#1849 レイドボス周回とマリー先輩の店へ訪問!
クイナダが入ったので早速打ち上げの翌日、無事クイナダが転校生として〈戦闘課3年1組〉に加わった。
「〈第Ⅱ分校〉から転校してきました。クイナダです。よろしくお願いします!」
パチパチパチパチ。
教壇の横で挨拶するクイナダに盛大な拍手が贈られた。
いやぁ、31人目のクラスメイトかぁ。素晴らしいな! クイナダは去年〈留学生〉クラスだったので、クラスメイトになるのは初めてだ。
ほとんどが〈エデン〉のメンバーなので入ってきたばかりでも安心。すぐに受け入れられたよ。
さらに放課後からは〈猫界ダン〉へ――と行きたかったが、まずはクイナダのレベル上げをしないといけなかったわ。忘れてた。
「ということで、今日からボス周回に合流したクイナダだ!」
「えっと、2ヶ月ぶりだから勘を取り戻すところから始めたいと思います!」
「そういえばクイナダは、向こうでは本気を出すことができなかったのよね」
「というより手応えのある相手が居なかった感じ、かな。だから、今ちょっとわくわくしてるよ」
ここは〈樹界ダン〉最奥。
胸に〈樹界ダン〉の攻略者の証を着けたクイナダと俺が前に出て、みんなに合流の旨を伝える。
シエラの言う通り、クイナダは向こうに帰ってからというもの、本気を出す機会も無かったため、動きが鈍っているか心配しているようだ。
その辺も含め、ブランクを解消しておきたいな。
「それとクイナダにも改めて紹介しよう。クイナダが帰ったあと加入したモニカだ」
「モニカといいやが――いいます。よろしくお願いし――ます!」
「私はクイナダ。留学生だったから分校に帰ったはずだったんだけど、戻って来ちゃった。改めてよろしくねモニカ。あと普通に喋っていいよ?」
「それは助かりやがります。どうも直そうと努力はしてるんでやがりますが口が……、それはそうと噂はかねがね、実際バトったこともあるんでやがりますから今更紹介は必要ねぇでやがりますよ」
「お、そうか? よーし、それじゃあポジションと連携の打ち合わせから始めようか!」
モニカとクイナダの顔合わせも無事完了。
とはいえ、元々お互い相手のことを知っているので自己紹介はすぐに終え、現在周回中のレイドボス、〈バトルウルフ(最終形態)〉の攻略について話すことにした。
「50人になってようやく10パーティがオール5人体制になった。班行動をさせやすくなったから、ポジションのそこそこ大きな変更を行なうぞ」
〈エデン〉は昨日50人になった。
ハンナがダンジョンに行けないので居残りだが、〈アークアルカディア〉からニーコが出張してきているので戦闘メンバーは合計50人、フルメンバーだな!
ここに〈採集無双〉も加え、55人のメンバーでダンジョンへ挑んでいる。
今まで49人の時は1パーティだけ4人のところがあったのだが、ぶっちゃけ結構気を使っていた。
4人パーティというのは、それほど扱いが難しいのだ。ピンチになりやすいからな。
だが、50人フルになってその気遣いもかなり解消できた。これはかなり大きい。
全てのパーティを同じ感覚で運用出来るため、指揮がだいぶ楽になる。
「と、こんな感じで行く。異論がなければ挑むぞ! 目標はクイナダとモニカのLVが75になるまで周回することだ!」
作戦を改めて連絡しても異論は無いようなので、ボス戦に出発。
もう何度目かになる周回をこなし、大量のドロップと経験値を手に入れまくる。
「ねぇゼフィルス、あの扉はなんなの?」
ボス周回の途中、最奥の救済場所で休憩中の時にクイナダがここにあるもう1つの扉を指さして俺に聞いてきた。
「あそこは最奥ボスとレアボスが登場する、普通のボス部屋だな」
「普通のボス部屋!? そんなのあったの!?」
「いや、最初は確かになかったぞ。多分だが、〈バトルウルフ(最終形態)〉を倒したあと出現したんだ――と思われる」
「ええ!?」
そう、実はこの最奥には90.5層とも言えるレイドボス専用フィールドの他に、ちゃんと5人で挑むための90層ボス部屋が存在していたのだ。まあ最初は入れないんだが。
今言った通り、ここに挑めるようになるのはレイドボスを倒したあとなのである。
「とはいえ攻略者の証はもらえないし、レジェンドレア確定のレイドボス戦の方が報酬面でも経験値面でも良いからそっちはあまり使ってないけどな」
「あ、え、ええ……」
なんだか唖然とした様子のクイナダ。
そこの最奥ボスは、いわゆる救済措置。
レイドボス周回とか結構疲れるしアイテムの消費もばかにならないため、もっと楽に素材を集められるようにと出現したもので、ゲーム時代は大変お世話になった。
だがリアルになってくるとむしろ50人で戦った方が楽まである。
俺が指示を出すより、みんな慣れれば慣れるほど個別に動いてくれるからな。
さらにレイドボスの方が良いドロップがくる。まあ、宝箱の数は最低3個なので数は物足りないけどな。質はピカイチだ。
加えて50人参加型なので経験値的にも美味しいのも良い。最奥だと5人までしか参加できないしな。全員が経験値を貰うまでに10周しなくちゃならないし。
よって最奥ボスとレアボスの扉は、一回ずつやったのち放置。
今はレイドボスを周回しまくり中である。
「ちなみに最奥ボスは〈ジャイアントフォレストウルフクマ〉だった」
「ウルフ……クマ? それウルフなの? クマなの?」
「クマなんだ。巨人系と樹木系とウルフ系の特性を持つクマだな」
「ま、紛らわしい!」
分かる。
開発陣はなぜこうも紛らわしいクマの名前をよくつけるのか……!
それが開発陣クオリティだ。
「ちなみにレアボスはウルフ系だぞ。〈狼王・キングゼタウルフ〉だ」
「あ、そっちはらしい名前」
うむ。しかしこちらは〈バトルウルフ(最終形態)〉の代わりに素材集めされるために作られたボスモンスターなんだ……。
キングなのに悲しい! 名前が泣いてるよ!
もちろんこのことはこの世界には秘密なんだ。俺の胸にだけ留めておく!
「ゼフィルス! そろそろ続きしましょう! バルフを狩りまくるのよ!」
「オーイエーラナ!! それじゃあ休憩は終了だ! さあ、続き行くぞ!」
全ては〈猫界ダン〉へ行くために!
だが、ラナの目が〈バトルウルフ(最終形態)〉をただ狩ることを目的にしている気がする。いや、きっと気のせいだろう。
でも、なぜか巨体を半分くらいの大きさまで縮こまらせて震える〈バトルウルフ(最終形態)〉の姿を幻視した気がした。
あの姿に進化しても〈バトルウルフ〉は狩られまくる運命なんだ……!
お宝もがっぽり。
レジェンドレシピもがっぽがっぽ出るのでウハウハだよ!
◇
「マリー先輩いるか~」
「いるで~」
「マリー先輩! 実は最上級ダンジョンで、大量の素材やドロップを確保してきたんだ!」
「知っとるわ! 〈エデン〉は、というか兄さんはもっと自分たちの影響力を自覚した方がええで!」
「なんと! 俺たちが最上級ダンジョンに入ってるの、知れ渡ってる!?」
「なんでびっくりしてんねん!? 未だに最上級ダンジョンに入れるのは〈エデン〉だけやろう! というか、先週クイナダはんが戻って来て〈エデン〉がフルメンバーになったからなぁ。そこいらで絶望に沈む人が多かったんやで?」
「それは仕方がないな! せめて六段階目ツリーを開放し、モニカくらいの実力と実績を持っている人じゃないと〈エデン〉の門は閉じたままだぞ!」
「相っ変わらずの凄まじい難易度と困難さやわぁ」
マリー先輩の店でマリー先輩とお話中。
やっぱりマリー先輩との話は楽しいなぁ。
マリー先輩の話では、どうやら〈エデン〉のメンバーがフルになり、なんとかその残りの1席に滑り込もうと希望と期待を胸に秘めていた人たちが、軒並み撃沈してしまったらしい。
クイナダはもう留学生ではないため、特別留学生枠はもう使えないのだ。
前までならクイナダが居るなら51人まで〈エデン〉に迎えられたが、今は50人までになっている。
「さぁ場も温まったところで、そろそろ本番と行こうじゃないかマリー先輩?」
「く、来るか」
ズイッと俺は前に出る。この手には〈空間収納鞄(容量:特大)〉が握られているんだぜ。
マリー先輩も臨戦態勢だ。
しゅわっち、と言わんばかりに両手を前に構えるポーズで迎え撃たんとしている。
ふははははは! いくぞーーーー!!
「これがその成果! 最上級ダンジョンのレイドボス、その素材たちだーーーーーーーー!! 全種類制覇したぞーーーー!!」
「最上級ダンジョンのレイドボスの素材をなにコンプリートしてんねんーーーーーーーーー!?」
バッグをひっくり返してドババババ~。
30.5層のレイドボス〈フェアリークイーン〉、60.5層のレイドボス〈邪悪寄生花・ネネネネネルジュガン〉、そして最奥のレイドボス〈バトルウルフ(最終形態)〉!
この2週間で俺たちは、全てのレイドボスを狩って素材をコンプリートしてきたんだ!
レイドボスを周回するには〈竜笛〉が必要だが、周回したらそれなりに集まってくる! 今では計6本もゲットしたので周回も楽々だ!
「さらにレジェンドレシピも大量だーー!!」
「またこんなに取ってきてからにーーーーー!?」
まるで紙吹雪のようにパッと投げる俺。マリー先輩の周りに乱舞するレシピたち。
そしてそのレシピは、全てがレジェンド色に輝いているんだ。
マリー先輩がおののいたのは僅かな間。構えた手から瞬間、目にも止まらぬ速度でその全てのレシピを空中でキャッチして、気が付けばがっつり全てのレシピを掴んで凝視しているマリー先輩が居た。
なんて早業、否、神業なんだーー!
生産職に全く関係無い技をどうしてここまで素早くできるのか。とても不思議なんだぜ。
「こ、これは!」
「はーっはっはっはー! どうだマリー先輩、これとこれ、あとこれとか優先的に作ってほしいんだ」
「ま、任せんしゃーい!! もう兄さんったらこんな手の込んだことをしてからに。うちの従業員もようやく一通りの品を作り終えたかんな。これらは全て請け負ったるで!」
「頼もしい! さすがはマリー先輩だ! そして、ついにマリー先輩の店が本格始動するのか!」
マリー先輩の報告を聞いて俺の胸も熱くなる。
なにしろ、卒業を前にしたときから生産職の方々が忙しく、作ってほしかったものが貯まりに貯まっているのだ。
マリー先輩もようやく店をオープンするだけの品を作り終えたとのこと、これでようやく作ってほしかったアレやソレを作ってもらえるぞ!
まずは――そうだ、まずあれを作ってもらわなくては。
「マリー先輩! レジェンドレシピもいいが、その前に作ってほしいものがあるんだ。重要なものだ」
「なんやと?」
そう言って、訝しむマリー先輩に俺は1枚のレシピを手渡した。それは。
「大罪オプション。大罪専用装備に装着するオプションを作ってもらいたい」




