#294 学園長クエスト一部完了!本気を出しすぎたか。
「学園長。〈ビリビリクマリス〉の素材、ここに納品致します」
「うむ。ご苦労だったのゼフィルス君。5日という非常に少ない期限で良くこれだけの素材を集めてきてくれたものじゃ」
「結構苦労しましたよ。持っている〈笛〉をフル活用しましたからね」
「ほっほ。まさか元々5つも〈笛〉を持っているとはおもわなんだがな」
「さすが、学園長はお耳が早いですね」
俺は今、学園長室にお邪魔していた。件のクエスト素材を納品するためだ。
現在日曜日の夕方18時。
訪問するにはちょっと失礼に当たりそうな時刻ではあるが、納品期限が期限なので許されている。
この時間になったのは、今日も昨日と同じく〈ビリビリクマリス〉を周回したためだ。
20層に転移陣でショートカットし、エステルの馬車で最奥まで突撃。
途中、リポップしていた徘徊型ボス〈ビビルクマジロー〉と遭遇したが、昨日レアボスと22回戦ってLVがアップした俺たちにより余裕で倒されている。〈クマジロー〉がラナたちを見てビビッていたように見えたのは果たして気のせいだったのだろうか?
それはともかく、最奥で〈笛〉を吹いて周回、回数が無くなって一時帰還、ちょっ早でレンカ先輩のところに駆け込み〈笛〉を回復してまたダンジョンに突撃(2回目)。
さらに周回して、本日計42体の〈ビリビリクマリス〉を狩ったのだ。
昨日と比べLVも大きく上がっているため戦闘時間も大幅に短縮し、17時半には狩りが終わった形だ。
少し、本気を出してしまった。
正直、本日1回目が終わった時点で素材数は規定に届いていたのだが、せっかく〈笛〉が2つ貸し与えられていて回復代が学園持ちなのだ。そりゃあ2回目も突入してしまうというものだろう。
少しやり過ぎたかもしれないが後悔はしていない。
この2日間で狩った〈ビリビリクマリス〉の数は、なんと64体。素材数は640個だ。凄まじい数だな。
納品規定数は、
・〈ビリビリクマリスの大毛皮〉×20、〈ビリビリクマリスの雷斬爪〉×30、〈ビリビリクマリスの銀髭〉×10、〈ビリビリクマリスの大魔石〉×2、の納品。
計62個だったのだが、余裕で納品してしまえる。ちょっとどころじゃ無く狩りすぎたかもしれない。
まあ、学園長も俺が元々〈笛〉を5つ持っていると知らなかったようだしな。
俺も少し本気を出しすぎたせいもあってこうなってしまった。
とりあえず学園長には超過分も合わせて50個ほどを納品することになった。
QPは素材納品分も合わせて52万にもなったぞ! 後で〈交換所〉で物品を品定めしよう! ふはは!
もう一つの方の〈からくり馬車〉の方も順調だ。
シエラたちも〈竹割太郎〉の素材をかなりゲット出来ていると報告が有り、すでにガント先輩に依頼を出してあるらしい。
ガント先輩も、以前のようにはいかないが10日程度で納品すると約束してくれた。
今日は19日なので、月末の納品には十分間に合うだろう。
そう学園長に伝える。
「そうか。〈エデン〉に依頼したのは正解じゃった。助かったわい」
「いえいえ、こちらもQPをたくさん頂いていますから、お互い様ですよ。今後も何かあればギルド〈エデン〉をお願い致します」
「うむ、あい分かった。その時はまた頼むとしよう」
「よろしくお願いします。ではこれで失礼しますね」
「おお、そうだゼフィルス君、もう一つ君に頼みがあったのじゃ、すまないが聞いて欲しい」
学園長の申し出に上げかけた腰を再びソファーに戻す。
「実は、ゼフィルス君が行なっている授業についてじゃ」
おっと、来たか。
俺は一昨日から選択授業の臨時講師をしている。第一回目の授業が終わったばかりだが、もう学園長の耳には届いていたらしい。
だが、あれくらいでは問題無い、はずだ。多分。
何しろ考え方を教える類いの授業だからな。
新しい発見というより、皆で一緒に研究しようといった授業であるため騒ぎになるなんて事は無いだろう、はずだ。
何か問題でもあったのですか、という風な顔して先を促す。
「うむ。あの授業について、是非自分も受けたいという学生、教員、企業が急増していての。ゼフィルス君さえ良ければ枠の増大を願いたい」
そっちか!
前回の訪問の時は釘を刺されたため、問題と判断されれば待ったが掛かるかもしれないと思っていたが、まさか拡大方面に進むとは。
いや、考えてみれば当然か。
この世界、リアル〈ダン活〉では、高位職は一握りの人間だけが至れる高みだった。
つまり高位職の絶対数が少なかったのだ。
数が少ないということはそれだけ研究が進んでいないことを意味する。
高位職は強い。それは周知の事実だ。
しかし、ではどうすればその職業の力を十全に活かせるか、その研究がまったく進んでいないのである。
俺が臨時講師になった理由だな。
やはりというか、憧れの高み、高位職に付けたは良いが、その後の育成方法について迷走している学生は多いと言うことだろう。
教員や企業も、ということは学園も広める気があるという理解でいいな。
ふむ。悪くはない。
今後について、俺も少し考えていた。
このままDランクになった時、ギルドに誘うメンバーをどうしようと。
ゲーム〈ダン活〉時代は日数が進むごとに名声値が上昇していくため、ギルドはどんどん強いメンバーを迎え入れることができた。
しかしリアルでは、LV0でプレイヤーに育成して貰えるまで待機している、なんてことは無い。
多少なりとも育成は進めているだろう。変な方向へ伸ばせば職業の性能が死ぬ。
俺もゲーム〈ダン活〉時代、何度も経験したなぁ。変な方向にSPを上げすぎて取り返しが付かなくなった事なんて数え切れないほどある。
そんな学生であふれかえるかもしれないのだ。
ゲーム風に言えば、「無知なNPCが勝手にステータスを振っている」状態である。
恐ろしい。なんて恐ろしいんだ。
言葉にするだけでこれほど恐ろしいことはそうそう無いぞ!
最強を目指すため、できるだけ、できる限りそんなやらかしを取り除きたい俺からすれば、学園長の申し出は渡りに船だった。
ちゃんとしたステータスの持ち主が現れればそれだけ〈エデン〉は強くなる。
他のギルドも強くなってしまうが。
しかしそれはそれで楽しいだろう。
ならば、この依頼、受けようと思う。
「……良いでしょう。学園長、その依頼、承ります」
この決断により、世界は大きく動き出すことになる。
しかし、俺はまだ、そんな事を知るよしもないのだった。
第五章 -完-
無事第5章も-完-することができました!
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今後も〈ダン活〉をよろしくお願い致します!




