#219 ミーティングで募る。【武官】が欲しいなぁ
とりあえず、新メンバーは職業LVが40になっても中級ダンジョンに行くのはまだ早いという結論に落ち着いた。
シズとパメラも頷いていたので彼女たちにも自覚があったのだろう。
わりと早い段階で職業に就いていたカルアとリカならともかく新メンバーは色々と慣れと練習が必要だ。
じゃあ当面の間、俺が先陣メンバーに教えていたように指揮を執って新メンバーを育成するのか、というとちょっとそこまでの時間が取れないかもしれないので、新たに戦略に詳しいメンバーに加入してもらうということで話は付いた。
今の話をギルドに集まったメンバーに説明する。
「というわけで、誰か戦略や戦術に詳しい知り合いがいたら紹介してほしいんだが、誰かいないか?」
ギルド部屋で全員が集まったのでミーティングをして、そこで推薦候補を募ってみた。以前新メンバー組を募集したときを思い出すなぁ。
するとまずリカが口を開く。
「そうだな、心当たりがいないでもないが、上級生ではだめなのだろう?」
「ああ。出来れば1年生で揃えたいんだ。職業は基本的に〈戦闘職〉もしくは【武官】系で」
「ゼフィルス、【武官】って何?」
希望を募ると【武官】というのが耳慣れない言葉だったのだろう、カルアが首を傾げて聞いてくる。
「【武官】系っていうのは軍の階級の名前が付いた職業群のことだな。【中尉】とか【大尉】とかが該当する」
ちなみに【筋肉戦士】のダビデフ教官は国軍では少佐の地位にいるが、地位と職業は別物である。…ダビデフ教官って少佐なんだよな、あの若さで。エリートである。さすが【筋肉戦士】。
「うーん、聞いたことないかも」
「まあ、公爵しか発現しないしな」
【武官】系は「公爵」のカテゴリーに発現する職業群である。さすがにカルアが知らないのも無理は無い。
【武官】系は人の上に立つ系統の多い職業群だった。軍の地位系職業のほか、【大臣】や【宰相】なんかの職業を内包する優秀なカテゴリーでもある。できれば「公爵」も〈エデン〉に加えたい。
そんなことを考えているとシエラからツッコミが入った。
「なんであなたが公爵しか発現しない職業を知っているのよ」
「シエラさん、ゼフィルス君ですもん。いつものことですよ」
それをハンナがいつもの俺発言で援護する。いやあ、照れるぜ。
その後も募ってみたが、残念ながら皆の知り合いには戦略に長けた人物はいないとのことだ。いや、一応リカが上級生には戦略に長けた従姉妹がいるので紹介しようかと申し出てくれたのだが、先ほども言った通りなるべく1年生で揃えたいので見つからなかったら頼むとお願いした。
とそこへ小さく挙手する者がいた、俺の従者をやっているセレスタンだ。
「よろしいでしょうか?」
「もちろんだ」
「知り合いではないのですが、1年生で公爵家の方ならば確か2人ほど在学していたはずです。そちらを当ってみるのはいかがでしょうか」
「お! そいつはナイスな情報だ。どこにいるかとか分かるか? 早速会いに行ってみるぜ」
さすがはセレスタンだ。こういうのは早いほうが良い、即で立ち上がると、ラナも一緒に立ち上がった。その顔にはありありと不満が溢れている。
「ちょっとゼフィルス! ダンジョンアタックはどうする気よ! やっぱ無しなんて許さないわよ!」
「おっとそうだった。まずはダンジョンアタックだな」
俺としたことが、中級ダンジョンに挑みたいがためにダンジョンアタックを後回しにするところだった。そりゃあ本末転倒である。
「では、僕の方からアポイントをしておきましょう」
「そうだな。セレスタン頼む。だけど今日はこれからダンジョンアタックだから時間がある時で良いぞ」
「かしこまりました」
話は纏まり、次にパーティ分けの話に移る。
今日の目標は「〈エデン〉のメンバー全員の初級中位ダンジョン全クリア」となった。
これで新メンバーも初級中位を卒業し、初級上位へステップアップできるな。初級ダンジョンなら誰を誘ってもどこでも行けるようになるんだ。素晴らしい。
早く中級ダンジョンでもそうなりたい。
というわけで2パーティに分け、片方は3日前と同じように新メンバー5人と俺、エステルで行く。ついでに指示や指揮などをして今日は彼女たちを鍛えるつもりだ。
エステルは悪いがまたキャリー役を頼んだ。
「最近御者扱いして悪いな」
「いいえ。これはこれで楽しいですから問題ありません。待っている間も探索できますし」
それでもつまらない役回りだろう。
エステルには世話になりっぱなしだ。今度何かで報いようと心に決める。
一方で、別のパーティになってしまって拗ねている人が若干名。
「むう、またゼフィルスとは違うパーティなの?」
「悪いなラナ。明日は一緒のパーティになるから」
「約束よ! ハンナだって寂しがってるんだから」
「あ、あのラナ様、それは伝えなくて良いですよぉ」
「ダメよハンナ。寂しい時は寂しいって言わないと、構ってもらえないわよ!」
ラナとハンナには明日一緒にパーティを組むと約束をする。寂しがっているのはバレバレなのだが暴露されたハンナが耳まで真っ赤になった。
あとラナのそれは多分お兄さんに構ってほしかった時のやつじゃないか?
いや、参考になった。ラナが寂しいと訴えてきた時はなるべく構ってあげることにしよう。
それはともかくだ。明日は一週間ぶりに先陣メンバーでダンジョンアタックすることになった。ちょっと中級下位ダンジョンにチャレンジしてみるのも有りかもしれない。
「それで、私たちは今日どのダンジョンに行こうかしら?」
「リカがまだ攻略してないダンジョンが良いわ! キノコ狩りに行きましょ!」
シエラとラナがもう片方のメンバーを集めてどこのダンジョンに行くかを相談する。
こちらはカルアとリカのダンジョン攻略の手伝いとボス周回でLV上げをするらしい。
もしかしたらカルアとリカは職業LV40に到達してしまうかもしれないな。
帰ってきたときが楽しみである。




