表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/301

「お兄様がどうしてここにいるの?」―第一王女の学園編⑦―

 ロルナールは魅了にかけられている人たちに関わらないように過ごしていた。とはいえ、幾ら影が見ていたとしてもただのティドラン王国の下級貴族として学園に入学しているので、運悪く接触してしまうことというのはあり得るのだ。



 ロルナールはその日もヨゼフィーとミヴィファと一緒に過ごしている。



(あの魅了にかけられている人たちは相変わらず。男爵令嬢はうまく魅了を使えているからか、色々我儘は言っているみたいだけど。それにしても本当に対応がおそいなぁ。ちょっとした暴力的な行動は起こっているけれど、決定的な行動はまだ起こしてはいないんだよね。んー、何か完全にやらかさなきゃこの国は動かないのかな?)



 ロルナールはそういうことを考えながらのんびりとしている。



 そうやってのんびりしていたロルナールはなるべく魅了にかけられている一味と関わらないようにしていたのだが、たまたま走り回っている男爵令嬢と遭遇した。



 ロルナールとしてみれば、なんで学園内で走っているのだろうか? と不思議に思ったものである。幼い頃はともかく、年頃の令嬢が人前で走り回るということはまずない。

 男爵令嬢という下位貴族の地位であったとしても、それまで平民として生きていたとしても――それが貴族社会になじもうとしない理由にはならない。



 そうやって貴族社会に関わろうとはせずに、魅了の魔法を使い、身分の高い異性にばかり近づいている。



 その走り回っていた男爵令嬢は、階段の手前でも走っていたので階段から落ちていった。ロルナールはヨゼフィーとミヴィファと一緒に階段の上に居たわけだが、それはもう驚いた。



(落ちた!? 大丈夫かしら。えっと、どうしたらいいのかしら?)



 ロルナールは階段から人が落ちていく場面など初めて見たので動揺していた。それも自分から落ちていくように見えたので猶更である。




 落ちていった男爵令嬢のもとに慌てて第三王子たちが駆け寄るのが分かる。

 どうやら男爵令嬢が先行して走っており、その後ろから第三王子たちが小走りできていたらしい。魅了にかかっていても彼らは育ちが良いので、男爵令嬢のように走り回れなかったようだ。





「び、びっくりした。大丈夫かしら?」




 ロルナールは恐る恐るというように階段の上へと近づき、階段の下の男爵令嬢たちを見る。幸いというか、血はあまり流れていないようだ。ロルナールはほっとした。

 ただロルナールは心配して階段の上から見ていたのだが、なぜだか、勘違いされてしまった。




「そこのお前!! トエラを突き落としただろう!」

「い、いえ。そんなことはしておりませんわ」




 ロルナールは一瞬びっくりした。こんな風に強く責められたことなどなかったので、階段の下から叫ばれたのに驚いたのだ。




「嘘をつくな! トエラがお前が突き落としたと言っている!」




 ロルナールには聞こえなかったが、小さな声で男爵令嬢――トエラはロルナールに冤罪をかけようとしているらしい。

 自分で落ちたのにもかかわらず、誰かに対して冤罪をかけようとしている理由はロルナールには分からない。




「私はそんなことをしておりません。目の前でその方が落ちていきましたから、怪我は大丈夫でしょうか?」

「しらじらしいことを言うな! お前が落としたのだろう」




 ロルナールはこの人、話を聞かないなぁとのんびりしている。こういう状況でものほほんとして余裕を持っているのはそれだけロルナールがそういう立場で生きてきたからである。



 ヨゼフィーとミヴィファは青ざめた顔をしながらなんとかロルナールをかばおうとしているが、身体が動かないようである。下級貴族なら王族や高位貴族に睨まれておびえるのも当然である。

 ロルナールが堂々と対峙しているので二人は驚いた様子である。





(こうやって冤罪をかけられるのは初めてだわ! なんだか物語になりそうな感じよね? それにしてもどうしようかしら)



 ロルナールはそんなことを考えながら、言葉を告げる。



「私はやっておりません。証拠は何かありますか?」

「トエラがそう言っている」




 その言葉に第三王子が激高したような様子でつかつかと階段の上へと駆け上がってくる。そしてロルナールに近づく。



「お前っ!!」



 そしてロルナールに対して手をあげる。

 だけど、その衝撃はロルナールには訪れない。




「ぐはっ」



 ロルナールにツカツカ近づいていた第三王子が吹き飛んだ。




 ロルナールの視界に、一人の男性が入る。いつの間にその場に現れたその人は、空から降りてきていた。夜を思わせる漆黒の髪と、ルビーのように赤い瞳を持つ美しい男性。

 その男性が第三王子のことを思いっきり蹴り飛ばしたようである。




「ロルナール」

「お兄様がどうしてここにいるの?」




 ロルナールは驚いたようにその人――帝国の皇太子であり、ロルナールの兄であるヴィダディに声をかけた。



 ちなみにだが、上空に竜の姿が見えるのでおそらく竜に乗ってここまでやってきたのだろう。



 第三王子は蹴り飛ばされるし、上空には竜がいるし、突然ヴィダディが降り立ってくるし……で、その場は騒然としていた。

 その中心でロルナールは無邪気な笑みを兄へと向けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] トエラェ… ロルナールに冤罪をかぶせようなんて、何て恐ろしいコトを~! 皇帝陛下のお怒りがコワい… ((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ