#427 テストが終わればお疲れ様の打ち上げだー!
テスト期間が終了した。
それすなわち、長きに渡るダンジョン封鎖の解放を意味する。
そしてみんなは、テストが終わったら何をする?
そんなもの古今東西決まっている。
お疲れ様の打ち上げだ!
ということで、行ってみよう!
「お疲れ様の、〈ニャブシ〉狩りだーー!!」
「おー!!」
「ゴーゴー!」
楽しい楽しい〈ダン活〉のお時間が帰ってきたのだ!
俺は目からビームを放ちかねない目力で〈ニャブシ〉狩りを宣言する。端的に言えばくわっとした。
テンション高めにラナが、そしてやけに冴えたような目をしたカルアが手を挙げて応えてくれた。
さすが、ノリが分かっている。
カルアなんか勉強漬けの毎日だったのでノリノリだ。ちょっと珍しい光景。
俺たちはリカとエステルも巻き込んでそのままお疲れ様の〈ニャブシ〉狩りを決行。
〈孤高の小猫ダンジョン〉10層フィールドボスの〈猫侍のニャブシ〉に高いテンションのまま突撃し、サクッと倒した。
ヤバかった。
テスト明けのテンションがマジでヤバい。
後々のMPとか考えずにマジで全力攻撃してしまった。
ちょっと気持ちよかった。
そしていきなりの宝箱回、しかも〈金箱〉だった。
「あああ! これはテスト期間中休み無く〈幸猫様〉にお供えしまくった結果に違いない! だから俺が開ける!」
「ちょ、ゼフィルスずるいわよ! 平等性に欠けるわ! それに〈幸猫様〉にお供えしていたのは私もなのよ! きっとこれは〈幸猫様〉が私のために用意したのよ!」
「ま、待て待て落ち着け二人とも!?」
〈金箱〉を見た瞬間の俺とラナの行動は早かった。
一瞬で宝箱に詰め寄り、俺が宝箱の右部分を、ラナが左部分を押さえたのだ。
先頭でタンクを務め、宝箱に一番近い位置にいたリカがビックリして目を白黒していた。
すまんリカ。
しかしダメなんだ。
俺はもう二週間近く〈金箱〉を開けていないんだ。
「見ろこの腕を、〈金箱〉を開けた過ぎて禁断症状が出ている」
俺の腕がピクピク震えていた。きっと俺の腕は宝箱を開けたくて疼いているのだ。
「ただ力が入っているだけじゃないか?」
リカが冷静なツッコミを入れてくるが気にしない。
「なによそんなもの。ボスにトドメを刺したのは私よ!」
確かに最後怒りモードに入った〈ニャブシ〉をこれ以上無いタイミングでズドンッして倒したのはラナだった。ナイストドメだった。
く、それを言われると辛いかもしれない。
「二人で開ければ良いじゃないか?」
「「それもそうだな(ね)」」
リカの一言で俺たちは一瞬で引き下がった。
うん。ただテンションが上がってじゃれていただけだ。本気じゃ無いよ。
ということで、紆余曲折あったような無かったような感じに話は進み。
俺とラナはポジションをそのままに「せーの」でパカリと〈金箱〉を開いた。
うーん。二週間ぶりの〈金箱〉の重み、ドッキドキの緊張感。そして視界を埋める金ピカ。
どれも俺の心をトキめかせる。
ああ。この感覚だよ。〈金箱〉こそ最強だ!
テンションが上がりきった状態で〈金箱〉を開け放つと、中から出てきたのは、〈ニャブシ〉が持っていた刀。
「やっと刀キター!!」
「おお!?」
俺の魂の叫びにリカが驚きの声を上げる。
やったよ。これが欲しかったんだよな。
刀だよ刀。
俺たちがテスト期間が始まるまで、時間を見つければ〈ニャブシ〉狩りに赴いていたのは侍装備を得るためだった。
〈ニャブシ〉の〈金箱〉からは刀がドロップしやすい。
しかしフィールドボスなので〈公式裏技戦術ボス周回〉は使えない。
そのため毎日とは行かずとも、時々時間がある時に狩っていたのだが、やっと〈金箱〉が出たな。
これも〈幸猫様〉に毎日お供え物をしている結果だろう。今日も帰ったらお供えしなければ。
「これは、見事な刀だな」
「〈名刀・猫鈴華〉、ここら中級中位ダンジョンでドロップする刀の中ではトップの攻撃力を誇るんだ!」
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・片手刀 〈名刀・猫鈴華〉
〈攻撃力84〉
〈『クロス猫カッシュLV6』『武士猫上段斬りLV6』『三連ニャ切りLV6』〉
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〈名刀・猫鈴華〉は〈猫侍のニャブシ〉からドロップする3種の刀の中で最も攻撃力の高い刀だ。
その実力は上級下位でも通用するほど、と言えばどれくらい強力な刀か分かるだろう。
スキルは3つ、『クロス猫カッシュ』『武士猫上段斬り』『三連ニャ切り』という猫モンスターや〈ニャブシ〉が使っていたスキルの一部を使う事ができる。
全てがアクティブ攻撃スキルなのでタンクのリカとの相性的にはあまり良くなそうに思えるが、リカのSTR値はすでに300に達している。攻撃でもそれなりに活躍が出来るのだ、問題は無いだろう。上級に備えて装備を更新するべきだ。
リカは悩んだのち、右手を〈名刀・猫鈴華〉にし、左手はカルアにもらった〈六雷刀・獣封〉を装備するようだ。
初期から持っている〈剛刀ムラサキ〉は予備の武器ということで取っておくことにするようだ。
〈金箱〉で目的の刀がドロップした事で振り切れたテンションがもっと暴走した俺たちは、さらにノリと勢いで他のFボスたちを挑んだ。
どんどん挑んだ。日が暮れるまで楽しんでしまったよ。
そしてやっと落ち着いてギルドに戻ってきた俺たちをシエラがジト目でお迎えしてくれたのだった。




