「私ヴィー様になら何されても怒らない自信あります!!」―大規模パーティー③―
「ねぇねぇ、ヴィー様、パーティー始まりますねー。準備も楽しかったけど、沢山の人と会うのってドキドキします!!」
「マドロールは緊張しなくていい」
「ふふっ、ヴィー様が味方だって思うとちょっと緊張していてもなんだかなんでも問題ない気がしますね?」
マドロールは嬉しそうに笑いながらそう言った。
パーティーが近づいてきたその日、マドロールとヴィツィオは仲良くお茶会をしていた。ヴィツィオが寂しがったというのもあり、マドロールはそれ以来どれだけ忙しくてもヴィツィオとのお茶会などを欠かさないようにしていた。
そもそもヴィツィオの側近たちも、ヴィツィオが不機嫌になるのは本当に困るのでマドロールが時間を取れるように予定を調整してくれていた。不機嫌なヴィツィオは物騒で、周りからしてみれば恐怖の対象なので、機嫌を直すためにもマドロールにはヴィツィオにかまってほしいのである。
「問題ない。マドロールに文句を言うやつは全員どうにかする」
「ふふっ、ヴィー様は本当に物騒ですね。大丈夫ですよー。私も文句を言われたら言い返しますし。私はヴィー様のただ一人の皇妃ですから、ちゃんとその辺は自信をもって対処しますからね!!」
「対処か。……マドロールが怒っているのは想像出来ないな」
ヴィツィオの前では常にマドロールはにこにこしている。推しであるヴィツィオが生きているだけで幸せなマドロールは不機嫌な様子一つ見せない。ヴィツィオはマドロールが怒っている様子が想像出来ないらしい。
「私だって怒る時は怒りますよー? でも私ヴィー様になら何されても怒らない自信あります!!」
マドロールのある意味凄い所は本当にヴィツィオになら何をされても許容しそうなところだろう。多分、ヴィツィオに暴力を振るわれたり、殺されたりということが万が一あったとしてもマドロールは怒らない。
前世から続いている推しへの愛は、天元突破していた。
マドロールのそんな言い方に、ヴィツィオは小さく笑う。そんなヴィツィオの笑みを見て、マドロールはまた奇声を上げていた。
「はぁ、ヴィー様。今の表情、すごっく素敵!! もう絵画にしたい。一生見てたい」
「一生見てればいいだろ」
「あぁあああ!! 本当に素敵! 大好き、ヴィー様!! もうこんな不遜な態度で、笑っているヴィー様見れるだけで幾らでもご飯を食べられるっていうか、本当に一生分の幸せもらっている気分です!! ヴィー様にこんな表情を向けられているのが私だけとか、もう本当に今死んでも後悔しない!!」
「それはだめだ」
「分かってますよー。比喩ですよ。私もこの幸せをもっと享受したいので、ずっとヴィー様が望んでくれる限りいますよー。それにしてもおじさんやおじいさんになってもヴィー様ってきっと素敵に決まってますからね!! はぁっ、想像するだけで本当に楽しみすぎます。ヴィー様はイケオジになりますからね!!」
「イケオジってなんだ」
「イケてるオジさんって意味です! ヴィー様は絶対に年老いてもかっこいいだろうなぁって。はぁ、でもヴィー様がヴィー様なら正直言って見た目は変わっても全然いいんですけどね。ヴィー様がヴィー様であることが大事ですしー。想像出来ないけれど中年太りとかヴィー様がしてもそれはそれ! って思います」
マドロールはヴィツィオの表情や態度が素敵すぎて大興奮し、妄想している。
ヴィツィオならばきっと年老いても素敵なはずだとそんなことを語って大興奮である。
「マドロールも、年をとっても可愛いと思う」
そしてまたマドロールはヴィツィオにそんな風に微笑まれてときめいていた。
「ヴィー様に可愛いって言われると、なんだかすごく嬉しいです! まぁ、とりあえずそんな先のことは置いといてそれよりそろそろパーティーの参加者の方々到着するんですよね?」
「ああ。出迎えはロレンツォたちがするから放っておいていい」
今回のパーティーには沢山の人々が他国からも来る。帝国の属国や帝国よりも国力の低い国の者ばかりなので、いちいち皇帝夫妻が全員お迎えする余裕はない。
あとヴィツィオはそんな連中の出迎えにわざわざ自分とマドロールが時間を割く必要はないと思っている。基本的にヴィツィオは周りをどうでもいいと思っている暴君なので、それが通常である。今はマドロールをあまり周りに見せたくないというのもある。パーティーではマドロールも皇妃としてその場に立つことになるが、それまでにわざわざ見せるつもりはなかった。
ちなみにマドロールはヴィツィオのそんな思惑には気づいていない。
「どんな方が来るのかしら? 仲良くなれる方が居たら嬉しいなぁ」
「男とは仲良くするなよ」
「ふふっ、ヴィー様がいるんですから特定の異性とは仲良くなりませんよー。まぁ、気があったらお友達になるぐらいはあるかも……、はい。ヴィー様がそんな顔をするなら絶対になりません!!」
マドロールはヴィツィオが嫌そうな顔をしたのを見て即座に手のひらを返す。マドロールのすべてはヴィツィオが中心である。
「代わりにヴィー様も、特定の女性と仲良くはしてほしくないなーって思います! まぁ、ヴィー様が本当に望むならそれも仕方ないかなって思いますけど、前世だと一夫一妻制だったので、ヴィー様を独占出来た方が嬉しいです」
「当たり前だ」
ヴィツィオはマドロールの言葉にそう答える。その言葉を聞いてマドロールは嬉しそうに笑うのだった。




