。




「……ん」

「ふふ、ヴィー様、起きた? おはようございます!!」

「……おはよう、マドロール」

「ふふっ、眠たそうなヴィー様、かーわーいーい!!」





 マドロールは朝から元気である。ヴィツィオの眠たそうな姿を見ているだけでマドロールは朝から元気いっぱいだ。

 大体朝から騒ぐマドロールは口を塞がれたり、抱きしめられたりして黙らされるものである。それが皇帝夫妻の朝である。





「ヴィー様って、聖獣って見たことあります?」

「ない」

「ヴィー様も見たことのない聖獣が見られるかもって思うとワクワクしますね!! ヴィー様と聖獣って似合いそう! というより、どんな生物も私のヴィー様の前にはひれ伏すのが当然というか、そんな感じですよねー」

「楽しそうだな」

「楽しいですよー。まだ先だろうけれど、物語の通りならマリアナは聖獣に認められるはずですもの! あ、でも別に認められなくてもマリアナとは話してみたいなぁ。ヴィー様、どちらにしてももうちょっとしてからマリアナを城に呼んでもいいです?」

「ああ。いちいち許可を取らなくていい」

「ふふっ、今から楽しみです!!」




 マドロールはそんなことを言いながらにこにこと笑っている。




 マドロールにとってみれば、『暴君皇帝と、聖なる乙女』のヒロインと関わりが持てると思うだけでワクワクしている様子である。





 この世界が『暴君皇帝と、聖なる乙女』と同じ世界だとしてもその通りに必ず進むとは限らない。なのでもしかしたら聖獣にマリアナが認められない世界線もあるかもしれない。しかしそうだったとしてもマドロールはマリアナに会いたいなとそんな風に考えている様子である。

 無邪気に笑うマドロールは大変愛らしい。ヴィツィオに愛されて、未来に何の不安も抱いていない、幸福に包まれていると分かる満面の笑み。そんなマドロールの笑みを見ているだけでヴィツィオの口元も緩む。






「ヴィー様、聖獣ってどれだけもふもふなんでしょうね?」

「毛深いかってことか?」

「もー、言い方が可愛くないです! もふもふの方が可愛くないですか? こう触ると幸せな気持ちになる感じのもふもふかなーって思ってるんですけど。竜も鱗がひんやりしていて触っていて幸せな気持ちになるけれど、もふもふとしたのもいいですよねー」

「もふもふか。聖獣がどうかは知らん」

「きゃーっ。ヴィー様がもふもふって口にするの素敵! なんだか可愛い感じ! 聖獣ってどれだけもふもふしているのかなって、どれだけ触ったら幸せなのかなってそんな気持ちなんです!」

「捕まえるか?」

「駄目ですよー。ヴィー様なら本当に出来そうですけど、聖獣は神聖な存在ですから、そんなことをしたら神様の怒りを買ってしまうかもしれませんよ?」

「どうでもいい」

「ヴィー様ってば、凄く不遜な態度で素敵!! でも駄目ですよ!!」





 ヴィツィオは神をも恐れぬような、そんな不遜さがある。そもそもヴィツィオにとってみれば神とか、聖獣とか、聖なる乙女とか、正直どうでもいいのだ。

 自分とマドロールの害になるならば排除するだけである。

 マドロールは不遜に笑うヴィツィオを見てまたきゃーきゃー騒いでいた。





(はぁ、今日も幸せ。ヴィー様って本当に誰を相手にしてもこれだけ自信満々で、かっこよくて。本当にこんなにかっこいいヴィー様が私の夫であるとか、今でも夢みたい。でも子供も生まれているし、夢ではないのよね。幸福すぎる!! それにこれからマリアナとも話したり、聖獣を現実でみれたりするのよね)




 マドロールはそんなことを考えるだけで大興奮で、未来のことを考えると楽しみで仕方がないのであった。




(マリアナとも聖獣とも仲良くなれたら嬉しいなぁ)



 無邪気にマドロールはそんなことを考えて、楽しみだなとその顔をだらしなくさせていた。






 ――そしてそれから一か月ほど後、マリアナが聖獣に認められたという話が皇帝夫妻の耳にも入ってきた。

 



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