「どのヴィー様もかっこいいわ」
デート後ぐらい
「きゃーっ!! 色んなヴィー様コレクション、最高すぎるんですけど!!」
「楽しそうだな」
「楽しいですもの。はぁあ……ヴィー様のあらゆる可能性をこうして私がこの目で見ることが出来るなんて最高すぎる」
嬉しそうに赤い目をキラキラさせているマドロールは、皇帝であるヴィツィオのことだけをじっと見つめている。
皇帝夫妻が何をしているかと言えば、デートで髪と目の色を変化させることが出来た。それでマドロールは色んな髪と目の色のヴィツィオを見たいと思ったのだ。
マドロールが目をキラキラさせて、見たいと言えばヴィツィオはすぐに頷いた。
基本的に他人に対して興味がなく、不快なことをされたらすぐに切り捨てたりするヴィツィオだが、マドロールには本当に甘かった。ヴィツィオの側近たちは髪と目の色を変えてほしいなんてためにもならないことをヴィツィオが頼まれたからとやることに驚いていた。
「はぁ……、ヴィー様って本当にどんな色でも似合いますよね。かっこよすぎる。やっぱりイケメンだから? 最高にかっこよすぎて、私はときめく!」
「そうか」
「はい! カメラがあればいいのになー。そしたらヴィー様のかっこいい姿を幾らでも眺められるのに。どのヴィー様もかっこいいわ」
「カメラってなんだ?」
「私の前世でその場の光景をこう……写し取れるみたいな技術があったんですよ。それがあれば幾らでもかっこいいヴィー様の最高の姿を残していけるのに」
「そうか」
「はい! はぁ、こうして素敵なヴィー様コレクションの絵を画家に描いていただきたい気もするけれど、こんなに素敵な色んなヴィー様の姿は私だけが見ていたい……。幸せな葛藤がっ!」
マドロールは一人できゃーきゃー騒いでいる。
ヴィツィオの素敵な姿を画家に描いてほしい気もしているが、こんなに素敵な『ヴィー様コレクション』を他の人に見せたくないという気持ちもあるようだ。
騒ぎながらヴィツィオのまわりをうろうろしているマドロール。あまりにも落ち着きのないマドロールを止めるためか、ヴィツィオが抱きしめる。
ちなみに今は、赤い髪と瞳に変更している。
急に抱きしめられたマドロールは「ひゃっ」と声をあげる。抱きしめられたまま大人しくなったマドロールはヴィツィオを見上げる。
(赤髪、赤目のヴィー様も素敵っ!! はぁっ、かっこいい。いつもと違うヴィー様にときめきが止まらない。いつものヴィー様にもときめきしかないけれど!)
マドロールはヴィツィオに見つめられて、嬉しそうに笑みをこぼす。可愛らしい笑みを見て、ヴィツィオも笑った。
「はぅ……。ヴィー様の笑みって本当に素敵!!」
「マドロールも可愛い」
「ふふ、ヴィー様に可愛いって言ってもらえるとすごく嬉しい!」
マドロールは、嬉しそうに笑っている。
「ねぇねぇ、ヴィー様も私が違う髪色とかにしたの見たい?」
「ああ」
「ふふ、じゃあ、私も色々変えてみます!」
マドロールはそう言って、変化させてみる。ヴィツィオが変化させているのと同じ赤色に変えてみる。
真っ赤な深紅の髪と、ルビーのようにきらめく瞳。
鏡を見ると、なんだか別の自分になったような気持ちになる。
「なんだか、こうしてヴィー様と並んでいると兄妹か何かみたいですね!」
「そうだな。赤髪も似合ってる」
「ふふ、ヴィー様もどんな色でも似合いますよねー。私のヴィー様は本当にどんな姿でもかっこいい!!」
にこにこと笑っているマドロールは、「じゃあ、次はこの色にしましょう!」などと目をキラキラさせる。
ヴィツィオはそれに付き合って、また色を変えていくのだった。
それから二人はヴィツィオの側近が呼びに来るまでずっと髪と目の色を変化させる遊びを続けたのだった。




