#396 苦手科目表? あの、これって個人情報。
やるべき事をまとめよう。
・今週平日中にDランク昇格。
・近日中に下部組織創立。
・週末は中級中位の〈バトルウルフ〉狩りでレベルカンストを目指す。
・来週は期末試験の準備期間。テスト対策に奔走する。
・再来週は期末試験本番。俺の〈ダン活〉愛の深さが試される。
・その翌週はテスト返却期間&夏休み1週間前。特に予定無し。
・さらにその翌週からは夏休み突入。テストが赤点の人は補習有り。
並べてみたが、やること多いな。
計画的に動かなくては、手詰まりになる案件がいくつかある。
特にテストが鬼門だ。俺は〈ダン活〉を愛しているから問題ないが、初めてテストに挑む者には厳しいものがあるかもしれない。
テスト期間まで後2週間、ギルドバトルも重要だが、テスト対策も重要だ。
ということで、早速みんなの予定をまとめていった。
お昼休み、食堂に集まった我が〈エデン〉のメンバーに予定を提出してもらいシエラがまとめてくれた。さすがシエラだ。助かるぜ。
シエラがまとめてくれたスケジュールを見る。
「うーむ。Dランク試験の日を決めないとな。水曜日か木曜日辺りがいいんだが……」
「水曜日と木曜日は、夏休みに帰省するラナ殿下が準備の手続きがあるみたいね。伴って護衛と従者のエステル、シズ、パメラもお供するわ」
「明日はアリーナの予約自体が取れなかったからな。もちろん今日いきなり使わせてほしいというのもダメだったし。となると週末になっちまうな」
間が悪く、木曜日まで全滅だ。ラナも、忘れがちだが王女なんだよな。いつの間にか私王女よアピールをしなくなったからうっかり忘れそうだった。
帰省の準備ということで結構面倒な手続きが多いらしく、偉い方々が動く関係上キャンセルはできないそうだ。前々からこの日は帰省の準備をすると予定が決まっていたらしい。さすがに〈昇格試験〉したいから予定をキャンセルしてくれとは言えない。ラナなら喜んでキャンセルしそうだから。
できれば、週末の土日はLV上げに費やしたかったが。難しいか?
「あと平日で空いているのは金曜日ね。この日ならゼフィルス以外は特に放課後予定は入っていないわ」
「そうなんだよなぁ」
金曜日は臨時講師の日。
なんか最近は俺の〈育成論〉の授業を聞きたいという熱意溢れる学生が押し寄せ、大変な人気を誇っている授業となってしまった。最初20人集まればいいかなと考えていたのが冗談のようだ。
今では授業を交代してほしいとウン百万ミールを出して取引を持ちかけている者もいるという。
ちなみにセレスタンいわく、誰も取引に応えた人物はいないらしい。
嬉しいやら誇らしいやら。
と、それはともかくだ。要は授業の熱がすごすぎて、授業が終わっても質問タイムが終わらないんだ。15時で授業が終わりのはずなのに、最近は18時過ぎまで質問が終わらない。というかずっと質問タイムが終わらない。
みんな自分流のいい育成案を考えるようになってきて。それを見せてもらうのが楽しいのだ。ついアドバイスに熱が入ってしまう。
特に最前列に絶対座っている女子たちの熱が本当にすごい。
あまりに時間を忘れてしまうので最近は夕食で切り上げざるを得ないほどだった。
「ゼフィルスが定時で上がれば間に合うわよ?」
「ブラックみたいに言うなよ。いや、確かに言われてみればその通りなんだけど」
そういえば授業って仕事なんだよなぁ。あんまりその自覚はないんだが。
ちゃんと学園からもお給料が出ている。しかも、なんか毎回授業するたびにその金額が増えていっているのが恐ろしいところだ。1回の授業で7桁稼ぐ仕事って何?
そんなに貰っていると、果たして定時で上がっても良いものなのだろうか?
ダメじゃね?
そんな気持ちになってしまうのだ。
「いいから定時で上がりなさい。Dランクに上がるため、その1回だけよ。許容しなさい。そうすれば土日が空くわ」
「は、はい!」
「よろしい」
シエラにビシッと言われて思わず頷いてしまった。
俺の答えに満足したシエラが一度ニコッと笑った後、スケジュールを組んでいく。
うお、今の不意打ちの笑顔は効いた。
ふう。
どうやら俺は定時で上がることに決まってしまったようだ。
学生たちよ、スマン。
授業を受けに来てくれた学生たちには申し訳ないが、今回だけ我慢してもらおう。
これもシエラの笑顔のため、じゃなくて〈エデン〉のためだ。
放課後、シエラとセレスタンと共に〈ギルド申請受付所〉に行って申請を出すと、無事Dランク昇格試験17時からの予約を取ることができたため、チャットでメンバー全員に送信する。
すぐに全員から了解の返事があった。
これで次のステップに移れるな。
「リストアップしておいたわ。ゼフィルス確認して?」
「個人情報のはずなんだけど、いいのかなぁ」
そんなことを言いつつシエラから物を受け取る。
それは数枚の紙だった。上にマル秘のスタンプが押してある。書かれている内容は誰々が勉強できるできない、どの授業が得意不得意、といった情報だ。本当に見てもいいのだろうか?
「これも〈エデン〉のためよ。こんなところで躓きたくはないでしょ?」
「よっし、覚悟を決めるか」
〈エデン〉はSランク、そしてその先へと向かうギルドだ。シエラの言うとおりテストごときで躓いている場合ではない。
俺は後で女子から軽蔑の視線にさらされるかもしれない覚悟で中身を熟読する。
まさかリアル〈ダン活〉にこんな罠が仕掛けられていたとは。ラナ辺りが怒りそうだ。シエラにも一緒に宥めてもらわなくては。
「ラナ殿下は暗記ものが得意だけど数学はちょっと苦手みたい。ゼフィルス、教えてあげてね?」
「え?」
テスト科目、(戦闘課)
座学:国語、数学、歴史、ダンジョン攻略、職業、連携、特産、
実技:2日、
苦手科目表。マル秘。
ラナ、数学、職業
エステル、国語、特産、
ハンナ、数学、歴史、職業(生産科目は得意)
カルア、国語、数学、歴史、ダンジョン攻略、職業、連携、特産、
リカ、国語、数学、
ルル、国語、歴史、職業、特産
パメラ、数学、ダンジョン攻略、職業、特産、
計7名に勉強させる必要アリ。
シエラから受け取った苦手科目表を読んで、俺の口から思わずohとこぼれた。
半数が苦手とする特産授業について説明。
特産とは噛み砕けばダンジョンで取れるもの(産出)。という意味になります。
つまり、どのダンジョンでなんの素材、資源、罠、アイテム、装備がドロップしますか? という感じの授業です。
(〈モンスター1種から10種~20種もドロップ〉+〈採集〉+〈罠〉+〈宝箱〉)×〈ダンジョン数〉なので、覚え切れない人は多い。多分、授業で一番難しい。という設定です。3年かけて覚えます。
また、この授業は特産です。なので全国の特産という意味になります。
一年生は有名なところから習う。(青森のりんごから的なイメージ)
罠の授業について、罠には『罠(特産)』と『罠(ダンジョン攻略)』があります。
『罠(特産)』ではどこで産出されるか。
『罠(ダンジョン攻略)』ではどういう罠でどんな効果があり、どうやって解除するか。を教わっています
また〈ダン活〉の罠は資源です。
『罠発見』→『罠解除』→『罠ゲット』→『罠納品』→『罠改造』→『シビレ罠作製』→『ボスモンスタービリビリ』という感じに使われますね。
〈ダン活〉には「罠の産出地」というパワーワードが存在します。




