#1825 4人採用!〈エースシャングリラ〉20人が揃う!
「エルフ」「ドワーフ」「男爵」「侯爵」「分家」「獣人」。
見渡すだけで様々なカテゴリーの人材がこの短時間で揃っていた。ミサトすげぇ……。
「うん? この子は?」
その中でもシンボルが見当たらない子を1人発見。見えないだけかな?
そう思ったのだが。
「あ、この子は一般女子だよ。知り合いからの紹介で連れてきたの。職業は【ホーリー】だよ!」
「【ホーリー】! ヒーラーか!」
ノーカテゴリーの子も混じっていた。セレスタンチェックは分からないが、ヒーラーはありがたい。たとえノーカテゴリーでも、【ホーリー】なら「女」専用の上級職になれる。つまりは高の中だ。悪く無い。
いや、悪いのか? 元従業員の子、全員女子だから、バランスを取って男子を入れたいんだけど?
そう思っていると、ミサトが連れてきた「侯爵」の女子が手を上げて質問してきた。
「あの、質問よろしいでしょうか? リカ様と同じく【姫侍】を発現させることができるというのは本当なのでしょうか!?」
「おや?」
「あ、この子はまだ覚職してない子なんだよ。そういう子も必要かなと思って、半数くらい連れて来ちゃった。たは!」
相変わらずミサトの仕事がパナイ。
俺が未覚職の子を好きに覚職させたいことを分かっているな!? 最高だぞミサト!
改めて「侯爵」の女子を見る。
リカやキリちゃん先輩のように、背が高くスラッとしている黒髪黒目の女子だ。黒髪は艶のあるストレート。
ただ雰囲気は全く異なっていて、厳しい美人上官を思わせる強気な顔立ちをしている。侍というよりも艦長の方が似合いそうな雰囲気だ。
俺は「侯爵」の女子に鷹揚に頷いてイエスするのだ。
「その話は本当だぞ。発現条件について、俺は研究所に並ぶほど、いや、それ以上に知っていると自負している」
「「「「おお!」」」」
本当は全部知っているけれど、間を取ってこんな感じで。
聞くところによれば、俺が〈エデン〉メンバーの発現条件を満たしているというのはすでに一部の界隈には広がっているらしいからな。もうある程度開示しても問題無いほどだ。この「侯爵」の子だって、知っているからこういう質問が出てきたんだろうしな。
というかまた女子か! 【姫侍】希望なら男子は不可能だし。むむむ。
そう考えていたら、なんと「侯爵」の女子の話には続きがあった。
「ちなみにですが、上級職の【後陣の姫大名】に就くことも可能でしょうか?」
「なぬ!?」
ちょっと変な声が出た。だがそれも仕方ない。まさかの職業名が出てきたんだから。
「【後陣の姫大名】に就きたいのか?」
「はい。私は指揮官の方が向いていると言われてまして」
【後陣の姫大名】、それは【姫侍】から就ける職業の中で一番のハズレと呼ばれている。なぜか? 後衛の指揮官になるからだ。
せっかく前衛でバリバリにボスとやり合える【姫侍】を【後陣の姫大名】にするのは勿体なすぎるのだ。するとすれば、「公爵」系が前衛職ばかりになってしまい指揮官が不足してしまったときくらい。
そう、【後陣の姫大名】は「公爵」の代わりを務める〈上級姫職〉なのだ。
だが、今の状況では悪く無い。むしろ良い。〈エースシャングリラ〉には、そういう指揮官ポジションが欲しいと思っていたのだ。エラゼルには振られてしまったしな。「公爵」が3家しかいなくて数が足りない。なるほど、代わりが必要と、とても納得だな!
それにこの子の雰囲気は、まさに指揮官向きだと思っていたところだ。
「もちろん【後陣の姫大名】の発現条件もある程度分かっている。あとで詳しいあれこれも話してあげよう」
「あ、ありがとうございます! 私はユナと申します。よろしくお願いいたします!」
ユナね。俺のゼフィルスメモにしっかり書いておいたぜ。
シオンとこの子で、なんだか〈エデン〉のシエラとリーナを思わせる名コンビになりそうな予感。
……女子が増えちゃうけれど、ユナは採用の方向で。
セレスタンチェックも問題無しだったので、俺はこの子をメンバーに入れることに決めたのだった。【後陣の姫大名】は、ダンジョンではサブヒーラーやサブタンクもできるしな。
……残りは絶対に男子にする!
「出来ればタンクとヒーラーが1人ずつ欲しいんだが」
「純ヒーラーの男子はごめんだけどいないんだよね。希望する人はいるかな?」
「サブヒーラーをするのはともかく純ヒーラーはちょっと……」
ミサトが声を掛けるも、男子でヒーラーになりたい、ヒーラーになって超危険な最上級ダンジョンに挑みまくる〈エデン〉の下部組織に入りたいという男子は皆無だった。
紙装甲のヒーラーはタンクに依存しないとやられてしまう関係上、怖がってやりたがらない風潮があるのだが、まだその風潮が少し残っているっぽいな。
あれ? そうなると純ヒーラーは女子から選ばないといけない?
ま、また女子が増える……!
「タンクなら、わしはどうか? もし【金剛王】に就かせてもらえるのなら、わしは命を賭けて貢献しよう」
「おお!」
ドワーフ男子だ。
なんだか職人タイプのような雰囲気を出しているのに、希望するのは純タンクの【金剛王】。これは欲しい。
ドワーフ男子が名乗り上げると、他の子たちも我先にとアピールし始めた。
みんな、悪く無い。だがちょっと待ってほしい。順番だ。
「そっちのドワーフの男子、名前を聞いてもいいか?」
「わしはサンダダと申す者。希望は【金剛王】。今は未覚職だが、どうか?」
未覚職で【金剛王】希望のドワーフ男子来たる。
これは良いですね。はい、大変良いですよ。
【金剛王】のタンク力はピカイチ! それはそれは硬い上級職、高の上だ。
特段【嫉妬】や【強欲】のようなとんでもない技能はないが、【盾姫】のような堅実で頼りになる盾ができるために非常に人気のあった職業だった。
素晴らしい。あと男子というのも素晴らしい。
是非採用の方向で。
「よし、あとで詳しく話そうぜ」
「! 感謝だ」
さて順調、とても順調にここまで来たが、ここからはエキサイティング。
明らかに2名気に入られたっぽいのが響いたのか、我先にアピールしようとしてきたんだ。
「はいはーい。順番に聞いていくから一斉に喋らないでね~」
ミサトが窘めてくれなかったら揉みくちゃになっていた可能性もあるな。
それから残り18人から話を聞いていったんだ。
その中でも候補は4人にまで絞られた。
1人は【精霊魔弓】の「エルフ」男子。高の中でアタッカー&斥候だ。
弓兵は今のところユウカとカイリしかいないし悪く無い。
【精霊魔弓】は遠距離アタッカーで物魔を使い分けることが可能なのが強みだ。さらにギルドバトルでは誘導射撃で城に籠もった相手を撃ち抜くこともできて凄まじい成果を上げていたっけ。
これはありだろう。男子というのも良いし、斥候も良き。
1人は【彦スター】の「男爵」男子。高の上でバッファーだ。【歌姫】の男版だな。ノエルの活躍を見て分かるようにバッファーはとても重要だ。悩ましい。
1人は未覚職の「伯爵」女子。つまりは【城主】系の1年生、しかも未覚職!
シャロン、ヴァンに次ぐ1年生の【城主】系、是非とも欲しい。いや、マジで欲しい。でも女子なんだよな~。
最後は、最初に気になった【ホーリー】のノーカテゴリー女子。
集められた20人の中で唯一の純ヒーラーで、なんだかマシロを思わせる癒し系女子だった。ラナ、マシロに次ぐ存在になるやもしれない……。
合格者にはあとで連絡を入れると言って一旦解散する。
「悩ましいな。うーん、マジで悩ましいな。この中からあと2人か」
「ヒーラー男子捕まえてくる?」
「ミサトが言うとマジで捕まえてきそう……。だが、時間も無いしな。今回はこの中から選ばせてもらおうか」
気が付けばもう夕方である。入学式はとっくに終わっている時間だ。
それに「女子だから」で不採用にするのは気が咎める。
良い職業持ちの人はいっぱいいたんだからこの中から選ぼう。
そうなると、やっぱりヒーラーである【ホーリー】女子は採用確定だな。
【姫侍】を指揮官寄りに育成すると考えると、やはりタンクは欲しい。
そうなると、「伯爵」女子が最有力候補になる。
え? 女子が3人? 男子がサンダダだけになっちゃうんだけど?
「なんならキープしておく? さっきの【精霊魔弓】や【彦スター】の子も、空きができたら採用するって声を掛ければキープできると思うよ?」
「うっ、魅力的な提案!」
〈エースシャングリラ〉は来たる〈学園春風大戦〉が終わればAランクギルドになっている予定だ。なら、それまで待ってもらうのは大いにありだな。
「よし、決めた」
結果、俺は4人の新たなメンバーを採用することに決めた。その4人がこちら。
【姫侍】の「侯爵」女子。タンク&アタッカー。
【ホーリー】の一般女子。純ヒーラー。
【武装鋼ドワーフ】の「ドワーフ」男子。純タンク。
【姫城主】の「伯爵」女子。純タンク。
うち、【ホーリー】以外の子の発現条件は俺が満たした。
これで〈エースシャングリラ〉のメンバーは20人。
ようやく本格的に動けるな。




