#1827 進級3年1組! モニカ加入のお出迎え!
3年生の教室も昨年度と同じだった。
2年1組の教室がそのまま3年1組になった形だな。
中に入り、昨年度とあまり変わらないクラスメイトたちに挨拶していると時間はあっという間に過ぎていき、担任の先生がやってくる。
「みなさん、おはようございます。今年度もみなさんの担任を務めさせていただくことになりましたフィリスです。知っている人も多いですが、今年度もよろしくね」
「「よろしくお願いしまーす!」」
1組の担任はフィリス先生継続だった。これも嬉しい。
なんだか、学年が変わったって気がしないな。
入れ替わった3人も〈エデン〉のギルドメンバーだし。いつものダンジョン探索メンバーだしな。
あとラウには感謝。
貴重な男子枠であるラムダが2組に行ってしまった時はどうなるかと思ったが、ラウが来てくれたのでプラスマイナスゼロだ。俺、メルト、レグラム、ラウ、セレスタンで5人。
やっぱり少なくない?
まあそれはともかくだ。
今日は始業式だけで特に授業も無かったので10時には解散。
みんなでそのままギルドハウスへ直行した。
「ふわーーん! 2組に、2組に落ちちゃったよーー!」
「よしよし。ドンマイだよトモヨちゃん。1組は任せて」
「シヅキちゃんの裏切り者ー!」
ギルドハウスでは一悶着? 唯一ギルドメンバーの中で1組から2組に行ってしまったトモヨが嘆いていた。
3組から1組に昇格したシヅキが慰めるが効果はいまひとつのようだな。
「ゼフィルスさん、今日の予定はどうされますの?」
「それなんだが、1年生を任せてもいいか? 今日は人と会う約束があるんだ」
「あ、例のあれですわね。ずいぶん時間が掛かっていましたが」
「おう、学園を巻き込んでようやくけりがつきそうなんだ。――シエラは一緒に来てくれ」
「無事に片がつきそうなの?」
「みたいだぞ? まあ、今後の〈天下一パイレーツ〉がどうなるかは分からないが」
リーナにギルドを任せて俺とシエラは本日、2人でちょっとお出かけだ。
目的地は……Aランクギルドハウスではない。もうあそこには〈天下一パイレーツ〉はいないのだ……。
あいつら、モニカが参加しなかったからといって簡単にランク落ちしやがって。
いつの間にか〈天下一パイレーツ〉がBランクギルドになっていたものだからびっくりしちまったじゃないか! ちょっと笑ってしまったのは秘密だ。
ということでこれから行く場所はとあるラウンジ。
そこには、とある女子と男子が、計5人ほど待っていた。
「すまん、待たせたか?」
「いえいえ、私たちも今来たところでやがります。問題ないですよ」
「今日は集まってくれて感謝だ」
そう言ってまずは代表同士で握手を交わす。
その相手は――モニカだ。
〈天下一パイレーツ〉の元ギルドマスターで、昨年は1年生なのにサターンを尻に敷いていた才能溢れる女子。
ダメ元で〈エデン〉に誘ったところ、なんと最上級生の卒業後に加入することを条件にオーケーをもらったのだ。だが、卒業からすでに1ヶ月が経過している。
ちょっとトラブルがあったのだ。
「昨年の最上級生が卒業して1ヶ月ちょい、まさかギルドを引き継ぎ、脱退するまでこんなに掛かるとは思わなかったでやがります。〈エデン〉の皆様にはお待たせしやがりました」
「ははは、まあ、ギルドマスターの引き抜きだからな。そう簡単にはいかないと分かってたさ」
独特なしゃべり方のモニカ。
サターンみたいな人たちを纏めるのにこの口調の方が都合が良いから使っていたらしいと聞いたのだが、もはやクセになってしまったようで今では素でこの口調らしい。
また、直そうかと聞かれたのだが、その口調の方がモニカらしいのでオーケーした経緯がある。
「それで、そちらの4人が?」
「はい。私の元パーティーメンバーでやがります。信用できるやつらでやがりますよ」
「「「「よろしくお願いいたします!」」」」
挨拶が一通り済めば、次は紹介だ。
モニカの後ろを見れば、4人の男女が横並びになって一斉に頭を下げていた。
よく訓練されている。
「みんな【賊職】系でやがりますよ。ゼフィルス先輩がお好きだと聞いたので」
「ナイスだモニカ! よく連れてきてくれた!」
俺は満面の笑顔でモニカにグーをした。
――【賊職】系。
それは学園祭の3日目、〈迷宮防衛大戦〉でモンスター側に付いて出場者を倒さなければ発現しない、かなりトリッキーな系統の職業だ。
だがその分能力は高く、上級職では高の中がたくさん存在するノーカテゴリーの中ではトップクラスの優良系統でもある。
しかしその発現条件は秘匿されており、〈天下一パイレーツ〉の前身である〈カッターオブパイレーツ〉がほぼ独占していた。
でも、モニカってそのギルドマスターしてたんだよね。
つまり、そういうことだ。
「本当は去年の最上級生が卒業したあと〈天下一パイレーツ〉に入ってもらうために育てていたでやがりますが、私が別のギルドに加入するのですから、一緒に来るのが道理だと。あ、ちなみに本人たちの意思も確認しましたよ」
「セレスタンからの報告書には合格と書かれているわ。男子2人、女子2人ね」
モニカの言葉に満足げに頷いていると、シエラが書類を見せながらこっそり教えてくれた。セレスタンチェックを通っているのならば問題は無いな!
ちなみに全員下級職、高の下以上。
男子が【復讐者】と【リッパー】。
女子が【女盗賊】と【偽者】だそうだ。うち【復讐者】と【女盗賊】は高の中である。
いいね! とてもいいねを贈りたいよ俺は!
「それじゃあ4人とも、〈エースシャングリラ〉がBランクになった時の加入になるが、それでもいいか?」
「もちろんです!」
「〈エデン〉の傘下に入れてもらえるなんて光栄です!」
「わ、私はゼフィルス先輩のファンなんです! 活躍したら握手してもらえますか!?」
「あ、ズルいわよ!? それなら私も!?」
「シャラップ」
「「「「!?」」」」
「特に女子の2人、まずは私を通しなさい。いいわね?」
「「ひ、ひゃい!」」
加入の確認をしたら女子2人が勢い余って前のめりになり、シエラがシャラップを掛けて黙らせていた。凄い、一撃で場の空気を持っていったぞ!
しかも「さすがは〈エデン〉のサブマスター」「迫力が違うな」とか男子には好評だ。
むむ! 俺も気を引き締めなければ。後輩たちからは自慢の先輩と思われていたいからな!(キリッ)
「それと、モニカにも1つ相談したい」
「この前聞いたあれでやがりますね? あたしを〈エデン〉に加入させる前に一度〈エースシャングリラ〉に入れたいっていう。よくもまあ、こんなこと思いつきやがりましたね?」
「いやぁそれほどでもあるぜ」
「褒めてねぇで――いや、褒めているでやがりますね……。なんだか、あたしが今まで付き合ってきた人種と色々違ってやりにけぇでやがります」
「大丈夫よモニカ。そのうち慣れるわ」
「なんだか慣れたらいけねぇ気がするでやがるのは気のせいです?」
「うむ。気のせいだ」
どうやらモニカが今まで付き合ってきた人種と俺は正反対らしい。
なんてこった! だが大丈夫。〈エデン〉に居ればすぐに慣れるさ!
みんないい子たちばかりだからな!
また、俺はモニカにとあるお願いごとをしていた。
モニカは先ほども言ったように、脱退にはかなり時間が掛かっていた。
最上級生の卒業後はすぐに脱退できるよう、色々と準備を進めていたらしいが、サターンたちが反対運動を掲げたのだ。
ギルドでは、脱退する時にギルドマスターの許可が必要だ。
故にギルドマスターが脱退するには、一度誰かにギルドマスターの任を譲り、その者に脱退の許可をもらう必要がある。
モニカは今までギルドマスターに返り咲きたいと言っていたサターンにその任を返し、許可をもらおうとした。
サターンとしては目の上のたんこぶとか思っていたであろうモニカが脱退することは、さほど大きな問題ではないと思っていた様子だったので、そのままスムーズに進行するかに思われたが、〈天下一パイレーツ〉の主力が卒業し、六段階目ツリーの開放者が残り5人にまで減っていた〈天下一パイレーツ〉が最大戦力であるモニカを逃すはずがなかった。
他の〈天プラ〉3人も加わり、モニカの脱退ダメと徹底抗戦をすることになったらしい。
最終的に学園が「メッ」てしてモニカは脱退し、こうしてここにいるわけだが、脱退まで1ヶ月を要したという訳だ。
その間に〈エデン〉も情勢が代わり、新たな下部組織〈エースシャングリラ〉を結成。さらに〈学園春風大戦〉の開催が決定したところで、モニカの〈エデン〉加入をちょっと待ってもらったのだ。
〈エデン〉メンバーは〈エースシャングリラ〉に加入できない。
つまりモニカは今、〈エースシャングリラ〉に加入できる唯一の六段階目ツリーを開放しているメンバーということになる。
こんなの逃すはずがない! ということで〈エースシャングリラ〉がBランクギルドに上がり、上限人数が増えた暁には、〈エースシャングリラ〉に一時的に加入し、〈学園春風大戦〉に出場してもらえないかと打診していたのである。
「それでモニカ、返事は如何に?」
「ま、いいでやがりますけどね」
「本当か!」
「あたしは〈エデン〉の中でも新参者も良いところでやがりますからね。まずはあたしの有用性を篤と示しましょう」
おお! モニカが頼もしい!
決まりだな!
他の4人も異論は無いということで〈エースシャングリラ〉の加入が決定した。
こうなったら、さっさと〈エースシャングリラ〉をBランクギルドにしないと!
もちろん、当てはあるのだ!




