#261 依頼書確認! 熟読熟読、これは難しい!
依頼書の一部を修正いたしました。
「納品せよ」→「納品してもらいたい」。
「〈エデン〉が使用している〈最上級からくり馬車〉を」→「〈エデン〉が使用しているのと同じタイプの〈最上級からくり馬車〉を」
読者さんから「納品せよ」は攻撃的過ぎる、〈ダン活〉には似合わないとアドバイスを頂きました。
ありがとうございます。
〈作製し、納品〉と書いてあるが「使用している」では〈サンダージャベリン号〉の事かと勘違いする。というお言葉がありましたため「同じタイプの」を追加しました。
アドバイスありがとうございます。
〈学園長クエスト〈ビリビリクマリス〉の各種素材を納品してもらいたい。詳細は別紙記載〉
・〈六森の雷木ダンジョン〉のレアボスを複数体討伐する。
・〈ビリビリクマリスの大毛皮〉×20、〈ビリビリクマリスの雷斬爪〉×30、〈ビリビリクマリスの銀髭〉×10、〈ビリビリクマリスの大魔石〉×2、の納品。
・期限:〈5月19日(日)まで〉
・報酬:〈QP:20万P〉。
〈学園長クエスト〈最上級からくり馬車(王族用)〉を作製し、納品してもらいたい〉
・ギルド〈エデン〉が使用しているのと同じタイプの〈最上級からくり馬車〉を学園に納品する。
・期限:〈今月中〉
・報酬:〈QP:30万P〉。
学園の長、学園長から直々に依頼が来た。
なんだろうと軽い気持ちで覗いてみたら、レアボスを複数体倒さなくては手に入らない数の納品依頼が書かれていた。
〈エデン〉しか頼めないという言葉付きで。
おう。ボスを狩りまくっていることがバレたぜ。
まあ、マリー先輩のところに売りまくってたし、いつかはバレると思っていたので問題ない。
しかも、高速キャリー馬車までご所望だ。ダンジョン攻略に使うのか?
いや、王族用ということは献上目的なのかもしれない。
しかし、今それは置いておこう。
「少し確認なのですが、馬車の項目に、〈エデン〉が使用しているとありますが、同じタイプの物を作って納品、という意味でよろしいですよね?」
とりあえずこれだけは真っ先に確認しておかなければならない。
〈サンダージャベリン号〉を納品するのは嫌だし。
「ええ。作製し、納品と書いてありますからその認識で間違いないですよ」
フィリス先生の言葉にとりあえず安心する。
入学して1ヵ月半、とうとう学園側も〈公式裏技戦術ボス周回〉の実態に迫ってきたぜ。
しかし、直接〈公式裏技戦術ボス周回〉を教えろではなく、こうして依頼して来ているのだから好感が持てる。
ラノベなんかだと権力に物言わせて無理矢理にーって感じのイメージだが、少なくともリアル〈ダン活〉はそうではないのだ。
内容は、無茶振りが過ぎるが。
また、頼んでくるということはまだ〈公式裏技戦術ボス周回〉は完全にバレてはいないのだろう。多分だが。
知っていれば自分でやればいいし。
さて、〈公式裏技戦術ボス周回〉についてだが、まず俺は誰にも教える気はない。
これが露呈すればダンジョンの最奥は狩場と化すだろう。どう考えても狩場の取り合いで争いが起きることは火を見るより明らかだ。攻略だって滞るだろう。
公開するのなら何かしらのルールを敷く必要がある。番人だって必要になるだろう。
ああ、だから学園側も踏み込んでこないのかもしれないな。
大混乱は目に見えているのだから、それは学園の本意ではない、ということだろう。
ふむ。それを踏まえてこの依頼をどうするかだな。
一度、学園長とは話し合いが必要かもしれない。
もう一度依頼書を見てみる。
正直言って無茶振りだ。普通は不可能である。
だが、逆に言えば普通じゃなければ不可能ではない、ということだ。
そして〈エデン〉は、普通ではない。
ギリギリではあるが、両方とも不可能ではない。
なら、とりあえず考えてみよう。
まずは〈ビリビリクマリス〉素材の納品からだ。
〈六森の雷木ダンジョン〉は中級下位ダンジョンの一つなのでEランクギルドの俺たちなら問題無く行ける。ただ名称の通り雷属性を多用してくるため注意が必要だ。雷属性は〈麻痺〉の状態異常を誘発するからな。対策を練る必要がある。
そしてレアボス〈ビリビリクマリス〉。
名前から察しているかもしれないが、こいつは初級下位のボスだった〈クマアリクイ〉の同型だ。クマみたいなリスである。どんなリスだよ、である。
俺は〈ビリビリクマリス〉の戦闘風景を思い浮かべる。
誰がメンバーなら勝てるだろうか?
ハンナは今回こそ無理なので選手交代する必要がある。さすがにレアボスクラスはハンナは無理だ。間違いなく戦闘不能になる。
だけどそうすると拗ねるかもしれないんだよなハンナ。
俺たちに付いていきたいって頑張っているから、少し可哀想に思う。
ふむ、何かしら俺たちに役立つ類いの爆発系アイテムでも作ってもらおうかな。
そうすればハンナも一緒に戦ったことにできる…、はさすがに苦しいか。
でもアイテムは作ってもらおう。中級のレアボスが相手だ、備えあれば憂い無しである。
ハンナの事はまた本人にも相談しておくかな。
ヤバいな、途中から思考がハンナに行った。修正修正。
次に納品素材の項目を見る。
納品素材の合計数は62個か。
基本的にレアボスからのボス素材ドロップは10個だ。宝箱も倍ならドロップも倍落ちる。その代わり道中のザコモンスターのドロップは落ちない。
ボスは部位破壊などでドロップが1個増えるが〈ビリビリクマリス〉に部位破壊は無いので10個だな。最低7周回しなくてならない。7回で全部の規定数を満たせるわけ無いので実際はもっと増えるだろう。というかどれだけ増えるか分からない。
50周くらい掛かるかも? レアボスを50周?
そして期限を見る、日曜日までと書かれていた。
今日が5月14日(火)なので残り5日しかない。
残り5日でレアボスの素材を62個納品。確かに〈エデン〉にしか頼めないことだろう。
というか〈笛〉がこの前3個追加ドロップしたから良かったものの、もし2個しかなかったら〈エデン〉でも厳しかったぞ。というか3個追加ドロップした事は誰にも言っていないので多分学園長も知らないと思われる。
なんか引っかかるな。
しかし、報酬は〈20万QP〉だ。
これは大盤振る舞いである。
何しろ先ほどの大型クエストの参加報酬が〈100QP〉、成功報酬が〈2万QP〉しか貰えないのである。Eランクギルドにとって、〈2万QP〉でも一攫千金などと表現されるくらい高額報酬なのだと言えば、〈20万QP〉がどれだけ大盤振る舞いなのか分かって貰えるだろうか?
ちなみにQPはミールに換金こそできないが、
そのレートは1QP=1,000ミールくらいと言われている。
20万QPなら2億ミールと同価値だ。5日で2億を稼ぐ仕事である。そりゃ無茶振りも分かる。つまり日給4,000万、日本ならそんな仕事絶対やりたくない。週末は死んでるんじゃないだろうか?
普通は絶対無理だからこそ、この数字なんだろうな。
だんだん学園長の意図が見えてきた気がする。
ちなみにだがFランクの平均報酬は500QP程度。
Eランクの平均報酬が1500QPくらいである。
Dランクになれば平均報酬は1万QPくらいと言われているが、Dランクはピンキリなのであまり参考にならない。Cランク並みに稼ぐDランクも少なくないからだ。
逆に言えばEランク並しか稼げないDランクも多いというわけである。
EランクまでとDランクの差が凄いけど、実力主義のこの世界では仕方ないな。
暗に早くDランクまで上がってこいと言っているようだ。
期限までに間に合うかは置いといて、報酬は大きいので逃すのは惜しい。
しかもこれ、交渉次第ではもっと増やせる可能性が高い。
受けても良さそうだよな。
次に〈最上級からくり馬車(王族用)〉の作製納品クエストを見る。
〈エデン〉が使っているあの〈サンダージャベリン号〉と同じタイプをご所望である。
なんて贅沢な。いや、俺が言っちゃいけない。
さて、これもレアボス素材が必要だ。〈ビリビリクマリス〉に比べたら少ないが。
前回は4周回分、40個のレアボス素材を使って作製した物である。しかも〈陰陽次太郎〉の攻略は結構クセがあるのでしっかり連携できるメンバーでないと攻略が難しい。少なくとも〈プラよん〉では絶対無理だ。
また最大の問題はこの〈からくり馬車のレシピ〉である。
〈金箱〉産レシピ、これは非常に価値が高い。作れるかは別にして。
実はこの世界には馬車装備が少ない、というよりまったくと言っていいほど使われていない。偶然それを知ったので調べてみたのだが、どうもこの〈からくり馬車のレシピ〉は俺が初のドロップ者であるらしい。
いや、もしかしたら歴史の中で誰かが持っていたのかもしれないが、少なくとも記録には残ってはいなかったのである。
まあ、ナイト系など何かしらの特殊なカテゴリー持ちじゃないと扱えない特殊な装備なので、今まで日の目を浴びていなかったのかもしれないが、なんとなく腑に落ちない気もする。
しかし、それによって希少度が跳ね上がっているのは事実だ。というか〈エデン〉の独占状態になっていた。
報酬もそれを加味しているのだろう。なんと〈30万QP〉である!
〈からくり馬車〉を作製して納品するだけでこのポイントはヤバい。超ヤバい。
さすが〈金箱〉産レシピ。絶対に手放したくない。
もし定期的に納品クエストが来るようになれば、ふはは! おっと想像したら笑いが出てしまった。
これがレシピを独占すると言うことか。
さて報酬の件だが、確かに数字だけ見ると悪くは無い。むしろ良い。
何しろ達成報酬は計〈50万QP〉だ。先ほど受注した大型クエストの報酬が霞んでしまう。あれ、受注したっけ?
あ、してないや。むしろもうどうでもいいや。
こほん。しかし、この学園長クエストを受けるかどうかは学園長と話してから決めよう。俺は学園長室に向かうことにした。




