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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「要らないのなら拾ってかえりましょう!」―第一王女の学園編④―

 魅了の魔法の対策はまだ終わっていないようだ。小国だからこそ、動きが遅いというのもあるのかもしれない。


 ロルナールの周りにいる人々は割とすぐに行動を起こす人ばかりである。なので、これだけ時間がかかるのが不思議だとそんな風に思ってしまう。




(さっさと行動すればいいのに、魅了の対策の道具を入手できないとかかな? 結構高価だものね。私は持っているけれど。第三王子だから優先順位を低く見ているのかもしれないわね)




 魅了の魔法に対する対策の道具は結構高価なものばかりである。帝国の皇女であるロルナールにとっては簡単に手に入るものだが、普通の人には簡単に手に入るものではないのである。

 高価なので、お金を出し惜しみしているのかもしれない。



 ロルナールは魅了の魔法にかかっている人たちのことを観察している。その状況は動いている。



 男爵令嬢に心ひかれたらしい第三王子は、婚約者に冷たくなっていた。その婚約者と結婚してその家を継ぐ予定だったというのにその調子なことにロルナールは呆れた。それにその婚約者の令嬢の家は結構どうしようもないらしく、令嬢側の方を「王子の気を引けないのが悪い」とそんな風に言っているらしい。そのうち家からも見捨てられるのでは? と噂されていた。

 また魅了の魔法にかけられている一味の中にもまともな人間もいるらしい。




 第三王子たち一味のほとんどは男爵令嬢が嫌がらせをされているのに、激高しているらしい。嫌がらせの元が婚約者だと思い込み、その婚約者を突き飛ばそうとしたり……、こそこそと噂している令嬢や令息たちに怒鳴りつけたりしていた。

 まぁ、婚約者の居る相手に男爵令嬢が近づいていれば色々と面倒な事態になるのは当然だろう。





 その中で伯爵子息の一人は男爵令嬢の魅了にかけられているものの、理性は失っていないらしい。婚約者と婚約解消し、嫌がらせをされている男爵令嬢の周りもちゃんと情報収集したらしい。その中で男爵令嬢が自演しているところもわかったらしく、その伯爵子息は「そんなことはやめた方がいい」と諭した。その結果、男爵令嬢には泣かれ、王子たち一味には嫌われ、元々男爵令嬢の取り巻きとかしていたので周りからは孤立している。加えて、家からは婚約の解消のことでこっぴどく怒られ、放逐されそうになっているらしい。



 というのをロルナールは聞いた。




(なんだか、簡単に見捨てたりしようとするよね。私としてみれば魅了の魔法にかかっているからと暴力的になったりする人よりはちゃんと理性的な人の方がいいと思うけれど。だってそれが本性ってことでしょう? 魅了の魔法にかかっているからってバカなことを起こす人より、ちゃんと向き合える人の方がいいわよね)




 ロルナールはそんなことを考える。




 第三王子の婚約者の令嬢も、魅了にはかけられているけれども理性は保っている様子の伯爵子息も――ロルナールにとっては結構好ましく思っていた。

 婚約者の令嬢にはちょっとした用事を言いつけられはしたが、それなりにやさしい普通の令嬢である。

 伯爵子息は魅了にかけられていても理性的で、そういう所は面白いと思っている。





「要らないのなら拾って帰りましょう!」

「ロルナール様……、男性を連れ帰ったら陛下の反応が怖いですよ」

「えー? 大丈夫よ。お父様は私が頼んだらきっと許してくれるから」

「陛下はロルナール様に甘いですからね……」




 そういうわけで、この国が、その家族がいらないというのならば拾って帰ろうとロルナールは思った。

 第三王子の婚約者の令嬢には、使用人たちを使いに出した。そして伯爵子息の方にはロルナールが自分で行くことにした。



 孤立して、一人で目立たない学園の裏庭で食事を取る伯爵子息の名はエルマルア。どこの派閥にも入れずに嫌がらせも受けているらしい。伯爵家からも除籍されそうと噂されていて、寂しそうな背中が見える。







 ロルナールはその伯爵子息に声をかけた。



「こんにちは」



 突然話しかけたことに、エルマルアは驚いた表情を浮かべた。



「……君、私に話しかけない方がいい」

「大丈夫ですわ。今、周りに誰もいませんから。それより、これを飲んでいただけますか?」




 周りに誰もいないことは確認している。というより、ロルナールの周りにいる影たちが人が近づかないようにしている。

 突然渡されたものに、エルマルアは困惑している。





「……これは?」

「貴方にかけられている魔法を解くためのものですわ。騙されたと思って、ちょっと飲んでみませんか?」




 ロルナールが畳みかけるように言えば、エルマルアは孤立し、弱っているからかその液体を飲んだ。それは魅了の魔法を解くためのものである。目を見開いているエルアルマ。




「……あれ、俺は」

「貴方は魅了にかけられてましたわ。これは解くための薬ですわ」

「え?」

「ふふ、もう彼女への気持ちはさっぱりなくなっているでしょう?」

「……ああ。でも魅了を解くための薬は高価なんじゃないのか? 君はどうして……」

「貴方が魅了にかけられていても、理性的だったから。面白そうだから、うちの国に連れて帰ろうかなって。もう居場所がないなら私の国に来ない?」




 ロルナールがそう言って笑いかければ、エルマルアはぽかんとした表情を浮かべた。


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