#291 〈パーフェクトビューティフォー現象〉キター!
「〈パーフェクトビューティフォー現象〉来たーーーー!!!!」
それを見た瞬間、俺の心の衝動が思わず飛び出てシャウトした。
「何よこれ! 〈金箱〉が4つもあるじゃないのよ! どういうことよ!」
ラナも両手を頬に当てて驚愕の叫びだ。
若干頬が染まっている。興奮している様子だ。
その気持ち、すごく良く分かる。
「4つ……、4つある? 銀じゃなくて金色?」
カルアは首をかしげながらそれを見ていた。
とても不思議そうな顔で首をコテッとしている姿がとても可愛い。
撫でたい。いや、むしろ撫でる! あ、ラナに先を越された!?
「これはいったいどういうことだゼフィルス? 中級ダンジョンのボスはみんなこんなに宝箱を落とすのか?」
「そんなわけないだろう。こいつは〈ビューティフォー現象〉のさらに上、その名も〈パーフェクトビューティフォー現象〉だぞ! 〈金箱〉ドンッ! さらに倍だ! お宝超ゲットォ!」
リカは〈金箱〉4つという超素晴らしい光景に戸惑いまくっていた。
しかし〈サボテンカウボーイ〉の時に〈銀箱〉4つを体験していたからだろう、俺の言うことに目を白黒させながら納得したようすだ。
「これがゼフィルス殿が言っていた最高の素晴らしい現象ですか。噂に違わない豪華さですね。ゼフィルス殿が切望していた理由も分かります」
エステルも〈金箱〉4つという豪華さに目を離せなくなっているようだな。
無理もない。何しろ〈パーフェクトビューティフォー現象〉だからな!
「まずは祈るのだ! 〈幸猫様〉〈幸猫様〉! 〈パーフェクトビューティフォー〉をくださりありがとうございます! 後でとても豪華なお肉を持って行きますので楽しみにしていてください!」
心をたくさん籠めて、祈る!
後で豪華なお肉をお供えしよう! 具体的にはレアモンスター〈ゴールデントプル〉のお肉とか良いかもしれない。前の歓迎会の時に使わなかった最後のお肉を使うときが、今! な気がする。きっと気のせいじゃない。
「カルア、私たちも祈りましょ!」
「ん。祈る」
ラナとゴロゴロ撫でられていたカルアも一緒に祈った。
くっ、俺も撫でてみたい。
「さて――」
「開けるわよカルア!」
「ん。楽しみ」
「待て待て! 俺を差し置いて何をしようとしている!」
ラナがカルアを抱きかかえて〈金箱〉に突入しようとしたのを抑える。
テンション高いなラナ! 見ろ、背中から抱っこされたカルアの足がぷらんと浮いているぞ。
カルアも楽チンみたいな顔してるし。浮かれている様子がヒシヒシと伝わってくる。
このままのテンションで〈金箱〉に突入されればうっかりパカッと開けられかねない。
俺も混ぜて欲しい。
こほん、本音が洩れた。ちょっと冷静になろうか。
「さて、今回の〈金箱〉だが、なんと4つある。素晴らしい。しかし、1人開けられない者が出てしまう。これは由々しき事態だ」
リアルは時に残酷だ。何しろこの〈パーフェクトビューティフォー現象〉に参加できない人がいるのである。
ラナとカルアの緊張が高まったのを感じた。俺も緊張する。
しかし、そこへリカが妙案を投げ入れた。
「では、私はカルアと一緒に開けようか。これなら全員参加可能だろう。カルアも良いか?」
なんと共同作業の提案だった。リカの提案にぷらんとラナに抱きかかえられながらカルアがコクリと頷いた。
「ん。リカと一緒に開ける。ラナから聞いた。ゼフィルスと共同作業したって、少し羨ましかったし」
「ちょ、カルア! それゼフィルスには内緒だって!」
「そう? うっ、ラナ苦し」
俺の知らないところであの時の行動が洩れていた。
ラナの腕の力が増し、カルアが顔を青くする。
「ではカルア、一緒に開けようか。ラナ殿下、カルアを離してやってはくれないか」
「ん、助かった…。リカ、サンクス」
キュっとされて危うく〈パーフェクトビューティフォー〉に参加できなくなるところだったカルアがリカに感謝を告げていた。
何これ? ちょっと面白い。
「さあ開けるわよ! みんな位置について!」
「ラナそれ俺のセリフじゃね!?」
ギルドマスターのセリフを我が物顔で奪ったラナが、俺のセリフを華麗にスルーして〈金箱〉の一つに陣取った。さすが、一番乗りである。
俺も素早く後に続いた。
「ん、これがいい、かも」
そして『直感』持ちのカルアと手が被る。
……カルアが宝箱を開けたそうにしてこちらを見ています。どうしますか?
「…………他のにしておこう」
「すまないな」
今回はカルアとリカが一緒に開けてくれることになったので譲った。
リカが苦笑して礼を言うのに片手を上げて応え、他の宝箱の前に陣取る。
最後に余った宝箱はエステルが開けることになった。
全員が配置に付いたところでラナが言う。
「開けるわよ! 良い物ください〈幸猫様〉!」
もう俺のギルドマスターの肩書きはボロボロだ。完全にラナに役目を奪われてしまった。
ええい、俺も開けるぞ!
「ああ〈幸猫様〉〈幸猫様〉! どうか良い物ください! よろしくお願いします!」
ラナがパカリと開けるのに合わせ、俺たちも一斉に開く。
カルアとリカも、せーので一緒の宝箱を開いた。
「わ! 鍵だわ!」
「マジで!?」
ラナの報告に度肝を抜かれてそっちを向くと、ラナの持つ手に握られていたのは銀色の鍵だった。間違いない、そいつは――!
「これは、レシピでしょうか?」
「レアボス〈金箱〉産のレシピだと!?」
ラナの方に驚愕していたらエステルからもとんでもない報告があって思わずそちらを向く。
さすが〈パーフェクトビューティフォー現象〉、素晴らしいが留まるところを知らない!
さらにカルアとリカの方からもとんでもない感想が上がる。
「ん、おもちゃ?」
「大きいな。これはミニチュア、か?」
「何だとぉ!?」
俺とカルアの『直感』が「こいつはすごい宝箱だぜ」と囁いたそれに入っていたのは、とんでもない物だった。
俺は自分の宝箱の中身も確認せずにリカとカルアの宝箱の中を覗きこんだ。そこには、
「―――〈竜の箱庭〉か!」
俺の思っていたとおりのものがあった。
――ヤバイ。こいつはとんでもない、とてもとんでもないお宝だ!
「そんなにすごいの?」
「すごいなんてもんじゃないな。ちょっと一言では言い表せられない。そのくらいとんでもないアイテムだ」
さっきっからとんでもないばっかり言っている気がする! 語彙は死んだ!
今回の〈パーフェクトビューティフォー現象〉は間違いなく大当たりの分類だ!
もうこれだけで今日は満足できるほどの当たり率である。
よっしゃ、じゃあ一つずつ説明していこうか!
ちなみに俺の〈金箱〉に入っていたのは、なんと〈上級転職チケット〉だった。
中級のレアボスだと確率が2%になるとはいえ、3枚目が来るか!
マジで今回の〈パーフェクトビューティフォー現象〉はヤバいぞ!




