#1823 新1年生の入学式!研究員とっても頑張った!
「ではこれより、入学式を始めます。学園長先生、お願いします」
「新入生の諸君、よくこの本校の門を叩いてくれた。わしらは君たちの入学を心から歓迎する――」
今日は4月6日、入学式。
俺がこの世界に来て3度目の入学式だ。何度見ても感慨深い。
今年入学した学生は実に1万人を超えるらしく、すでに体育館では収容できない人数なため、入学式はなんと第一アリーナで行なわれることになった。
ここならモニタースクリーンもあるので会場で喋る学園長のお姿も確認できるし、新入生だけではなく、在校生たちも見物できるので非常に良いアイディアだ。
俺たち〈エデン〉〈アークアルカディア〉〈エースシャングリラ〉新2年生の面々も観客席に座り、入学式の様子を眺めていた。
「今年もいっぱい来たわねぇ」
「はい。今年は留学生制度が大幅に縮小されているという話ですよ。ですが入学生は去年と同じくらいらしいです」
「そうなの?」
ラナの感心するセリフにシズが淡々と答える。
そう、今年の入学する学生の数は去年と同じくらい。でも留学生制度は縮小せざるを得なかったようだ。
というのも、去年は最上級生が〈転職制度〉を受けたことで学年が下がる者が多く出て、最上級生の数がかなり少なかった。〈戦闘課〉の校舎が1つ余るほどだったからな。
その余った校舎を有効に活用すべく、やってきた留学生たちがそこを利用していた訳だ。
だが、今年入学してきたのは卒業していった最上級生の軽く倍を超える。
当然留学生が使用していた校舎も新1年生が利用するため満席だ。
俺たち新3年生が〈戦闘4号館〉と〈戦闘3号館〉。
新2年生が〈戦闘5号館〉と〈戦闘2号館〉。
新入生が〈戦闘6号館〉と〈戦闘1号館〉、
を利用するため、留学生を入れるスペースをかなり縮小せざるを得なかったわけだな。
今後留学生を迎えるか否かは、クイナダの世代の留学生たちの成果に掛かっているだろう。
クイナダたちのおかげで分校が凄まじく発展したならば今後も留学生制度を続ける可能性は高いな。その場合はまた校舎が1つ増えるかもしれない。
「これで在校生の数が33,000人くらいになったのではないかしら?」
「1学年1万人超ですか、一昔前までは6,000人強でしたからかなり増えましたわね」
「選び放題だな。さぁ、今年はどんな有望な子が出てくるかな?」
ついに〈竜の像〉が運び込まれ、ジョブ測定が始まった。
俺のワクワクが伝わったのかシエラが若干ジト目だ! やったぜ!
でももうちょっと強めでも良いですよ? シエラなら大歓迎だ!
「そこら中でざわめきが生まれているようですが」
「もう、多すぎてハッキリ見えないわね! スクリーンをもっと増やせないのかしら?」
「そんなラナにはこれを貸してやろう。凄まじーく遠くの細かなものまで見える双眼鏡だ」
さすがにここまで大人数に対応することは想定外だったらしく、モニターの画面では映ったり映ってなかったりする子が多い。ラナがご立腹だ。
でも双眼鏡を貸してあげたら機嫌も直ったよ。
「ありがとうゼフィルス!」
「いいなぁラナ殿下」
「大丈夫だハンナ。ハンナの分どころか全員分持ってきたからな。――セレスタン」
「はい。皆様にお配りしますね」
みんなに双眼鏡を配り終えると、ジョブ測定で燃えている研究員――じゃなくて一喜一憂している新入生たちを見る。
研究員は頑張ったな。新入生を次々捕まえては色々実験していたから。
とはいえそれもここからが本番。このジョブ測定ではまだ発現していなかった職業を研究員たちの腕で発現させられるのかが腕の見せ所になる。
今までの研究を活かす大事な機会だ。研究員たちが燃えているのも分かるな。
「あ! あの子【軍事学者】になったわ! やるじゃないの!」
「「公爵」家の方ですか!? どこですのラナ殿下!?」
「むむ! 【鬼浪人】に【もののふ】を発現するか。あの者、なかなかやるな」
「優秀な「侯爵」男子発見か!?」
「おいおい、【彦スター】が3人目だぞ? どうなっている?」
「【彦スター】の発現条件が解明された、ということでしょうか?」
「俺は【花形彦】に就くためにとても苦労したというのに、時代の流れは凄まじいな」
なんと、〈彦職〉の一角の解明に成功した模様だ。
レグラムとオリヒメさんの眺めるところを追いかければ狂喜乱舞する研究員の姿が――いや、違う、そっちじゃなかった。キラキラエフェクトを振りまく3人の男子が見える。間違い無く「男爵」の男子だ。
「にゅ! 【大剣豪】【刀剣豪】【魔装斧士】【狂戦士】【武僧】【大弓豪】【魔盾士】【要塞クラッシャー】【大槍士】! 高位職がバンバン出ているのです!」
「ルルお姉ちゃん、分かるの!?」
「えっへん! ルルは詳しいのです! 最上級生ですから!」
「すごーい!」
おお、こちらではルルが高位職ばかりを羅列してアリスから尊敬の眼差しで見つめられている! なんて羨ましいんだ、俺も知識を披露して良いかな? 尊敬の眼差しで見つめられたい!
「今年は【筋肉戦士】が騒がれてないのね」
「え? ああ、【筋肉戦士】ね。うん。今は【サタン】の時代だからな。うん」
しかしラナの呟きで一気に現実を見つめることになった。違うんだ! 俺が見つめたり見つめられたりしたいのはそっちじゃないんだ!
「それでゼフィルス、いい子はいたのかしら?」
「こほん、むしろいすぎて困っているまである! 選り取り見取り過ぎないか!?」
「学園の質もここまで上がっていたのですね。わたくし、高位職になれずに燻っていたのが遙か遠い過去のようですわ」
「私もリーナさんに同じくです。本当に高位職が増えましたね」
シエラと会話しつついい子を探っていると、リーナとアイギスという、〈エデン〉の中でも過去に中位職に就いて困っていたメンバーが優しい目になっていた。
そんな感じで入学式は進行していく、体感ではなんと実に半数の新入生がこの場で自分の職業を決めているようなのだから驚きだ。
職業というのは自分の人生と同義。
去年や一昨年なんて、入学式のジョブ測定で職業を決めたのは全体の1割くらいだったはず。そう考えるとこの1、2年でだいぶ進歩したのだと実感する。
「この世界も、だいぶ未開未踏のものが判明してきたな。もう少しか」
「ゼフィルス君?」
なんだか感慨深い。
一昨年の入学式、俺は誓った。
「この世界の人たちに、俺が〈ダン活〉の全てを見せてやる」と。
その誓いの活動を2年続けて、この成果だ。
本当に感慨深く感じる。
だが、まだまだ足りていない。最上級ダンジョンの件もあるし、真のエンディングもある。大きなイベントもまだ控えている。
まだまだ見せるものはたくさん在るんだ。
俺は、今日この入学式を見て再度決意を改め直した。
「あ! フェンラちゃんたちの番だよゼフィルス君!」
「お、どこだどこだ!? 発見!」
ハンナに言われて意識を切り替えて捜索、無事〈竜の像〉に触れようとしているフェンラを発見した。
そしてタッチ。瞬間現れたジョブ一覧を見て、ざわめきがここまで聞こえてきたんだ。
「お! 出てるぞ! 【雷狼】だ!」
「隣はクラちゃんだよ!」
「クラも【森の主】が出てる。よし、しっかり選んだな」
例の〈エデン店〉の従業員メンバーだった獣人組。
リーダーのフェンラが選んだのは下級職、高の中、【雷狼】。
クラが選んだのは下級職、高の上、【森の主】だった。
リーダーが高の中で大丈夫か? とも聞いてみたのだが、フェンラは速度特化の方向に進みたいらしく、【雷狼】を選んだんだ。カルアが【スターキャット】を選んだ理由とだいたい同じだな。ギルドバトルでは神になれるぞ。
他にも「猫人」の子は高の中、【闇猫】。
「狸人」の子は高の中、【狸幻想師】。
「兎人」の子は高の中、【氷結雪兎】。
「犬人」の子は高の中、【モフワン】。
にそれぞれ就いていたよ。
ほとんどが高の中だが、一点特化型という面では悪く無い。
オールマイティ向けの高の上より特化型の高の中の方が良いことも多いのだ。
みんなそれぞれなりたい自分というものを持っていたので、俺はそれを叶えた形だな。
もちろんこの6人は〈エースシャングリラ〉に採用だ。
入学式が終わり次第、残り4人をスカウトに行くぞ!




