「お父様みたいな人がいいなぁ」
結婚十二年目ぐらい?
「ロルナール様、本日は何をなさいますか?」
「今日はね、本を読むの!」
元気よくそう答えるのは、帝国の第一皇女、ロルナールである。
皇妃であるマドロール譲りの銀髪と、赤い瞳の可愛らしい少女である。ロルナールは、今年十歳になる。
ロルナールは本を読むことが好きである。特に物語系のものが好きで、勉学系の本はそこまで好きではない。
皇妃であるマドロールがそういった物語が好きだと公言しているのもあり、帝国ではそういう文化が活発になっている。皇帝であるヴィツィオもマドロールが望むことはなんでもかなえようとしているので、中々帝国は皇妃の影響を受けていると言えるだろう。
皇帝夫妻は、大変仲が良いためロルナールは五人兄妹である。一番上の皇太子はロルナールの二つ上のヴィダディ、第二皇女はロルナールの三つ下のミドロール、第二皇子と第三皇子は双子でロルナールの六つ下のロッツィオとルッツィオである。
ロルナールは城の図書室へと向かう。
沢山の本が並んでいるその場所は、ロルナールにとってはさながらテーマパークのようなものである。
「ロルナール殿下、こちら新作ですよ」
「わぁ、騎士のお話なのね! 楽しそう!!」
司書から渡された本をロルナールはキラキラした目で見ている。
ロルナールも公の場では、皇女然としているが素の状態では表情豊かである。そのあたりは母親であるマドロールに似ているのだろう。
ロルナールは司書からほほえましい目で見られている。皇室に仕えるものたちは大変、皇族一家のことが好きなので司書とロルナールも仲良しである。
「ふふ、この作家さんの面白いのよね。騎士様が凄くかっこよくて」
「ロルナール殿下は、本物の騎士が幾らでも見られますよね。そっちにはときめいてない様子ですけど」
「えー、だってお父様におびえてたり、情けない姿見たりとか結構してるし。男同士だからバカ騒ぎしていたりもするって話も聞いたことあるもん」
「……ロルナール殿下、実際にそのバカ騒ぎ見ているわけではないですよね?」
「こっそりのぞきにいったことはあるわ!」
「えっと、お転婆はなるべくやめてくださいね?」
「大丈夫よ。お母様とお兄様と一緒だったもの!」
「……マドロール様は何をしているんですか?」
「ふふふ、お母様は私たちと一緒にそういうのもしてくれるの!」
騎士たちは男社会なのもあって、時々バカ騒ぎをしていたりする。その様子をこっそりのぞきにいったりしたことはあるのだ。というより、そういう誰かの目がないと思っている場こそ騎士の本音というか、本来の姿が見えるものなので、こっそり見に行ってみたのである。
ちなみにその時はちゃんと護衛騎士や影などはついていた。
「現実の騎士と、物語の騎士は違うわ! あ、でも物語の皇帝よりもお父様の方がかっこいいわ! お父様ってあれだけ見た目も良いし、一途だし、とっても強いし!」
「陛下は凄い方ですからね。ロルナール殿下はどういった方と結婚したいですか?」
「お父様みたいな人がいいなぁ」
「それは厳しくないですか?」
「完全にお父様みたいな人は難しいのは分かっているの。でもね、お父様がお母様のことが大好きみたいに、私のこと、大好きな人がいいなぁ。あとはかっこいい人がいい」
「ロルナール様は面食いですよね」
「だってかっこいい人って見ると嬉しくならない?」
ロルナールがそう言えば、侍女はくすくすと笑った。
そしてそんな会話を交わした後は、静かに読書タイムに突入した。夢中になって本を読むのに没頭していると、ロルナールと遊びたいと図書室に妹たちが飛び込んでくる。
「お姉様、遊ぼう」と飛び込んできたので、ロルナールは一旦本を閉じて、妹たちと遊ぶことにするのであった。
今日も皇帝一家の子供たちは仲良しである。
第一子 ヴィダディ 今年十二歳 黒髪赤目 男
第二子 ロルナール 今年十歳 銀髪赤目 女
第三子 ミドロール 今年七歳 女
第四子 ロッツィオ 今年四歳 男
第五子 ルッツィオ 今年四歳 男




