#615 フィールドボス〈リンウッズ〉戦開始!
ダンジョンからの帰り道、ラナはとっても浮かれていた。
見ていて気持ちよくなるほど超にっこりだった。
「ふっふふ~ん♪」
「ラナご機嫌だな」
「あったり前じゃない! 〈芳醇な100%リンゴジュース〉が3本も手に入ったのよ! 帰ったら早速試飲するわ!」
ラナの執念か、〈オカリナ〉は回数4回、確率70%なので、3回吹いて2体レアモンスターが出れば良しなのだが、3体もポップした。もちろん全部仕留めたよ。
これだけあると、1本くらいと思ってしまうのも仕方のないことだ。
「ラナ様、――飲み過ぎないよう注意してくださいね? あとでみなさんも飲むのですから」
エステルが窘めているが、なんかその言い方はお酒っぽいぞ? 実際は健全アップルジュースです。むっちゃお高いジュースだけど。
俺もラナが飲み過ぎないよう注意して見ておかないと。
もし飲み過ぎたらラナには罰として採ってきてもらおう。
いや、それではまたラナが試飲する~とか言い出さないか? なんだかスパイラルに陥りそうな予感。やはり飲み過ぎないよう注意するのが最善か。
エステルだけだと心配なので、シズにも共有しておこうと決める。
その後、金色のリンゴの木も『伐採』し、〈金色リンゴ〉もゲットしましたとも。これもレアアイテムだ。むちゃくちゃ美味いらしい。ラナがチラチラ狙っているので、後で食べさせてあげるか。これくらいは採りに行った者の特権として許されるだろう。俺も味に興味あります!
「ねえゼフィルス、帰るって言ってなかったかしら? なんで私たちは今10層にいるのか、聞いても良いかしら?」
「そりゃあシエラ、ここにはショートカット転移陣があるからに決まっているじゃないか」
第5層から帰る。
なんとも中途半端な道のりよ。
ルートは二つだ、上へ行くか下へ行くか。〈ダン活〉プレイヤーなら間違いなく下を選びますさ! 間違いないね!
まあそれもあるが、ここに来た目的が上級職の練習だったからだな。
せっかく来たのだからボス戦もせずに帰るなんて勿体ない。
ということで俺はそのまま第6層の入口に直行。
さすがに〈オカリナ〉はもう使えないので金色のリンゴの木探しの旅はせず、そのまま練習と『伐採』をしながら進み、こうして10層に着いたというわけだ。
そういえばシエラへ説明してなかった気がするが、気のせいだったらいいな。
「ということで、ボス戦をします!」
「何がということで、なのよ。まあ、いいけど」
だろ? ボス戦したいだろ? お宝欲しいだろ?
ふっふっふ。俺には全て分かっているのさ。
ということで、いざ、フィールドボスに突撃です!
11層への門を守るように佇む、いや佇む? まあそこにいるのは樹木型ボスモンスター。〈リンウッズ〉だ。
極太の幹に目と口のように空いた洞がやや恐ろしい、スタンダードな〈リンウッズ〉系ボスモンスター。その枝には8つのリンゴの枝のような杖を持ち、基本的に魔法攻撃で攻撃してくる。まあ動けないからな。根っこ張ってるし。遠距離攻撃が基本だ。
「あいつはその場から動けないが、弾幕のようにとにかく魔法を撃ちまくる。たまにリンゴも発射してくる」
「リンゴも?」
「カルアは食べちゃダメだぞ? 何しろリンゴは剛速球。160㎞ストレート並みだ。当たればHPが削られてしまう」
「そうなの? ん、食べちゃダメなリンゴ。わかった」
この食いしん坊さん、リンゴはカレーに合うと聞いてからリンゴの虜である。
カルアなら剛速球といえど追いつけてしまう可能性もある、そのまま捕まえてもぐもぐする可能性も……、うむ、無いとは思うが一応食べちゃダメと教えておいた。いや、あれって食べられるのかな? まあいい。
「シエラは守護陣形を常に展開しておいてくれ。ラナは遠距離から回復。一応『聖守の障壁』を意識していつでも自分の身を守れるようにしておいてくれ。エステルとカルアには敵の魔法弾幕が途切れるタイミングを教えるから、ヒットアンドアウェイで攻撃だな。基本側面から攻撃してくれ」
いつも通り、ボスの情報を全員に共有。どう動くのかを個別に指示しておく。
みんなが頷くのを見て、準備が整ったら出発だ!
「オオオォォォォ―――――」
ボスに近づくと、〈リンウッズ〉が洞から強風が漏れるような音を出し威嚇してきた。根っこを張って動けないくせに体をガサガサ揺らし、俺たちに気がついているぞーとアピールしてくる。
続いて枝の杖をこちらに向けると、杖の先が魔法エフェクトに輝いた。
「来るぞ!」
「『守陣形四聖盾』! 『カバーシールド』!」
すでに『四聖操盾』を発動して空中に自在盾を出していたシエラはすぐに『守陣形四聖盾』を発動して空中に盾で壁のような陣形を作り、続いて永続が付与された『カバーシールド』を展開する。
例のクラス対抗戦で何度も相手の攻撃を防いだシエラの技だ。
〈リンウッズ〉からの魔法射撃、火の玉の連射をバンバン弾きまくっていた。
まったくもって超強い!
こっちに攻撃が来るなと盾を構えたら、その間に割り込むようにして盾が現れ攻撃を弾いて戻っていくのだ。俺、ノーダメージ。シエラ強!!
その圧倒的防御性能と空中を自由自在に動く盾により、最近シエラは〈操盾のシエラ〉と二つ名で呼ばれ始めているのを俺は知っている。
「オオオォォォォ―――――」
おっとボス戦の最中だったな。
考え事は後にしよう。
まず出会い頭の範囲攻撃を防いだら、次はこっちのターンである。
相手の連射が止んだのを確認すると俺は指示を出す。
「今だ!」
「『オーラポイント』! 『シールドフォース』! 『ファイヤガード』!」
「『耐魔の大加護』! 『獅子の大加護』! 『病魔払いの大加護』!」
「『ドライブ全開』!」
「『フォースソニック』!」
「『属性剣・火』! 『ソニックソード』!」
それまで固まっていたメンバーが散り散りに動き出した。
行くぜ! 攻撃開始!




