#1784 最上級ダンジョン帰還!みんな歓声大爆発!
「ああ! 今〈エデン〉メンバーが帰還した模様だーーーーー!」
「最上級ダンジョンから初めて帰還した、記念すべき瞬間が今、我々の目の前に広がっています!」
――――わああああああああああああああああああ!!
初回にしてはそれなりに満足する成果を持ち帰りダンジョンから出ると、そこには40分前と変わらない、否、むしろそれよりも多くなっているように感じるたくさんの人たちが声援で出迎えてくれたんだ。
おおおお! とても気分が上がっていくのを感じる!
「ゼフィルス様」
「おう。ちょっと行ってくるぜ」
セレスタンに促され、さらにこれを読んでいたのか見栄えの良い素材と、例の〈世界樹の杖〉を受け取ってダンジョン門から出る。
すると、未だに特設ステージが残されたままになっていたのでそこに登ったんだ。
そうして〈世界樹の杖〉をよく見えるよう掲げて見せて、俺は宣言する。
「みんなああああああ!! 俺たち〈エデン〉は最上級ダンジョンに突入した! これがその成果―――〈世界樹の杖〉だあああああああああああ!!」
――――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
大反響、大噴火!
なんだこれ、みんな俺に注目しているぞ。俺の人生史上、一番気分いいかも!
それからたっぷり5分以上、俺は大歓声のシャワーを浴び続けた。なんだか肌がつやつやになった気がするぜ。
少しずつ収まってくると、ステージに学園長が登ってきた。
それだけで人々の興奮は高まり、声を抑えて何が起こるのかを見守る。
「ゼ、ゼフィルス君、よくぞ戻ってきてくれたの」
「学園長先生! 我ら〈エデン〉! 最上級ダンジョンに足を踏み入れ、素材各種を採集し、ダンジョンの仕組みも僅かながら把握し、モンスターを倒して帰還しました!」
「う、うむ。素晴らしい成果じゃ。是非詳しく聞きたい」
「お任せください! すぐに攻略して報告書に載せますから」
「……ん? 今攻略すると言ったかの?」
「まずはこの素材をお受け取りください! 研究員の方々が今にも駆け出しそうな程前のめりになっていますから。是非研究にお役立てください!」
「「「「学園長様ーーどうかすぐ我々研究所にその素材をーーーーー!!」」」」
振り返れば特設ステージの――なぜか檻のように柵で囲まれたエリアに白衣を着た研究員の方々が入れられていて、こちらを――正確に言えば俺が持っている素材を血走った目で見つめていたんだ。
なぜだろう、あの柵と中の研究員を見ていると動物園が頭を過ぎったんだぜ。
「う、うむ。ありがたくいただくのじゃ。じゃが先程なにか聞き捨てならないことが聞こえ――」
「ではこれより、ゼフィルス氏より学園へ、最上級ダンジョン産の素材の受け渡しが行なわれます!」
学園長が何かを言いかけていたが、それは最後まで聞こえず。
いつの間にかステージには研究所所長、〈研究所で一番の男前〉を自称する――ミストン所長が立っていたんだ。焦る気持ちからか、ランランと目を輝かせていた。
「ゼフィルスさん、お疲れ様。この台に素材を置いてくれるかしら?」
「あ、タバサ先生! 了解だ!」
さらにタバサ先生が台を持ってきてくれた。あれ? この台って体育館で先生たちが話す時に使う演台じゃ……。まあ細かいことはいい!
今日は卒業式だからな! きっとどこかで使うために持ち運んできたんだろう! 使う場所がちょっと間違っている気がしなくもないが気にしない。
俺は演台っぽい所に素材を置き、後ろに立ったセレスタンより各種類の〈世界樹の葉〉を持たされた。
なるほど、これを使って場を盛り上げろってことだな?
学園長が慌てていたが、俺はしっかりと役目をこなしたんだ。
「あ、ちょ、待っ!?」
「みんな見てくれ! これは〈世界樹の葉〉という素材だ! これから作られるのは〈アルティメットエリクシール〉などの回復薬。1本あればHPをほぼ全快してしまう最上級ポーション、その素材たちだ!!」
―――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「所長ずるいですよ!」
「ここから出してください!」
「僕たちにも間近で見せてください!」
周りからも大歓声だが、ミストン所長からも歓声が聞こえた気がした。ふふふ。
これで最上級ポーションの宣伝は出来たと。
見れば学園長が白目を剥いていたが、そこへスッと近づいてきたのはメイド服姿のクール秘書さん、改めコレットさんだった。
何かをグイッと学園長に飲ませると、一瞬で白目を剥いていた学園長の目が戻って来たんだ。何かを叫んでいた気もしたが、周りの歓声で聞こえない。
コレットさんは用が済むと、そのままスススと見事なバックで下がって消えていった。
「ぜぇぜぇ。ゼフィルス君」
「学園長! 是非こちらを研究にお役立てください」
「そ、それよりも攻略の話を――」
「うおおおおおおお!! 任せてくれゼフィルス氏! この素材、確かに研究所が預かった! これでまた学園は、果ては人類は、大きなステップを踏み出すことになるだろう!!」
――――――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
学園長が何かを言おうとしていたが、テンションが天井を突破したっぽいミストン所長の声に被せられて、よく聞こえなかったんだ。だが、まだ終わらない!
「学園長!」
「な、なんじゃ?」
「聞いてください、実はこの〈世界樹の杖〉は――〈金箱〉産なんです!!」
「なんじゃと!」
「「「「「〈金箱〉産!?」」」」」
「今〈金箱〉産って言ったか!?」
「た、確かに聞いたぞ!? 〈金箱〉産の杖!?」
「さ、最上級ダンジョンで〈金箱〉見つけちゃったのかよ!」
「〈世界樹の杖〉! す、すげぇ神々しいんだけど! あれが〈金箱〉から出たのか!?」
「え? え? 最上級ダンジョンで初めて手に入れた〈金箱〉産杖? それって歴史に残るやつじゃ……」
どよめく会場の声が聞こえてくる。
素材に夢中になりかけていた研究員もギュインと〈世界樹の杖〉に大注目だ。
「これは正真正銘! 最上級ダンジョンで初めて見つけた宝箱に入っていた杖です! 我ら〈エデン〉は、これを学園に寄贈します!」
――――――わあああああああああああああああああああ!!
一瞬の静けさのあと、またも爆発的な歓声が周りに轟いた。
これも既定路線。〈世界樹の杖〉はまた今度レシピで当てる!
だから現物はあげても問題無い! むしろ歴史的なんちゃらで展示してもらった方が俺たちとしても嬉しいというものだ! 故にこれは、寄贈することに決めたんだ!
「学園長、お気を確かに! さあ、受け取ってください!」
「受け取ってください!」
ミストン所長と俺にランランとした目で促され、学園長は震える手を杖に伸ばす。
「ヒィ、ヒィ――う、うむ。ゼフィルス君。誠にありがとう。これは学生がいつでも見られるよう、歴史的産物として丁重に展示させていただくわい」
――――――わあああああああああああああああああああ!!
またもや大歓声大爆発!
ふはははははは! 俺たちの成果が大々的に展示されるってよ!
これで最上級ダンジョンを目指す学生が増えるってもんだぜ!!
笑いが止まらん! ふははははははは!!
それから最上級ダンジョンから帰還した俺たちは、それはそれは丁寧な歓待を受けたんだ。
きっと俺たちが最上級ダンジョンに潜った直後から、これを計画していたのだろう。
戦闘課の校舎で盛り上がっていた卒パの会場はこちらにも作られ、最上級ダンジョン門の前は人で埋め尽くされたのだった。
いやぁ、めでたい! 素晴らしい! お祝いわっしょい!
おお! 向こうでは筋肉たちがマッスルガンゴレを神輿にしてわっしょいわっしょいやってる! あれが噂のマッスル御神輿か! いいぞーもっとやれー!
いつの間にか大量の出店も現れて、ここら一帯は一気にお祭り会場へと変貌した。
ははははは! 楽んのしい~!
「ねぇねぇゼフィルス君! 素材見せて!」
「もちろんだハンナ! ほら、これがさっきの〈世界樹の葉〉だ。〈世界樹の実〉〈火霊葉〉など、かなりの種類があるんだぜ」
「凄い!」
「それとこっちは料理アイテムに使える素材たちだな!」
「卒業式の日にこんなの見せられた私はどうすればいいの!?」
「ミリアス先輩にはこの辺の素材をプレゼントだ! 次の料理アイテム、期待してます!」
「〈エデン〉と繋がりが深すぎて卒業する実感が無くなっちゃうよ!? でもありがとう!」
ハンナとミリアス先輩にも素材をプレゼントだ。
モナたち〈採集無双〉が頑張ったおかげで大量だったからな。
とはいえ、ハンナに掛かれば数時間で溶けるくらいしか採れていないので、まだまだ採集し足りない!
「まぁったく兄さんは、卒業式の日にも変わらんというか、相変わらずむちゃくちゃやな」
「マリー先輩! さっきぶりー! 最上級ダンジョンのモンスター素材いる? 毛皮なんだけど?」
「そんなんいるに決まってるやん! 安心しいや兄さん、資本はたっぷりあるで! 全部出すんや!!」
「あ~、せっかく集めた素材が持っていかれる~」
「これは加工して、うちの店の新しい看板にしたるわー! わはははは!」
なんだかいつもとは逆の展開! マリー先輩の「わはははは」も聞けて大満足だよ俺は!
こうしてこの日、卒業式&史上初の最上級ダンジョン突入イベントは幕を閉じていった。




