#406 〈アークアルカディア〉メンバーの育成開始!
新しいメンバーの歓迎会&親睦会を開いた翌日、今日は水曜日だ。
朝クラスに出向くと憂鬱そうにしたラナが机に頬杖をついているのが目に入った。
近づくと側にいたエステルが軽く会釈をしてくれたので手を軽く上げて返す。
「おはよう。なんか憂鬱そうだなラナ」
「おはようゼフィルス。はあ。私も新しい子たちとダンジョン行きたいわ」
「おはようございますゼフィルス殿。ラナ様は今日の放課後は帰省の打ち合わせがありますから、朝からこの調子です」
なるほど。
エステルの解説に納得する。
どうやらラナは今日と明日行なわれる〈アークアルカディア〉メンバー育成レベリングへの参加ができなくて、さらに面倒な打ち合わせもあってテンションが下がっているらしい。
そういえば今日と明日はラナが用事でギルドに参加できないという話だったな。
それに伴い、従者と護衛であるエステル、シズ、パメラも付いていくため不在である。
まあ、なんと言うか間が悪かったとしか言いようがない。
金曜日はDランク試験の日だし、土曜日と日曜日は〈バトルウルフ(第三形態)〉狩りをするため〈アークアルカディア〉には関われず、休みが明ければ期末試験期間が始まって2週間はダンジョンに入れない。
ラナが〈アークアルカディア〉に関われるのはかなり先になってしまうだろう。
しかし、落ち込んだラナが可哀想なので代案を練って励ますことにした。
「期末期間中はダンジョンには入れないが訓練場には入ることが可能だ。さすがに勉強もあるから全員参加はできないだろうが、少しくらいなら関われる機会を作ってもいいかもしれないな」
「それよゼフィルス! 私のカッコイイ姿を見せてあげるわ!」
まさかそれが本音じゃないよなラナ?
しかし、あくまで期末期間中だ。後ろにいる従者が許可してくれるかは分からない。
俺が視線をエステルに向けると、ハッと察したラナもエステルに振り向いた。
「ねえ、エステル。ちょっとくらいなら構わないでしょ?」
「そうですね。気分転換くらいなら構いませんよ」
なんか簡単に許可が降りた。
いいのだろうか?
「エステル、ラナの勉強は大丈夫なのか?」
「はい。シズから苦手科目もそれほど悪くないと聞いております。さすがラナ様です」
「あ、そうっすか」
なんかエステルの目が曇っているようにも見えなくもなかったが、従者がいいというのならいいのだろう。
じゃあ期末試験の準備期間にも訓練場で多少の練習なんかをやることを〈学生手帳〉のギルドチャット機能を使って皆に知らせておこう。
後でシエラと詳細を打ち合わせないとな。
勉強をおろそかにするわけにもいかないが、気分転換は重要だ。その辺の案配を決めておこう。
そんなことを決めて放課後。
ラナはエステルとシズに手を引かれ、悲しそうな顔をして去っていった。
それを軽く手を振って見送り、俺たちはサブメンバーとダンジョンに行く。
集合は〈初ダン〉と〈エクストラダンジョン〉の中間地点にある、とある広場だ。
サブメンバーは全員参加。我が〈エデン〉はサポート要員も兼ねて8人が参加する。
合計18人となると結構大所帯だ。邪魔にならないように隅に寄るが、なんか他の学生から注目されている気がするのは気のせいじゃないかもしれない。
「おい、あれ見ろ」
「〈エデン〉だ。〈エデン〉のメンバーがいる!」
「はぁ、勇者さんはいつ見ても格好いいわぁ」
「いやいや、他の女子メンバーの方がすばらしい。〈エデン〉の女子は強くて綺麗で美しいとか最強だよ!」
「しかし、見ない人たちがいるな。ほとんど一年生のようだが」
「おいおい君は掲示板を見ていないのかね? あれは〈エデン〉が昨日新しく創立したという噂の下部組織だよ」
「俺は見たぞ! 昨日の掲示板はもはやお祭り騒ぎだった。阿鼻叫喚とも言うかもしれないが」
「え? おいおいおい、昨日だったのかよ!? 完全に見落としてたぜ。ちょっと見てくる!」
「いってらー」
なんかざわざわしている。広場に集合は間違ったかもしれない。時間短縮のためダンジョン近くに集合にしたが、ここは打ち合わせをするには、ちょっとうるさすぎるな。今度からギルドで打ち合わせを済ませてから出発しようと決める。
とりあえず今日は仕方ないので予定が書いてあるスケジュールを持ちながら皆に説明していく。
「さて、今日は4チームに分かれてダンジョンを攻略する。とりあえずの目標は全員が初級ダンジョンから卒業することだ。〈アークアルカディア〉はLVも低いし、ほとんどのメンバーが初級中位ダンジョンまでしか攻略できていないからな。〈エデン〉のメンバーがサポートしつつ、まずはダンジョンを攻略して〈攻略者の証〉を揃えよう」
昨日も軽く説明したことなので誰からも疑問の声は出ない。
〈攻略者の証〉を手に入れたら次は〈道場〉でLVアップする予定だ。
「ではチーム分けを行なう。LVと攻略階層を加味した上で大体みんなの実力が横並びになるようにした。Aチームは【コレクターLV11】のニーコ。【シーカーLV13】のカイリ。【炎雷鋼ドワーフLV19】のアルルだな。アシストにうちの防御担当シエラと回復兼アタッカーの俺が付く。今日は〈熱帯の森林ダンジョン〉と時間があれば〈石橋の廃鉱ダンジョン〉も回る予定だ」
「分かったわ」
Aチームのメンバーは見てのとおり非戦闘職のメンバーだ。
ビックリすることに実はこのメンバー、初級下位一つすら誰も攻略したことがないのである。
LV19のアルルですら生産職でレベル上げしたため、初級下位への入ダンはしたことがあるが、素材採集だけで攻略はしていないらしい。ニーコとカイリは道中のモンスターは倒したことはあるが、ボス戦をした事はないとのことだ。まあ、仕方ない。
彼女たちは戦闘職じゃないからな。
ということで、タンクのシエラと俺でキャリーすることに決定した。
「続いてBチームだが、仲良し三人娘とリカ、カルアのチームでレベル上げだ」
「了解した」
「よろ」
「「「よろしくお願いします!」」」
俺が連絡するとBチームで集まる。
ちなみに仲良し三人娘とは【魔装】シリーズ系の職業を持つ、【魔剣士LV24】サチ、【魔本士LV24】エミ、【魔弓士LV24】ユウカ、の三人娘のことだ。同じクラスなのでリカとカルアも知り合いだし仲良くできるだろう。仲良し三人娘のノリが体育会系なのが気になるが。
ちなみに仲良し三人娘はすでに初級中位を3つ全てクリア済みなのだが、次の初級上位の入場がLV25からなのでレベルが足りていないのが残念。彼女たちBチームはレベル上げ組だ。初級中位の証を3つ持っているので〈道場〉はランク4(LV30~LV40)まで利用可能だな。今日はランク3(LV20~LV30)に行ってきてもらおう。時間があればランク4にも挑戦可だ。
またヒーラーがいないように思うがエミが回復系の魔法を使えるのでリカの防御力とあわせれば問題も無いだろう。
「Cチームは、【歌姫LV32】ノエルと【ラクシルLV32】のラクリッテだ。サポートはメルトとミサトが担当だ」
ノエルとラクリッテは〈アークアルカディア〉でもトップのLVの持ち主だ。
前回のダンジョン週間の時、〈エデン〉のリーナ、メルト、ミサトと組んでダンジョンに行っていたためLVがかなり育っている。
彼女たちもレベル上げだ。〈道場〉のランク4に行ってきてもらおう。
「最後のDチームは【姫騎士LV10】アイギス先輩と【花形彦LV22】のレグラムだ。サポートはルルとシェリア。レグラムには悪いがまずアイギス先輩のレベル上げに協力してほしい。それが終わったらレグラムの最後の証を取りに行く」
「問題ない」
俺の頼みにレグラムがクールに頷いた。助かる。
Dチームはいくつか問題があり、まずアイギス先輩は中級中位の証を3つ持っているためいつでも〈道場〉に通うことが可能だ。
しかしレグラムは初級中位を2つしか攻略しておらず〈道場〉のランク3までは受けられるが4は受けられない。
つまりこの2人は誰とも足並みが揃えられないチームである。
そのためまず〈道場〉のランク2(LV10~LV20)でまずアイギス先輩をLV20に上げ、次にレグラムが攻略していない〈デブブ〉を狩り、それが終わってから〈道場〉ランク3、ランク4と進める計画だ。
時間はたった2日、しかも放課後しかないが、できるところまで進めておきたい。
俺は再度全員に確認し、皆はそれぞれのダンジョンへと向かっていった。




