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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「貴方たちは、何も心配しなくていいわ」―第一王女の学園編⑤―

 結果として第三王子の婚約者もエルマルアもロルナールの誘いに乗った。



 二人ともこの国では居場所がなくなっていた。愚かな家族や生徒たちに囲まれて、その人生が滅茶苦茶になるところだったと言えよう。



 まぁ、確かに婚約者の一人制御出来ない令嬢も、魅了に簡単にかかってしまったエルマルアもそこだけ見ればやらかしてしまっている部分がある。とはいえ、彼らはまだ学生である。一度や二度の失敗は誰にだってあり得るものだとそんな風にロルナールは思っている。



 ロルナールは、誰にもばれないように二人のことを借りている屋敷へと案内した。

 第三王子の婚約者である令嬢――オアリンネは自分に手を差し伸べた存在がロルナールであることに驚いた様子だった。



「ロルナールさん……。貴方が私を助けてくれようとしていることは嬉しいですが、表立ってそんなことをすれば王族に睨まれてしまいますわ。幾ら貴方が他国の出身とはいえ、やめた方がいいですわ」

「ふふ、私の心配をしてくださっているの?」



 オアリンネは真っ先にロルナールの心配をしていた。ロルナールがティドラン王国の下級貴族だと信じ切っているからだろう。

 ロルナールは自分の立場が心配されることがそもそも面白かった。

 帝国に居た頃だと、帝国の皇女であるロルナールにそういう風に立場を心配するものなどいなかった。帝国の最も尊き皇室の血を引くロルナールは、常に機嫌をうかがわれる側だったから。



「……オアリンネ様、おそらく彼女は身分を偽っていると思います。ただの他国出身の下級貴族ならば魅了の魔法に効く薬など簡単には手に入らないでしょう」

「え? そうなのですか?」



 エルマルアの言葉に、オアリンネは驚いた顔をする。



 やはりエルマルアは理性的で、周りをよく見ている方なのだ。だからこそこの案内された屋敷が一見すると普通の屋敷に見えるけれど高価なものが溢れていることも、使用人たちの只者ではない洗練された動きも……ちゃんと理解している。

 逆にオアリンネはこの状況への戸惑いもあるだろうが、この国から出たことがない生粋の貴族令嬢としての視野の狭さがうかがえる。ロルナールはその対称的な二人がやっぱり面白いなと思っている。



「ええ。貴方の言う通りよ。エルマルア。私の学園でのティドラン王国の下級貴族という地位は、借り物だわ。貴方たちは、何も心配しなくていいわ。私の行動を制御出来るのは、私の家族ぐらいだもの」



 ロルナールの帝国の皇女という身分は、ただエルマルアとオアリンネのことを欲しいと言えば差し出される立場にある。属国であるこの国の王侯貴族が反論することなど出来ない。そもそも祖国でだって彼女を制御することを許されるのは彼女の家族だけである。



「え……。ということは、私、ロルナールさんと呼んでますが、ロルナール様と呼んだ方がいいですか?」



 ロルナールの言いぐさに自分よりも身分が高そうと判断したオアリンネが青ざめている。



「いいえ、そのままの呼び方で大丈夫よ。それで貴方たちはこれからどうしたい? このまま学園に通いたいなら私の方でどうにもするわ。でも周りからの視線もあるから大変かもしれない。違う環境に身を置きたいっていうなら他国の学園に通うのもありだし、この家で過ごすのもありだし、帝国に先に帰るのもありだわ」

「……その口ぶりだと、やっぱりロルナール様はファドス帝国の貴族ですか?」

「あら、言ってなかったわね。それにしてもエルマルアはやっぱり察しがいいわね。では、名乗りましょうか。私の名前はロルナール・ファドス。帝国の第一皇女よ。今はお忍びで学園に通っているから、周りには言いふらさないでね?」



 ロルナールが楽しそうににこにこと笑いながらそう言う。

 そうすれば流石にエルマルアも予想外だったのか固まり、オアリンネは驚きすぎて絶叫した。



 この国は帝国の属国である。宗主国である帝国の皇族など、彼らはお目にかかったことがないのだ。まぁ、普通に考えればこういう場所に身分を隠して皇女が潜り込んでいることがあり得ないのだが。

 ロルナールは驚いた反応を見て、楽しそうにくすくすと笑っている。




「言いふらしませんが……、まさか、帝国の皇女殿下とは思いませんでした。ロルナール様は私にどうしてほしいですか?」

「そうねぇ。エルマルアさえ良ければそのまま学園に通ってもらうか、学園をやめてこの家で過ごすかしてほしいわね。その方が面白そうだもの」

「では学園に通い続けましょう。家とは早急に縁を切ります」

「あら、いいのかしら? 関わりたいのならば関わっていても問題ないわよ」

「いえ、家族は私を見限っています。家とは縁を切ります」



 そうはっきりと言い切るあたり、元々からエルマルアは家族仲が良くなかったのかもしれない。ロルナールの家族はとても仲が良い。ロルナールのことをいつくしんでくれる家族たち。皇族だというのに、とても驚くほどに家族仲が良い。

 なので、そういう家族仲が悪いというのは少しだけ寂しい気持ちになる。



(オアリンネの方もそうみたいだから、帝国に連れ帰って思いっきり楽しく過ごしてもらおうかしら? オアリンネも婚約者や家族があの調子で疲れているだろうし、エルアルマは魅了にかけられて自分の気持ちを踏みにじられて複雑な気持ちは感じているはずだもの)



 ロルナールは自分の拾って帰ると決めた二人なので、出来うる限り楽しく生きてほしいと思っている。なので、そんな思想である。

 



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― 新着の感想 ―
[一言] ロルナールちゃん、お二人は早めに帝国に送って侍女や側近にするにせよ それなりの地位を確立させた方がよろしいのでわ? と思ってしまいましたわ。 でも、今後の展開が楽しみです♪
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