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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第十一章 〈ダン活〉クラス対抗戦!!

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#562 三方向からの包囲、絶体絶命、〈百炎〉の炎。



「あの炎の女子、〈3組〉の〈百炎(びゃくえん)のハク〉デスね」


 ミサトのバリアにより炎のダメージ皆無な状況でパメラがハクを指差して言った。

 それにリカも反応する。


「知っているのかパメラ?」


「もちろん、相手の情報を探るのは忍者の基本デース! あれは〈3組〉のリーダーデース、職業(ジョブ)は【百炎(びゃくえん)(ぎつね)】、〈火属性〉の魔法範囲攻撃を得意としているデス! 初戦で名を上げて二つ名をもらった有名人デスね」


 パメラは元々陰の護衛を勤めている家系だ。陰で情報を掴む術も教えられて育ってきたため情報の扱いはそれなりに得意だったりする。とはいえ、ハクは初戦でその圧倒的強さを見せつけ、ほぼ単独で低位職クラスを落とした有名人なので知らない方が少数なのだが。

 ハクはその強力なユニークスキルにより防衛戦力のほぼ全てを屠ったことで、その攻撃方法から〈百炎〉の二つ名で呼ばれるようになったのだ。


 リカはパメラの言葉に、手を顎に当てて考える仕草をする。


「ふむ、魔法使い、特に範囲攻撃か。それは私とは相性が悪いな」


「私も回避不能な範囲攻撃はノーサンキューデース!」


 ハクの魔法はかなり広範囲だった。対集団戦にとても有効な能力だ。

 おかげで迂闊に進むことができず足が止まってしまう。

 回避型のパメラでも、回避すらできないとなれば相手をするのは厳しい。リカもカウンターを得意としているため対範囲攻撃、特に範囲魔法とは相性が悪かった。


「ならば、私たちは他の4人の相手をしよう。ミサト、〈3組〉リーダーの相手は任せられるか?」


「もちろん! 私たちに戦いを挑んだこと、後悔させてあげるよ!」


 短い会話でハクの相手は相性の良いミサトが担当する事となり、リカとパメラはハクの取り巻き4人を撃破し、突破口を得る考えだ。

 作戦を話し合っているうちにハクの攻撃が止む。


「うーん、やぶれへんなぁ。さすがは〈1組〉やわぁ」


 次第に炎は消えていったが、ミサトのバリアは健在だ。


「ふふふん、そんな炎じゃ私の結界は破れないよ。次はこっちの番! ――『セイントピラー』!」


 足元からの攻撃、ミサトがワンドを上へ振るうと円柱型の〈聖属性〉魔法が地面より伸びてハクを狙う。意識の範囲外からの攻撃により、確かに不意を付いたかに見えた攻撃。しかし、ハクは『攻撃察知』スキルによりそれを察知すると、ギリギリで避けバックステップで後ろに下がった。


「!! おっと――! ビックリしたわぁ」


「あれを、避ける? 何かのスキルかな?」


「ふふ、うちに勝てたら教えてはるわぁ。『(ほむら)の陽炎』!」


 ハクが更なる魔法を使うと大きく周囲の空気が歪み、ところどころに炎が現れ、ハクと他の斥候4人の姿を隠し始めた。これも広範囲が歪んでいる。

 このままでは相手の行動が分からない。

 リカとパメラがいざ飛びかかろうとしたタイミングで上手く躱された形だ。


「む、これはまずいな。うかつに飛び出せない」


 飛び出そうとしたリカが一度足を止めて言う。


「うちらを突破したかったんやろ? でも残念、もうちょっと付きあってぇなぁ、その代わり、たっぷりサービスするでぇ」


「それはちょっと遠慮したいかな。――リカちゃん、パメラちゃん、私がこれ打ち破るから、そしたらお願いね」


「任された」


「了解デース!」


「じゃあ行くよ! ユニークスキル発動――『サンクチュアリ』!」


 ミサトが掲げたワンドの先が光る。

【セージ】のユニークスキル『サンクチュアリ』、それは聖域を作るユニークスキル。

 聖域内では敵にダメージを与えるほか、味方は回復し、さらに地形効果やエリア魔法を上書きする効果も持つ強力なユニークスキルだ。

 おそらくハクの魔法が地形的な効力を生み出すと見たミサトはここでユニークスキルを発動した。


「おお、これは。『炎の陽炎』が打ち消されるとは! しかも僅かにダメージが入ると?」


 陽炎が打ち消され、姿があらわにされたハクが驚く間にミサトが叫ぶ。


「いっけぇぇパメラちゃん!」


「まっかせるデース! 『暗闇の術』!」


〈暗闇〉の状態異常にする煙幕がパメラの口から吹かれるようにして放たれる。

 相手は聖域で陽炎が打ち消され、驚愕で隙をさらしていた、これは直撃するかと思われた。がしかし、相手も決勝まで残る強者たち、すぐに気を取り直し、パメラへ迎撃してきた。


「「『影縛り』!!」」


「な!?」


「おわー、なんデスかこれは!?」


 取り巻きたちだ。

 そのうち【シャドウ】の二人が同じ魔法を使用、これは先ほどミサトが使った『プリズン』に近い、相手を〈拘束〉状態にする影の帯がパメラを襲った。攻撃中だったパメラはこれを回避できずに縛られ、〈拘束〉状態にされる。


「隙あり!」


「我らがいること忘れていたようだな!」


 続いて残り二人が接近戦を仕掛けてくる。陽炎で姿が見えなくなっている間に近くまで来ていたようだ。〈拘束〉状態で身動きの取れないパメラが狙われた。

 しかし、


「それはそちらも同じこと、皆を守るのはタンクである私の役目だ。――二刀流『弾き返し』!」


「な!」


「ばかな!!」


 割り込んできたリカによって行く手を阻まれ、さらには攻撃を弾かれるというおまけつきで返される。

 さらにおまけは続く。


「秘技――『ツバメ返し』!」


「――!」


 弾かれた一人がリカの追撃を受け、声も出せずに吹っ飛ばされた。

 防御スキルでパリィ、からの『ツバメ返し』はダメージが大きく上昇する効果がある。

 弾かれた斥候は元々紙装甲だったHPを7割も削られダウンした。

 さらに、


「これ取っちゃうね、――『キュア』!」


 パリンッというガラスが割れるような音と共に、影の帯が砕け散る。


「お! 助かったデース!」


〈拘束〉の状態異常に掛かっていたパメラもミサトにより解放される。

 ついで刀を抜くと、その強力なAGIを活かし、自分を拘束した相手に飛び掛った。


「よくもやったなデース!」


「く、なんの!」


 自分たちの〈拘束〉がいとも簡単に解除された驚愕で動揺した斥候たちは慌てて防御の構えを取ろうとするが、間に合っていない。


「皆、下がり! ――『炎の大蛇』!」


「させないから! ――『リフレクション』!」


 ハクが間に合わないながらも援護を送ろうとするが、そこはミサトが差込で進路上に『リフレクション』を張り、弾いて止める。

 弾かれた『炎の大蛇』がハクの下に返っていった。


「わ、っと!」


 これを避けるハクだが、その時にはすでにパメラの攻撃が斥候二人に刺さっていた。


「『お命頂戴』デース!」


「い、いやよ!」


「うわわわ!!」


 スピードを活かし、完全に翻弄するパメラ。

 その戦闘地点とハクの間に割り込むミサト、そして残り二人の斥候を相手に牽制するリカ。

 状況は〈1組〉に有利になりつつあった。


「これは、まずいわねぇ」


「あなたには私の相手をしてもらうよ」


「まさか、ここまで地力が違うとは思わんかったわぁ」


「? ずいぶん余裕そうだね?」


 不利を悟ったにしては余裕が感じられて、ミサトは気を抜かないよう、何がきてもいいように気を引き締めなおす。

 聖域は消えてしまい相手の継続ダメージも解除されてしまったが、〈3組〉は全員が3割近くのダメージを負い、一人に至ってはあと数秒聖域が解除されるのが遅ければ退場していただろうところまで追い詰められていた。


 後はパメラとリカが取り巻きを倒せば陣形は完全に崩れ、突破は容易いと思われる。なのにこの余裕はなんだろうとミサトはいぶかしむ。


「ふふ、タイムアップや。間に合うたで?」


「! 『テラバリア』! ――うっ!?」


 それにミサトが気が付き咄嗟にバリアが張れたのは〈エデン〉の練習の賜物だった。

 ――ドォンっと何か重いものが叩きつけられるような音が響き、ミサトが咄嗟に張った『テラバリア』に衝撃が走る。見れば、バリアに巨大な大岩が叩き付けられ、バリアがミシミシと悲鳴を上げている所だった。


「何? 後ろからのあれを防ぐだと?」


 驚いた声でその結果に目を見張るのは〈10組〉がリーダー、ジェイ。

 隣のマスにいた彼がこの奇襲をした張本人だった。


 ジェイの職業(ジョブ)は【超能力者】。そのスキル『サイコキネシス』で岩を持ち上げ、高速で放ってきたのだ。岩自体がスキルによるものではないためマスの境による威力の減退効果は受けない。故に隣のマスからの高威力の奇襲が可能だった。

 同時にリカ、パメラにも放たれた岩だったが、それも斬り払われ回避されていた。


 ハクがそちらを向くと少し驚いたような、しかし楽しむような口調で言った。


「おや、直接来なさるとは意外でしたなぁキールはん。そんなに出張ってもらっといて言うのもなんやけど一つ忠告や、〈1組〉をあまり甘く見ると痛い目あいまっせ」


「そうだね。でも〈1組〉を削るこのようなチャンス、滅多に無いことも事実。君たちリーダーが出張ってきているのに僕だけ引きこもるなんてできないし、これは必要なことだよ。できれば君も拠点で引きこもってくれていれば助かったのだけど?」


「ふふ、それは無理な相談やなぁ。うちが出向かんと誰が拠点落とせるん?」


「まあ、そうだよね。それにしても序盤から〈1組〉とは、――ジェイも気を引き締めたほうがいいよ」


「言われるまでもない」


 そこに居たのは先ほどまで小山の頂上から高みの見物をしていた〈9組〉のリーダー、キール本人だった。その姿は以前観客席にいた応援団の衣装とは大きく変わり、学ラン装備にボロボロのローブを着込み、グルグルメガネを外してその代わりにドクロ風のお面を右耳辺りに着けていた。さらに注目するのはその口調に似合わない大鎌、紫と黒を基調とした毒々しく妙にテカテカ光る怪しい大鎌をキールはその肩に担いでいたのだった。その姿こそ、二つ名〈死神〉と名付けられた、その最大の理由である。


 最初リカたちとぶつかった斥候組4人を含め増員6人を追加した〈9組〉10人という団体で近づいてきていた。さらにそこへ〈10組〉リーダーも3人を引きつれ、近づいてくる。


 そのハクとの親しげな話し方から考えても狙いは一つしかないことがわかる。


「やってくれたね」


「何、誰も〈3組〉が単独で動いとるなんて言ってあれへんよ」


 奇襲を完全に防ぎきったミサトがハクに薄目を送る。


 つまりはこの〈3組〉と北と東から来ていたクラスは組んでいたということだ。多分、試合が始まる前から。

 だからこそ乱闘に加わるなどの、大胆な発言が出来ていたのだと今更ながら納得する。最初から彼女たちの敵は〈1組〉だけだったのだ。


「ま、情報は得たし、私たちは撤退しようかな」


「うふふ。そないなこと言わんと、もうちょっと遊んでいきなはれ『炎の舞』!」


「『スピリットバリア』!」


 再びハクの炎が暴れ、ミサトが結界でこれを防ぐが、そのために足止めされる。

 そこへ後方にいたパメラが合流した。


「こっちは一人倒したデスが一人逃げられたデス」


「ナイス、パメラちゃん」


「イエイ、と言いたいデスが、ちょっとピンチデスよこれ?」


「――相手は20人弱、こっちは3人かぁ。うーん、これは確かにちょっとまずいかも」


「逃がさへんよ~」


〈3組〉の取り巻きのうち一人を倒したパメラだったが、自在に操られる炎の海が退路を塞いでいた。

 マスの端は切り立った山と山に囲まれていて山を登って逃げるのも厳しい。


 北東からは14人の戦闘集団が追い詰めようとしていて、追いつかれたら多分負ける。

 ほぼ包囲されていた。

 ならば、選択肢は一つしかない。


「このままダメージ覚悟でハクを強行突破し、南東へ撤退するよパメラちゃん『リジェネプロテクバリア』!」


「了解デ-ス」


 狙いは巨大な炎を操り一人で足止めしているハク。

 多少炎に焼かれても、HPが残っていれば問題はない。ミサトは結界付きの継続回復をパメラに施した。ミサトはRESが高いのでおそらく大丈夫だが、パメラは防御力が紙なので万が一がある可能性を考えてである。


「行くよ、今!」


「――『瞬動』!」


 炎を防いでいた『スピリットバリア』が消えたタイミングでパメラが一瞬だけ高速ダッシュするスキル『瞬動』でハクに踊り掛かった。

 炎の攻撃はほとんど『リジェネプロテクバリア』で防がれているが、回復が追いつかないほどには徐々にダメージを受けるパメラ。


 しかし、それも一瞬、すぐに懐に入ったパメラが二刀を振るう。


「――『お命頂戴』デース!」


 だが、それを読んでいたかのようにハクは笑った。


「ふふ、まだまだよ~、『爆風の狐火』!」


 使用した魔法は自分を中心に爆風を放出するもの、ハクの周囲が炎で溢れ爆弾が爆発したかのように爆風がパメラを弾き飛ばした。


「――あうっ!」


「パメラちゃん! 『ハイヒール』!」


「無駄よ、『火炎の渦』!」


「――うっ」


 反撃を受けて大きなダメージを負ったパメラをすぐにミサトが回復するが、さらに追撃の強力な炎の渦がパメラを直撃し、ふっとばした。


「『エクスヒール』! ――パメラちゃん大丈夫!?」


「しくったデース。怪我はないので安心するデース」


 すぐにミサトが近づき強力な回復魔法でパメラのHPを回復する。

 しかし、その失敗は致命的だった。


「ふふ、どうやら到着したみたいよ」


 その声にミサトは振り返る。すると巨大な岩を二つ持ち上げたジェイを初め、10人以上の敵がミサトたちに攻撃を仕掛けるところだった。


「たはは~、これは防ぐの厳しいかも」


 そんな弱気が思わず漏れてしまった、――その瞬間、


「『アポカリプス』!!」


 ――「ドガァン」という衝撃音が響き渡り、


 強力な魔法が〈9組〉と〈10組〉へと突き刺さった。


「わ、きゃ!?」


「なんデース!?」


 閃光が瞬いたかと思うと〈9組〉と〈10組〉の悲鳴がこだまする。

 非常に強力な魔法が突き刺さり、阿鼻叫喚が生まれたのだと遅れてミサトは気が付いた。

 そして続いて南西から歩いてくる影に気が付いた。


「まったく、情けないぞミサト」


「あ!」


 その者はミサトが、いや〈エデン〉で誰もが知る人物だ。


 不敵な動作で堂々とした歩みを見せ、紺のローブを身に纏い一目で魔法使いなのだと分かる装い。

 知的な表情に銀髪がとても映える〈8組〉のリーダー。


「メルト様!」


〈エデン〉の頼れる【賢者】、メルトがそこにいた。




挿絵(By みてみん)

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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[一言] 8組と同盟組んだ感じかな?
[一言] 8組も1組つぶしたらよくない? 1番になるつもりないなら別に良いけどね。
[一言] どうやら、レベル差やジョブの差は、そこまで絶対的な差ではなかったみたいだな。割と数で補えるようだ まぁ、実際にどれほどの差だったかはよく分からないけど
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