#425 試験準備期間突入! ギルドでみんなで勉強会。
今日からは学園の方針に従い、放課後はギルドで勉強会だ。
サブメンバーも誘って新しい〈エデン〉のギルド部屋で勉強会をする。
もちろん参加希望者だけなので、自分の部屋で勉強したいという人や他の友達と勉強したいという人、そもそも勉強が必要ない人などは不参加だ。
強制はしない。
だけど、勉強に不安が残る人は強制な。
俺たちも長期ダンジョン週間がかかっているのだ。
勉強には全力を尽くす所存である。
まずは勉強が苦手な人、得意な人で分け、
苦手な人はどのくらい苦手なのかを見る。補助が必要そうなら誰か勉強が得意な人に見てもらうのだ。
また、得意な人には苦手な人へ勉強を教えてもらえるかを聞き、OKを貰った人を先生役にして、苦手な人に勉強を教えることにした。
その中でも特に光って勉強ができたのがシエラ、セレスタン、メルト、レグラムだった。
このメンバーに俺を含めた5人が今日の先生役をしている。
「うう、男子たちの頭がすごくいい件」
「これじゃ女子の立場が危ういよ。まずいよ。でも幸せ……」
「1組の男子たちとは出来が違うわ。もちろん〈エデン〉メンバーを除いて」
サチ、エミ、ユウカの仲良し三人娘が、俺たち先生組を見て戦慄(?)していた。
若干顔が赤い。
ちなみに俺が彼女たち、仲良し三人娘の先生役をしていた。
彼女たちも1組に残るために必死なのだろう。俺に目を付けるとはお目が高い。
「3人とも、ちゃんと聞いてるか?」
「「「はい! ちゃんと聞いてます!」」」
「元気があってよろしい。では次の問題だ。『眼を使う魔法職は何がありますか? あるだけ全て答えよ』という引っかけ問題だな。まだ一年生に出るのは下級職だけだからここの欄には下級職のみ記入する」
セレスタンとリーナがどこからか持ってきた過去問のペーパーを資料代わりにして三人娘に注意点を語る。
「これの引っかけは〈魔法職〉という部分だ。答えが分かる人」
「「「はい! 【眼術師】です!」」」
「よし、みんなそろって正解だ」
「やったー」
「えへへ」
「これくらいはね」
【眼術師】とは目を使った魔法を使う魔法職のことだ。
目から炎やら氷やらビームを放つことができる。ちなみにコピー忍者はできない。
彼女たちの答えは一応は正解だが、まだ少し足りないな。
「だが問題は『あるだけ全て』と書いてあるぞ、つまり他にもある。誰かわかるか?」
「えっと、眼だよね。んと、あ! 【中二病】とか?」
サチが閃いたとばかりに言い、エミとユウカはそれだ! とでもいいそうな雰囲気だが。
違うよ?
あれは邪眼ちゃんが目を光らせているだけだよ?
「残念ながらハズレだな。そこが引っかけだ。この問題は、要は【眼術師】系統の職業を答えろという問題だから、答えは中位職の【眼術師】と高位職の【魔眼使い】が正解だ。ちなみに【中二病】は魔法職ではないので該当しない。当然その上級職の【邪気眼】も同様だな。ここ間違えやすいから気をつけろよ」
「ああ~、そっか~」
俺が答えを教えると三人娘がサラサラとノートを取る。
彼女たちも頭は悪くない、ただ1組の進んだ授業に付いていけなかっただけだ。
1組は授業の質が高い分難易度も高いからな。
こうして噛み砕いて説明すればちゃんと飲み込んでくれる。
その後も勉強会を続け、夕方には解散した。
帰りがけ、レグラムが夕食に誘ってきた。
「ゼフィルス、夕食を一緒にどうだ? メルトとセレスタンもいる」
「おお、いいな。俺も一緒に行こう」
こうして男4人で夕食を囲むことになった。
食堂で食事を注文し、4人席に座る。
「レグラムはうどんセットか。なんか似合わんな」
レグラムの持ってきた食にメルトがポロッと言う。
確かに、【花形彦】に就くレベルの金髪イケメンであるレグラムがうどんを啜る光景は女の子の幻想を打ち砕いてしまうかもしれない。
しかし、それは本人も分かっている様子だ。だが気にしてはいないように言う。
「放っておくがいい。メルトこそ魚定食に牛乳は合わないのではないか?」
「……そうだな、食事に似合う似合わないは関係ない。不毛だ」
レグラムの返しにメルトが首をゆっくり振った。
そうだ。食事くらい好きな物を食べたらいい。
「ゼフィルス様は、夏野菜炒め定食に卵掛けご飯ですか」
「食堂のメニューを全部制覇の旅中だからな。メニューの上から順番に行って今日はこれだ。夏野菜、美味いぞ」
「そうですか。では明日は僕も同じものを食べましょうか、美味しそうですね」
「セレスタンは和食なんだな」
「今日は甘い煮物の気分だったのです。頭を使いましたからね」
「そうだったな。皆もお疲れ様だ」
セレスタンが煮物をチョイスしたのは頭脳労働のせいだったみたいだ。
俺は改めて皆を労った。
「しかし、レグラムがここまで頭がいいのは意外だった」
「レグラムは頭良いぞ。俺よりクラスの順位は高いからな」
「メルトよりもか、すげえな」
俺が素朴な疑問を口にするとメルトが一つ頷いて評価を告げる。
なんと、【賢者】メルトよりも〈戦闘課8組〉での成績は良いらしい。
確かに、言われて見ればレグラムは〈彦職〉だからな。【賢者】より格上には違いないが。
「なに、そう大げさなものではない。効率よく勉強をしていれば誰でもできることだ」
「それが難しいから、すげえって言われるんだけどな」
「ふふ。なるほどそうだな。違いない」
レグラムは俺の返しが気に入ったらしい。なんかクツクツと喉奥で笑っていた。
場が和み、食事がひと段落したところでさっきの勉強会の話に移った。
「みんな受け持った生徒の調子はどうだ?」
「まずまずだ。このまま続ければ赤点回避は容易いな、平均点は超えるだろう」
「こちらもだ。赤点を回避するだけなら問題はない。ただ上を目指すとなると厳しいかもしれん」
俺の質問に、レグラムに続いてメルトも応える。
今日レグラムが受け持ったのがハンナ、メルトが受け持ったのがパメラである。
ちなみに誰が誰に教えるのかは……、決めるときに色々あったので省略。
ハンナはそもそも授業があるのが〈生産専攻〉なのでそっちはアルルと勉強会をするらしい。だが共通する一般授業では数学と歴史が苦手なのでその辺をレグラムには教えてもらっていた。
手ごたえ的には悪くは無いらしい。
パメラは数学を初め、ダンジョン攻略、職業、特産、と苦手科目が多い。
このことから分かるようにパメラは勉強自体が苦手らしかった。
しかし、そこはメルトの【賢者】の腕の見せ所、なんとか赤点回避くらいならできそうな気配らしい。平均以上の成績にするのは険しいらしいが。
「ここが踏ん張りどころですか、ギルドがさらに躍進できるよう、僕たちも精一杯手伝いましょう」
「おう、セレスタンも頼りにしているぞ」
セレスタンはエステルとラナを今日担当していた。
シエラとリーナが、俺がラナに付くことに反対したのでこの配置となっている。
まあセレスタンなら万が一も無い。安心して任せられる。
ちなみにシエラはカルアを付きっきりで見ていた。
カルアの耳がペタンとしていたが、頑張って欲しい。
夜はリカによる勉強会の予定だからな。
それからもギルド〈エデン〉と〈アークアルカディア〉は一致団結して準備期間をテスト勉強に今週を費やした。
途中、練習場で〈アークアルカディア〉を中心に錬度を上げたりと息抜きしたり、色々頭を捻って意外に楽しいテスト勉強期間だったな。
また夜は、テストの勉強の続きがしたいとラナが俺の部屋を訪ねて来たこともあったが、それは同じ目的で来ていたハンナとバッタリ会ったことで勉強会はなぜか潰れ、色々あってシズから夜間の俺の部屋への出入りを禁止する令がギルド全体に出されたりしたのだが、詳しくは割愛。
そしてテストの週がやって来た。




