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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第十章 〈ダン活〉上級職ランクアップ!

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#497 上級職ランクアップ! エステル編!




「――ゼフィルス殿、ありがとうございます」


 エステルは俺が手渡した〈天槍の宝玉〉を(うやうや)しく受け取った。

〈天槍の宝玉〉の見た目は〈天聖の宝玉〉に似ている。というより〈宝玉〉系はみんな同じような形だ。

 ワールドカップトロフィーみたいな形をベースに、〈天聖〉は中央が球体になっているが、〈天槍〉は大槍となっている。


 また〈天槍の宝玉〉はレア度こそ〈天聖の宝玉〉に届かないのだが、リアルでは〈天槍〉の方がお値段が高かった。こちらは使用方法が一部判明していて、主に「騎士爵」系統の使用アイテムとして有名だったからだ。その例に漏れず、【戦車姫】に就くためにも〈天槍の宝玉〉が必要だった。実は〈天槍〉を見つけるのには地味に苦労したんだ。


 エステルのように感謝の気持ちを体現するよう受け取られると、なんとなくその努力が報われた気がして嬉しくなった。


 これで、残りの発現条件は〈〈戦車〉系装備をしながら〈上級転職(ランクアップ)〉〉だけだな。


 へ? 〈戦車〉とか室内で装備できるの? と思うかもしれないが、できるタイプもある。

 いや、ゲームではもっと大型も装備できたがそこはリアルとの差だろう。

 こんなところで大型の〈戦車〉なんか出した日にはとんでもないことになる。


 ちなみに後で知ったのだが、狭い室内ではそれ以上大きな物を〈空間収納鞄(アイテムバッグ)〉から取り出すことは出来ないそうだ。

 空間が足りないと弾かれるらしい。何そのハイテク!? ファンタジーの神秘だぜ。


 ということで一人乗り専用の〈戦車〉系を用意した。

 ――それがこちらだ!!


「エステルはこれを装備してくれ。小回り機動系、通称〈足特装型(あしとくそうがた)〉と呼ばれている二輪戦車――〈(あお)歯車(はぐるま)〉だ!」


 じゃん! と俺は〈空間収納鞄(アイテムバッグ)〉からそれを取り出す。


「? ゼフィルス殿、これは〈戦車〉なのですか? その、どう見ても足装備に見えるのですが?」


 俺が取り出した物を見てエステルが首を可愛く(かし)げた。

 まあ、そうだろう。俺が取り出したのはどう見ても戦車には見えない。むしろ長いロングブーツに見える。

 ただし、足に車輪が付いていなければ、だ。


 なんとこの〈蒼き歯車〉、(もも)まで覆う長く機械的なロングブーツをベースに円盤型の車輪のようなものが足に装着されている見た目をしている。

〈セグウェイ改〉のようだが、あれは乗物だったのに対し、これは完全に足に直結している見た目だ。乗るセグウェイではなく、付けるセグウェイと言ったほうがイメージしやすいか?

 縦横無尽に駆け巡ることができる、立派な〈戦車〉装備の一つである。

〈戦車〉の大きさとしては、おそらく〈戦車〉装備の中では最も小さいだろう。小回りタイプだ。

 正直、見た目カッコイイ。……超カッコイイ見た目だ!


 こほん。それはともかく、これならまったく問題ないだろう。

 ちなみにこれは中級上位レシピの装備で、【クラフトマン】の寡黙な先輩もとい、ガント先輩に〈足特装型(あしとくそうがた)二輪戦車(にりんせんしゃ)〉で何かないかと聞いたら普通にレシピを持っていたので作ってもらったものだ。素材が無かったので高くついたが、これは必要経費だろう!


 早速装備してもらう。

 これは足装備の上からでも普通に装着できるタイプだ。装備のカテゴリーとしてはアクセサリー扱いになるからな。

 その代わりこれを装備すると足装備が完全に見えなくなってしまう欠点もあるが。


「えっと、装備しましたが、これは、立つのが難しいですね」


「エステル、手を貸すわ」


「シエラ殿、ありがとうございますっ」


 足が車輪なのでエステルは上手く立てず、シエラに支えてもらいながら立ち上がった。

 まるで初めてスケートリンクに立ったように不安定なバランスを懸命に安定させようとするエステル。

 まだ自力で滑るのは難しいようなので、シエラがスーッとエステルを引いて〈竜の像〉まで連れて来てくれた。


「エステル、なんだかその装備、すごくかっこいいわ!」


「グッジョブ」


「はい、とても胸が躍るようです!」


「そ、そうですか?」


 上からラナ、カルア、ハンナが目をキラキラさせて褒め、エステルは若干困惑していた。

 多分、鏡を見れば分かるよ。やっぱ〈蒼き歯車〉はロマンが詰まっていてカッコイイ!


 これですまし顔でスイーっと自力で動けていたら完璧だった。(何が完璧かは不明)


「少し装備に慣らした方がよかったかな?」


「いえ、大丈夫です。このままでも。シエラ殿が支えてくださるとのことですので」


「任せて」


 少し心配げに聞くと、シエラのフォローで大丈夫だとエステルの答えが返ってきた。シエラも問題なさそうだ。


「では〈天槍の宝玉〉使います」


 エステルが胸に抱いた〈天槍の宝玉〉を使い、粒子を出して消え、その粒子がエステルに浸透するように吸い込まれていった。

 隣で支えているシエラには吸い込まれてはいかないようだ。


「準備完了だな。これ〈上級転職チケット〉、エステルの分だ」


「ありがとうございますゼフィルス殿。では、行きます」


 息を呑むようなしぐさをした後、シエラに支えてもらっている方とは反対の手で〈上級転職チケット〉を受け取り、そのままその手で人差し指だけ伸ばした形で〈竜の像〉に触れた。


 そこにあったのはもちろん【戦車姫】の名。


「――【戦車姫】へ」


 エステルは当然のように迷い無く【戦車姫】を選んだ。


 すると、エステルもシエラたちと同様に演出が発生する。

 エステルが装備している〈蒼き歯車〉がライトグリーンに輝いて、まるで〈幸猫様〉の出すグロウな光のようにエステルの周囲を幻想的な灯りでいっぱいにする。

 正直、今の装備と合わさってすごくかっこいいです。

 ゲームの画面では味わえなかった別の感動があるぜ!


 ―――これでエステルは、【戦車姫】に〈上級転職(ランクアップ)〉だ。


 ひとしきり感動していると、すぐにグロウな光は消えていき、演出は終わってしまった。

 とりあえず言うことは決まっている。


「エステル、【戦車姫】への〈上級転職(ランクアップ)〉おめでとう。これからもよろしくな」


「ありがとうございますゼフィルス殿。私こそ、これからもよろしくお願いいたします」


 これで無事エステルも〈上級転職(ランクアップ)〉は終わりだ。

 ラナの〈白の玉座〉同様、〈蒼き歯車〉の装備も外し、回収する。

 ちょっと惜しいと思ったのは内緒だ。


 みんなもエステルに祝いの言葉を贈ってひと段落。



 次はハンナ、行ってみようか。




 後書き失礼します。

 こんがらがりそうなので装備カテゴリーについてまとめを説明。


〈サンダージャベリン号〉の装備カテゴリー、

〈アクセ①②〉〈乗り物〉〈馬車〉。


〈蒼き歯車〉の装備カテゴリー、

〈アクセ①②〉〈乗り物〉〈戦車〉。


騎乗竜(きじょうりゅう)〉の装備カテゴリー、

〈アクセ①②〉〈騎乗モンスター〉〈竜〉。


〈アクセ①②〉→アクセサリー枠を①と②、両方使う。


〈乗り物〉→無機物系。操作にスキル『乗物操縦』が必要。


〈騎乗モンスター〉→騎乗することが可能なモンスター系。装備や操作に『騎獣モンスターリンク』などのスキルが必要。テイムに『騎獣モンスターテイム』などのスキルが必要。プラス捕獲アイテムが必要な場合もある。


〈馬車〉→主に移動に使う。寝泊り可能。複数乗車可能。戦闘不可(蹂躙可?)。装備時『アクセル』系以外のアクティブスキル使用不可。作製に【クラフター】系が必要。


〈戦車〉→主に戦闘で使用。戦闘スキルと組み合わせが可能。移動にも使える。装備にスキル『乗物操縦LV5』以上が必要。作製に【クラフター】系が必要。


〈竜〉→装備と操作にスキル『人竜一体(じんりゅういったい)』と『騎獣モンスターリンクLV10』が必要。テイムに『騎獣モンスターテイムLV10』と上級の専用捕獲アイテムが必要、作製に上級職の【アイテム職人】系もしくは【錬金術師】系が必要。



 とりあえずこんなところでしょうか? 

 ちなみにエステルたちが覚えているスキル『ドライブ』系は、〈乗り物〉スキルに該当するので戦車でも使用可能です。

 モンスターも余裕で轢き倒します。戦車で。――『アクセルドライブ』!

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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[一言] >これは足装備の上からでも普通に装着できるタイプだ。 >その代わりこれを装備すると足装備が完全に見えなくなってしまう欠点もあるが。 これ、ハンナが装備中の〈猫球の足袋〉と同時装備すると、も…
[一言] 竜騎姫の発現条件随分難しいな
[良い点] >まとめを説明 わかりやすい説明 ありがとうございます
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