#512 上級職の試運転、連携編。ゼフィルスの一撃。
〈ダン活〉が連載して一周年経ちました!!
1年で570話! 頑張りました。
これからも頑張って連載していきます! よろしくお願いいたします!
クラス対抗戦を明日に控えた日曜日、今日はダンジョン攻略の日だ!
上級職に〈上級転職〉した五人で中級上位ダンジョン20層の攻略を目的として進もうと思う。
ちなみにハンナは錬金活動でダンジョンはお休みだ。ハンナもクラス対抗戦を前に忙しそうにしている。
さて中級上位ダンジョンだが、最下層50層からなる巨大なダンジョンだ。
攻略にはかなりの日数を必要とし、学生だけでは無く、この世界の人々の攻略を大きく妨げている一種の壁。
その難易度は高く、まず50層という階層数が厳しい。
中級上位ダンジョンというのは中級の中でも1層1層が最も広い。しかも〈ランク〉が高いほど層が広くなって難易度が上がる仕様だった。
ゲームではよくある現象だな。
しかし、これがリアルだとかなり大変で、最短ルートを知らなければ1層を調べるのに地図作製だけで数日掛かってしまうこともあるほどなのだとか。
マジかよ。
そのため、中級上位ダンジョンの地図はかなりの価値があり、ギルド同士での共有、または販売を学園は黙認しているのだという。
学園は学生たちの成長の妨げになるとして地図の販売は基本していないからな。ここらへんはゲームと同じ仕様だ。RPGではあらかじめ地図が売られていること自体が少ないし。
しかし、学園が黙認するのも仕方ない。
何しろ50層だ。一から地図を作製していたらどれくらいの年月が掛かるのかも分からない。
〈キングアブソリュート〉が上級ダンジョンを大人数で攻略しつつも未だに中層にしかたどり着けていないのも同じ理由だな。
またモンスターも非常に強くなってくる。
何しろ中級の上位ダンジョンだ。下級職で通じる敵の中で最上位のモンスターが登場するダンジョンが中級上位である。と言えばどのくらいの強さか察せるだろうか。
まあ、これが上級職になってしまうと、道中の敵が相手にならなくなってしまうこともあるのだが。
「『戦槍乱舞』!」
「プビィ―――!?」
また一体の〈ソードブルオーク〉が光に還った。
エステルの四段階目ツリー、『戦槍乱舞』は攻撃力と連撃が魅力の強力なスキルだ。
三段階目ツリーの〈スキル〉〈魔法〉を想定している中級上位ダンジョンのモンスターでは相手にならないだろう。
簡単に蹂躙できてしまう。
「なんだか初級ダンジョンの最初の頃を思い出すわね」
「あ、それ分かるわ! 私も今そう思っていたのよ。あの頃は攻撃魔法が使えなかったからあまり活躍ができなかったのよね」
シエラの発言にラナがそうそうと言わんばかりに思い出を振り返る。
「ん。ラナは活躍出来なかった?」
「カルアはあの頃まだ居なかったのよね。私は二段階目ツリーが解放されるまで攻撃魔法が使えなかったから、敵をバンバン倒すエステルと攻撃をものともしないシエラだけで攻略が簡単に進んじゃったのよ。バフも回復も要らなかったし、私、ボスしか活躍出来なかったの」
「ん。今みたい?」
「だからなんだか思い出しちゃったのよね」
ラナが懐かしいわ~と語る。
そういえば今のメンバーはカルア以外、初期のメンバーだったな。
現在攻撃役がエステルだけで事足りてしまうためラナは先ほどから傍観していた。
シエラは最初にヘイトを稼いだ後は四つの小盾を操るだけで相手の攻撃を受け止める練習をしている。
俺も傍観だ。今はまだ新しい装備の運用に慣れていないエステルとシエラがメインだからな。確かに、初級下位を攻略していた時の事を思い出すぜ。
「良い感じです。そろそろもう少し骨のあるモンスターを相手にしても良いかもしれません」
「賛成ね。このままだとワンパターンになりそうだもの。少し相手を替えたいわ」
だいぶ慣れてきたと判断したのだろう。エステルとシエラから要望が上がった。
これでも〈ランク8〉のモンスターなんだけどな、まだ2層だけど。
「了解だ。俺から見てもだいぶスムーズに戦闘できるようになってきているし、10層まで一気に進むか。カルア、探知頼む」
「ん、任せる。――『ソニャー』!」
10層にはフィールドボスがいる。
それに通常モンスターも種類が豊富になってくる。魔法を使う種類もいるほどだ。いい練習になるだろう。
カルアに罠の発見とモンスターの探知を任せ、俺たちは最短距離で10層へと進んでいった。
10層にたどり着いた俺たちは、まず通常モンスターとの戦闘で連携を磨くことにした。
上級職になって少人数でも撃破できるようにはなったが、ボスはそうはいかないからな。
「ん、モンスター、いた」
「ブオオオォォォォ!!」
「ギャギャギャー!!」
「〈ソルジャーブルオーク〉一体、〈ソードブルオーク〉一体、〈アーチャーブルオーク〉一体、〈ランスホブゴブリン〉一体、〈デブホブゴブリン〉一体の編成か。シエラ、デブ以外を頼む、エステルはデブを倒せ!」
「分かったわ。――スキル『四聖操盾』! 狙いを定めて――『シールドスマイト』!」
俺の指示にまずシエラが四つの小盾を展開する『四聖操盾』を発動する。シエラの意思で四つの小盾が動き始め、一斉に敵へと飛んでいく。
狙いはデブ以外の〈ソルジャー〉〈ソード〉〈ランス〉〈アーチャー〉。
そこでシエラは二段階目ツリーのスキル、相手を攻撃してヘイトを稼ぐ『シールドスマイト』を発動する。
「プビャ!?」
「ゴブッ!?」
四つの小盾が狙い違わず四体の敵にそれぞれ突撃し、それぞれのヘイトを稼いだ。
これがシエラのスキルの中でも大きく変化した部分だ。今のように元々単発スキルだったものが一部、ユニーク級スキル『四聖操盾』によって複数へ効果をもたらす能力へとパワーアップしているのだ。
しかも、今まで危険を承知で盾が届く位置まで近づき、尚且つ攻撃を当てなくてはいけないため地味に難易度の高かった『シールドスマイト』が、ただ遠距離から盾を飛ばして突撃させれば良い便利なスキルへと化けていた。
さらに、自分の狙った相手のみのヘイトを稼いでくれる、とんでもないスキルへと変貌している。さすが上級ユニーク級スキルの効果だぜ。
『シールドスマイト』を叩き込まれ、いや突撃された四体はシエラへと視線を向けた。
残りの〈デブホブゴブリン〉、腹やその他が大きく膨れ、木製の盾を構えたタンク系のホブゴブリンへは、我が〈エデン〉の中でも最も攻撃力の高いエステルを向かわせる。
「お任せください。――そのような盾で私の攻撃を防げると思わないことですね。――『ドライブターン』!」
「グギャ!?」
「後ろがガラ空きです。――『戦槍乱舞』!」
エステルが〈蒼き歯車〉を回し、デブに急接近した。
デブはそれを見て太い丸太を何本も束ねたような盾を翳してガードしようとするが、エステルの三段階目ツリー『ドライブターン』によって正面から接近した後Vの字のような軌道で後ろに回られ、無防備な背中に槍を回転させながら連打される。
「グギャギャギャ―――!?」
強力な四段階目ツリーの攻撃を受け、盾として非常にHPが高かったはずのデブがエフェクトに沈んだ。
エステル、強っ!
「こっちも負けては居られないな! カルア、奥の〈アーチャー〉を頼む。ラナは残りを魔法で攻撃、崩れたところを俺が強襲する」
「ん。おけ。『フォースソニック』!」
「任せてよね! 出てきなさい私の剣――『大聖光の四宝剣』!」
シエラに向かってきた三体と奥のアーチャーだったが、シエラの守りは突破できず。
その隙にカルアが駆けて奥の〈アーチャー〉を斬り、相手を務めてくれたので俺たちは残りの三体だ。
シエラが四つの小盾を前に出して後ろに下がった直後、ラナから圧倒的な光の宝剣が四つ叩き込まれる。流れるような連携。
「プギィ!?」
「プギャ!?」
前に出ていた〈ソルジャー〉と〈ソード〉が大ダメージを受け、HPがレッドゾーンへ突入した。やはり10層ともなると、ちょっと残っちゃうか。
「『ソニックソード』!」
予想通りだったので俺が『ソニックソード』でトドメを刺し、残りは運良く宝剣が刺さらず生き残った〈ランス〉だけになった。
「んじゃ、試しにこれの具合を確かめさせてくれよ」
「ぎゃ、ギャー!!」
俺が構えると、怒りの形相で近くにいた俺へランスを叩き込んでくる中鬼。
だが、夏休みにタンクとしての修練を積んだ俺は、それを簡単に盾で逸らした。そのまま前に出る。
攻撃を完全に逸らされたホブゴブリンは無防備で俺を見つめるだけだった。
そこに上級職【救世之勇者】へと到り手に入れた四段階目ツリーを放つ。
「オーバーキルだが勘弁しろよ、――『聖剣』!」
肩から斜めに一閃。
ズドンッと、一瞬で衝撃がホブゴブリンの体を突き抜けたかと思うと、完全に動きが停止した。衝撃が全て貫通し、吹っ飛ぶこともできずその場に固まって留まる。
そしてHPゲージがそのままゼロとなり、ホブゴブリンは体勢を崩すことも無くエフェクトに消えていったのだった。




