#1826 ゼフィルス3年生に進級!クラス替え発表!
新入生は授業が始まる5月まで、基本的に先生の下で学ぶのも自主練するのも、はたまたギルドで訓練を施してもらうのも自由である。
よって俺たちは、新たなギルドメンバー10人を早速〈エデン〉メンバーで育成することにした。
「エ、〈エデン〉のメンバーに直接鍛えてもらえるなんて」
「光栄極まりないですよね! 私、すっごく頑張っちゃいますよ! 目指せ、〈エデン〉入りです!」
「「「「おおー!」」」」
全員自己紹介も終わって、歓迎会もそこそこにスラリポマラソンを決行!
さらに未覚職のメンバーには俺直伝の発現条件最短クリア行動を開始した!
「す、すごいですゼフィルス様! ほ、本当に【姫侍】が発現しています!」
「【金剛王】の下級職、【武装鋼ドワーフ】が確かに発現しておるぞ! 感謝だ!」
「【姫城主】が出ちゃってますよ!? え? 本当にこの伝説の職業選んじゃっていいんですか!? というかこんなに簡単に出ちゃっていいんですか!?」
「はーっはっはっは!!」
ご機嫌に笑う俺と驚愕の新メンバーたち。
〈エデン〉の多くのメンバーがそれをしみじみ見ていた。
「なんだか懐かしいわね」
「はい。私たちも通った道です」
「すでに毎年の風物詩になりつつありますわね」
シエラにエステル、リーナがにこやかにそう言う。
3人は後輩の面倒を見るのも好きなので、割と熱心に教えていたよ。
みんなスラリポマラソンでLV6になったのでその日は終了。
翌日からは初心者ダンジョンに行ってもらってレベル上げだな!
入学式で学園中がバタバタした翌日。
今日からは俺たちも始業式。そして正式に進級し、3年生となる。
「ゼフィルス君~。そろそろ行くよ~」
「あ、今日は早く出ないとなんだよな」
いつも登校時間ギリギリを狙って出発する俺たちだが、今日はハンナが〈生産専攻〉の在校生代表として先生方に呼ばれているので少し早めに出ないといけない。
扉を開けて左右をチェック。
「右、良し。左、良し」
この時間は貴族舎の学生も登校するのでシエラたちと会わないか心配だ。
入念にチェックした後、ハンナに先に寮の玄関口に行ってもらい、そこで待ち合わせをする。決して俺の部屋からハンナが出入りしているところを見せてはいけない。
そう俺の『直感』さんが囁くのだ。
さも玄関口でハンナと待ち合わせしていた風に合流するのがベスト。抜かりはない。
「ゼフィルス、ハンナと待ち合わせかしら?」
「シエラ!?」
ハンナと待ち合わせの玄関口に行ったらシエラが居た!
俺は心臓が口から飛び出そうとしたほど驚いた。
「え、えへへ。今さっき合流したんだ」
「そ、そうなのか。そ、そうだ、シエラもよかったら一緒に登校するか?」
「ええ。ルルとシェリアもいるけれどいいかしら?」
「もちろんです!」
どうやらハンナだけじゃなく、シエラも玄関口で待ち合わせしていたようだ。
ハンナと俺は一瞬で通じ合って話を合わせた。危ない!
程なくしてルルたちが合流する。
「あ、ハンナお姉ちゃんなのです!」
「ハンナさんにゼフィルス殿、おはようございます」
「おはようルルちゃん、シェリアさん」
「おはよう。…………ってちょっと待て? なんでシェリアが貴族舎に居るんだ? シェリアって福女子寮じゃなかったっけ?」
「ルルに会いに来たのです」
「あ、そう」
うん。深くは聞くまい。俺も深く聞かれたら困ることがそれなりにある身だ。
どうやらシェリアもハンナと同じく、わざわざ寮の許可を取って朝通っているらしい。そんな話、初めて知ったよ。
ということで、今日は珍しく5人で登校する。
「ゼフィルスと一緒に登校するのは、本当に久しぶりね」
「いつも俺だけもうちょっと遅いからな」
「もういっそ、この時間に登校したら?」
「いや~、あの時間が慣れちゃってな、今更変えるのはなぁ」
「そう……」
シエラが真横を歩く。なんだかいつもよりも近いような? 反対側のハンナもいつもよりも近い気がするのは気のせいだろうか?
シエラが今後も一緒に登校しようと誘ってくるが、俺を挟んで反対側を歩いているハンナの表情が落ち込んでいくので俺は首を横に振って断った。
すまんシエラ。ダンジョンではいくらでも付き合うから。
それからシエラやハンナと、新メンバーの話をしていたらあっという間に分かれ道に到着した。
「それじゃあ私はここだから、みんなまたね」
「ええ、ハンナもがんばってね」
「ハンナお姉ちゃん、代表の挨拶がんばってなのです!」
「応援しています」
「がんばれよハンナ!」
「う、うん! ありがとう、頑張るよ! それじゃあね!」
そう言ってハンナは〈生産専攻〉の校舎へ向かって行った。
「ハンナは、強くなったわね」
「ほんとそれな。去年なんかまだ、なんで2年生の私が~とか言ってたのに」
いや先月も弱音を吐いてたっけ。今強く見えるのは、多分強がりだと思うぜ。
「ハンナお姉ちゃん、堂々としていたのです!」
「はい。とても成長したように思います」
みんなの視線が堂々と歩くハンナの背中を追う。
あとでしっかりハンナを労ってあげないとな。
「さあ、俺たちも運命の時だな」
「私とゼフィルスは1組で間違い無いわ。シェリアは前回のテスト、13位だったわよね?」
「ルルは学年末テスト60位だったのです……ちょー不安なのです」
「ルルなら大丈夫です。1組になれます。なれなかったときは私がルルのクラスにいきます」
「ダメだからなシェリア?」
シェリアがルルとクラスが別れるとか大災害になりかねない。
まあ冗談だ。だが、ルルは60位だったのか、確かに六段階目ツリーの開放者が増えてきた今、ちょっと心許ない順位、なのか? よくわからん。
クラス替えは昨年度の学期末テストと〈SSランクギルドカップ〉の活躍、テスト時のLV、ダンジョンの攻略階層数、素行などなど、様々な分野で判断され割り振られる。
テストの順位だけならルルは2組確定だが、〈SSランクギルドカップ〉では優勝、実力は確かでダンジョンの攻略階層もトップクラス。
まあ、十中八九1組だとは思うが、油断はできないな。
俺たちが〈戦闘4号館〉に入ると、その校庭には特大の掲示板が出され、クラスが張り出されていた。その前では多くの学生たちが確認している。
一応〈学生手帳〉からもアクセスできるらしいのだが、やっぱりみんなこっちで確認したいよな。俺もこっちの方が雰囲気あって好きだ。
「1組は――、お、俺にシエラにシェリアの名前、ちゃんとあるな!」
「ルルの名前も1組にあったのです!! やったのです!!」
「やりましたねルル。これもテスト勉強を頑張った成果です!」
「シェリアお姉ちゃん、シエラ、ありがとうなのです!」
「ふふ。ルル頑張ったものね。おめでとう」
どうやらルルのテスト勉強を手伝ったのはシエラとシェリアだったようだ。
実って良かったな。
さて、1組の残りのメンバーは――。
なるほどなるほど。やはりアイシャとハクは1組継続か。
ラムダは――ああ、残念ながら2組に行ってしまったようだ。貴重な男子が~。
やはり六段階目ツリーを開放してなかったのは痛かったか。
ミューも、2組だな。だが、ミューはむしろカルアと同じクラスになりたがっていたのでいいのかもしれない。カルアも2組継続だ。
お、ラウが1組にいる! 貴重な男子が増えた!
これでプラマイゼロ!
1組
ゼフィルス、シエラ、ラナ
エステル、リカ、セレスタン
ケイシェリア、ルル、シズ
パメラ、ヘカテリーナ、メルト
ミサト、アイギス、ノエル
ラクリッテ、レグラム、シャロン
カタリナ、フラーミナ、ロゼッタ
オリヒメ、エリサ、フィナリナ
ラウ、ルドベキア、シヅキ
エフィシス、アイシャ、ハク
2組
カルア、ミュー、ラムダ
サチ、エミ、ユウカ
トモヨetc.
クラス替えは、このような結果だった……!
「トモヨが2組に行って、ラウとシヅキとエフィが1組に入ってきたのか!」
「トモヨのテスト順位は確か278位だったわ、ノエルが245位、ラクリッテが250位、シャロンが255位だったから、テストの順位というよりも六段階目ツリーの開放とLVが大きかったのかしら?」
「シエラみんなの順位覚えてるの?? しかしそうなるとアイシャはテスト9位だったし、ハクは――」
「ハクは28位ね。1組入りはこれでもギリギリだったということね」
「28位……そう聞くとキールとか1組でもいいような気もするな」
「そうね、もしかしたら攻略階層数が影響しているのではないかしら?」
「っぽいな……」
キールの順位は31位だったはずだ。ハクとの差は僅か。
だが255位のシャロンの方が攻略階層数の関係で優位、1組に選ばれたと。
本当に僅差っぽいなぁ。
「ま、とりあえずだ。シエラ、今年も1年同じクラスだ。よろしくな」
「ええ。こちらこそよろしくねゼフィルス」
クラスで3人入れ替わってしまったし、トモヨが2組に行ってしまったのは残念だが、そこまで大きな変化が無くてホッと一息。
俺はシエラと、また1年間一緒のクラスメイトになれることを喜んだ。




