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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「凄く楽しみで仕方ないです!!」―聖なる乙女と聖獣①―

ヴィダディを生んですぐぐらい。

「ヒロインのマリアナがもうすぐ現れるの!」の後

「ヴィー様、ヴィー様!! 聞いてください!!」

「どうした?」



 マドロールは勢いよく寝室に入って、ヴィツィオに話しかけた。こんな風に暴君皇帝にためらいもなく話しかけられるのはマドロールぐらいだろう。

 マドロールはそれはもう楽しそうに、皇帝夫妻の寝室でくつろいでいるヴィツィオを見る。




「はぁ、寛いでいるヴィー様もかっこいい!! って、そうじゃなくてですね。今度、パーティーがあるじゃないですか。そのパーティーにヒロインのマリアナが来るんですよ!! マリアナの社交界デビュー。どんなことが巻き起こるか今から楽しみで!!」

「マドロール、落ち着け」

「はい! 深呼吸します」



 マドロールはヴィツィオの言葉に素直にそう言って頷いた。





 『暴君皇帝と、聖なる乙女』の世界のヒロインがようやく目の前に現れる――その事実にマドロールは大興奮している。

 この前から社交界デビュー間近だろうと噂はされていたが、ようやくである。

 マドロールの推しは目の前にいるヴィツィオだが、ヒロインのマリアナのこともマドロールは前世で好きだった。





(マリアナは可愛いけれども、いざという時にかっこいい一面もあって、ヴィー様に守られているだけじゃなくて、こう対等な感じで……。ああ、そのマリアナが目の前に現れるなんて本当に楽しみ。でもヴィー様がマリアナに興味を持ったら……まぁ、その時はそのときね!)




 マドロール、ヴィツィオに散々愛されているくせに、もしかしたら……というのを考えているらしい。




「マドロール、何を考えてる?」

「えっと、ヴィー様がマリアナに興味を持つかなって」

「持たない。俺の妻はマドロールだろ」

「うぐっ、はぁはぁ、ヴィー様、その言葉は破壊力が! でもマリアナって前世の物語の世界でも凄く可愛くて、一生懸命で、それでいて同性の私から見ても憧れるような強さがあって、なんか素敵だったんですよ! それでいて聖獣に認められていて……、ヴィー様と対等な感じでした。そう考えると、私ヴィー様に守られてばかりだなーって」

「余計なことを考えるな。やっぱりその女排除するか?」

「駄目です! もう、ヴィー様は物騒なんだから」




 マドロールはヴィツィオが排除などという恐ろしい言葉を口にしても、朗らかに笑っている。

 ヴィツィオからしてみれば、ヴィツィオがどんな風な表情をしてもいつでも笑っているマドロールは十分自分と対等だと思っている。そもそもマドロールは自分の意見をはっきりヴィツィオに告げる方である。




「俺の妻はマドロールで、他の女はいらない」

「あ゛っ」

「マドロールが排除を望まないなら排除しない。でも余計なことは考えるな」

「はい!!」




 マドロールはヴィツィオの言葉に元気よくそう答えた。

 その後もマドロールはマリアナのことを考えている。




「マリアナは物語だと、綺麗な真っ白なドレスを身に纏ってたんですよね。そのドレスが本当にマリアナに似合って……あれを生で見れると思うと、凄く楽しみで仕方ないです!! パーティー会場内の視線を独り占めって感じで、凄く目立ってるって描写だったんですよね」

「その物語でその時、マドロールは?」

「物語の中だと私はお飾りなので、寂しくただ参加していただけですよ!! ぐぬぬって感じでマリアナのことを気に食わないって見てた気がします」




 『暴君皇帝と、聖なる乙女』の世界ではあくまでもマドロールはお飾りの、捨てられる予定の皇妃でしかない。なので、漫画の中で出てきたマドロールは大体ヒロインに嫉妬している描写ばかりである。

 あくまで物語ではそういう役割だったのだろうけれども、考えてみるとお飾り夫婦とはいえ夫が他の女性と仲良くなっていったら気に食わないのは当然だよなぁとマドロールは思った。





「マドロールよりその女が目立つのは無礼だ」

「まぁまぁ、ヴィー様ったら。私よりもマリアナの方が可愛いし、後々聖獣に認められるから目立つのも当然ですよー?」

「マドロールが一番可愛い。聖獣はどうでもいい」

「ヴィー様、そう言ってくださるのは嬉しいですけど、聖獣の存在は帝国にとっても大事ですからね?」




 聖獣というのは特別な存在なので、そんな存在に認められるヒロインもそれはもう特別な存在である。

 漫画の世界ではその可憐さと聖獣に認められていることから、ヒロインのマリアナは社交界でも地位を高めていく。それに暴君皇帝に気に入られ、シンデレラストーリーを歩むのである。






「分かってる。でも幾らマドロールにとって見ていたい存在でも、聖獣に気に入られるとしても……、マドロールとヴィダディに手を出すなら潰す」

「まぁまぁ、ヴィー様、大丈夫ですよ。マリアナはそんなことはしないと思います!」




 ヴィツィオは聖なる乙女だろうが、妻であるマドロールとついこの前産まれたばかりのヴィダディに手を出すなら潰す気満々のようだ。




(ヴィー様ってば、本当に過激。でもそこがかっこいいのよね。なんだかヴィー様なら聖獣相手でも本当に負けない気がするわ。もちろん、ヒロインのマリアナは良い子だろうから、そんなことにはならないだろうけど。それにしてもマリアナを見れるの楽しみだわ!!)




 マドロールはそんなことを妄想しながらにこにこしている。

 そんな風に自分の世界に入り込んでいるマドロールをヴィツィオは優しい目で見ていた。



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