#460 やっべシャークだ! シャークが出たぞ!
「次は海、本番だ。セレスタン、水着の素材状況は?」
「市場でも集めてみましたがまだまだ足りませんね。水着は布面積が小さいものほど素材を使いますから」
俺の問いにセレスタンが首を振って答える。
その答えにメルトが難しい顔をして腕を組んだ。
「あれは不思議だ。スキルはいったいどんな仕事をしているのだ? なぜ布面積が少ないほど防御力が上がる?」
うむ。
本当に不思議だよ水着装備は。
男子とか、ただのトランクスタイプのはずがすげぇ防御力してるからな。
女子のビキニとか水着の中でもうトップクラスの能力値だ。強いぞ。いろんな意味で。
他の水着装備が弱いわけじゃないのだけどな。スクール水着タイプもかなりの防御力を誇るし。
水着不思議特性にメルトもしきりに首を傾げ不思議がるのも分かる。
「しかし当初の予定通り、女性陣に様々な水着装備を着てもらいたいのであれば今集めている素材の5倍は必要ですね」
「ああ、出来れば1人2種類といきたいところだが、人数が人数だからな。無理か。泊りではなく日帰りの方がいいかもしれないなぁ」
セレスタンの報告に俺も難しい顔をして腕を組んだ。
合宿するなら最低でも1度は水着を替えたいだろう。
1日目と2日目で違う水着の方が女子は嬉しいはずだ。
しかし、今問題に直面していた。装備品の素材集めが難航しているのだ。
メルトが苦言を言う。
「なあゼフィルス。やはり女子に来てもらったほうが良かったのではないか?」
「それはいろんな意味で無しだな。ここエクストラダンジョン〈魚材の海辺ダンジョン〉では敵が海の近くに発生する。海を目の前にして泳げず、素材集めしたら撤収とか寂しいじゃないか」
そう、今俺たち男3人がいるのは通称〈海ダン〉と呼ばれる、今度のサマーイベント予定地だった。
下見と素材回収を目的に現在男のみでここにやってきていた、のだが。
メルトの言うとおり、素材集めに人手が足りていない。
5人パーティで攻略するところを3人で進んでたらそりゃ足りないわ!
これで女子十数人分の装備を1人2種類整える素材を確保するとか、ちょっと難しかったようだ。
しかし、前準備に女子を連れて来ては色々と台無しだ。
こういうのは男が陰ながら準備をするものだ。
その代わり、本番になれば女子の素晴らしい御身を拝見する褒美を賜れるのだ。
対価も払わず、むしろ手伝ってもらって拝めるなんて以ての外、女子の水着姿はそんなに安くないのだと俺は考える。
まあ、これは俺の持論なのだが。ギルドマスター命令だ。
メルトよ、諦めてくれ。
俺も腹を括る。
「仕方ない。1人1種類にするしかないか。合宿も無し、日帰りで、夜まで滞在してから帰還するプランとしよう。泊りがけで〈海ダン〉に来るのは2年生からだな」
「その方がよろしいかと」
俺は当初予定していた素材集めの規定値を見直した。
セレスタンもそれに同意し、メルトが意見を言う。
「来年までには男子の数を増やそう。どう考えても少ない」
「男子を入れるにも性格がなぁ。女子が嫌がる奴は入れたくないし、誠実さがあってSランクを目指せる熱意のある男子……、どこかにいないものか……」
「……それでもなんとか見つけるしかないぞ」
まあ、メルトの言うとおりだ。いい男子、いないかなぁ。
うっ、海を目の前にいい男子とか考えるんじゃなかった。寒気がしたぞ!
それはともかく、俺たちは見直した素材数を元に、効率よく狩りを進めていった。
「〈アノマロカリュス〉が出たぞ! こいつは絶対に逃がすな! メルト、弱点雷属性、行くぞ!」
「おう! 『マジックブースト』! 『メガライトニング』! 『ライトニングスタン』!」
「『ライトニングバースト』! 『シャインライトニング』! 『属性剣・雷』! うおおりゃぁぁぁ!!」
「ギギィィーー!?」
巨大な陸戦アノマロカリス型モンスターを殲滅したり。
「ゲッ! ゼフィルス、シャークだ! シャークが出たぞ! ヤバい! ちょ、しかも陸に上がって来るだと!?」
「慌てるなメルトよ。あれは〈レッグホージロシャーク〉別名:足つきホホジロザメ。あまりに人を食べた過ぎて陸に上がるようになった足つきの人食いザメだ」
「ダメじゃないか!! 滅びろ! ユニークスキル『アポカリプス』ゥゥ!」
「シャァァァクッ!?」
サメ型モンスターを殲滅してサメ皮をゲットしたりした。ちなみにメルトはサメが苦手な模様だ。珍しく声を荒げていた。諦めろメルト。シャークの素材は水着でたっぷり使うんだ。これからシャーク狩りに出るぞ。
ちなみにセレスタンはシャークを相手にしても動じることなく、涼しい顔で『上段回し蹴り』を繰り出し〈レッグホージロシャーク〉をなぎ倒していたが。やべぇなセレスタン。
そんな感じに素材を集めていたらなんとか夕方には規定数が集まった。
「なんとか1日で終わったなー。お疲れ様メルト、セレスタン」
「ふう、ハイペースで疲れた。今すぐベッドに身を預けたい気分だ」
「お疲れ様ですゼフィルス様。素材はいかがいたしますか? 私の方で〈ワッペンシールステッカー〉様の方へお持ちいたしましょうか?」
「ありがとうなセレスタン、だが俺が行くさ。ちょいマリー先輩に頼みごともあるしな」
「かしこまりました」
「よし、最後に救済場所のサマービーチを下見して帰ろう。メルトも、ミサトがどんな水着を着けてくるか楽しみにしておけよ」
「……なぜミサトが。まあいい、この労力に見合うことを願っておくか。タダ働きはしんどいからな」
「メルトはミサトに関しては素直じゃないなぁ」
そんな感じに俺たちの水着素材集めはなんとか終了し、その後俺はマリー先輩のところに素材を納品に向かったのだった。
あとは女子に通知しておけば勝手に注文して仕上げてくれるだろう。
どんな水着を着てくるかは当日のお楽しみだ。
うむ。楽しみだなぁ。
それから1週間が過ぎ、〈海ダン〉へ行く前日。
とうとうラナたち帰省組が帰ってきた。




