#1769 策に陰り無し。〈エデン〉を利用して特効発動
〈ギルバドヨッシャー〉の要、オスカー君撃破に成功!
ついでにラナとエステルが苦戦したという【道案内人】2人も撃破に成功したのだから大戦果だ!
「やったわねエステル!」
「はい! 大戦果です!」
〈戦艦・スターライト1番艦〉エステル号からそんな声が聞こえてきた。
ラナたちも大喜びしている様子だ。
しかし、相手はあの〈ギルバドヨッシャー〉、ただでやられるなんてことはなかった。
「『ゼフィルスさん、こちらリーナですわ!』」
「リーナから通信だ!」
通信が入り、みんなにも共有する。
オスカー君は通信を妨害し、全て混沌語にしてしまう。
だが、その恐怖ともこれでおさらばだな。
以前、リーナが混沌語を話し始めてびっくりした隙を突かれたことを、俺は忘れない! オスカー君を撃破出来たことに改めて安堵する。
「『報告ですわ! 〈ギルバドヨッシャー〉がオスカーさんがやられるとほぼ同時に〈巨城ちょい残し戦法〉を発動! 5城全ての巨城で残りHPが1割以下になりましたわ!』」
俺たちに激震が走った。
「もう全部〈巨城ちょい残し戦法〉されてるのか!」
「『〈ギルバドヨッシャー〉はゼフィルスさんが直接オスカーさんを仕留めに行くことを読まれていたのだと思いますわ!』」
なんということだろう。
リーナの言葉通りなら、オスカー君は囮だったということになる!
オスカー君を俺たちが狙う時、かなりの部隊を送り込んで囲って倒した。
その間に〈ギルバドヨッシャー〉は分担し、〈巨城ちょい残し戦法〉を発動。
白チームが持つ5城全てのHPを1割以下にすることに成功した模様だ。タイミングも完璧だった。
さすがは〈ギルバドヨッシャー〉。さすがはインサー先輩! さすがとしか言えない!
道理でオスカー君にしてはあっさりやられたと思ったんだ!(それは混沌過剰摂取が原因です)
「『さらにもう1人通信妨害担当がいると思われますわ。オスカーさんがやられる寸前に新たな通信妨害が発生。シュミネさんが『妨害アロマセラピー』を張り直す僅かな隙に〈巨城ちょい残し戦法〉を許してしまったのですわ!』」
「了解だ! だが気にするなリーナ、リーナもオスカー君絶対倒す作戦の指揮を執っていたんだ、そっちまで手が回らなかったのも仕方なしだ」
新たな通信妨害。それはオスカー君の弟子というシンジの仕業に違いない。
〈ギルバドヨッシャー〉の職業構成は対人戦のためではない、完全にギルドバトル特化系で揃えてきている!
対人戦で自分たちのメンバーがやられるのも作戦に入れ、指揮であるリーナを含めオスカー君に注目していた隙を突いてさらなる手を打ってくるか! さすがは〈ギルバドヨッシャー〉!
〈巨城ちょい残し戦法〉か、このままだとぶっ刺さるな。
試合終了、残り2分の時点で5城落とされれば、こちらが4城落とさないとポイントが逆転されて負けだ。
小城マスのポイント差はそこまで広がっておらず400P差しかない。もちろん白有利だが。
このままだと巨城1つ分の2000P離すのはギリギリかもしれない。
「いいないいな! そうこないと! よし、俺たちは赤本拠地へ行く!」
「『え、ええ!? このタイミングで、ですか!?』」
「おう! だが、赤本拠地は落とさない。〈エデン〉がするのは――〈本拠地ちょい残し戦法〉だ! 加えてカイリには一仕事してもらうぜ!」
◇
オスカー君を囮にした〈巨城ちょい残し戦法〉は、おそらく1回しか使えない手だ。
〈エデン〉がオスカー君にかなり強い印象を持っていて、かつ煮え湯を飲まされたことがあるために成立した作戦と言っていいだろう。
故に、この作戦は1回しか使えない。
【エウレカカオス】のシンジや【道案内人】はまだいるが、オスカー君より脅威度は低いし、オスカー君の時のようにかなりのリソースを割いて追いかけ回すこともないからだ。それならその時間を小城マス取りに集中したい。
故に〈ギルバドヨッシャー〉はこの1回のチャンスで全ての巨城のちょい残しに成功しなくてはならなかった。結果は成功。見事というしかない。
5つの巨城は、全て赤チームがほぼ獲得したも同然となった。
そう、この5城は持っていかれると思っていい。
そして現在ポイントは〈白5城:13,510P〉〈赤4城:11,090P〉。〈2,420P差〉。
ポイント差が4000P以内、つまり巨城2城取れば逆転なので、このままいけば〈ギルバドヨッシャー〉は最終的に巨城を6城持っていれば勝ちとなる。
反対に〈エデン〉は4城持っていれば勝ちだ。小城で逆転をされなければだが。
〈ギルバドヨッシャー〉はちょい残しした全ての巨城を落とす気だ。これで5城獲得出来る。
そして、赤が現在持つ4城の内、1城でも守り切れば6城保持で勝ちだ。
もちろん〈エデン〉だってそう思い通りにはさせない。
試合残り時間――28分。〈エデン〉が動いた。
「あああっと〈エデン〉が動き始めたーーーー! こ、これは!?」
「南側に集結しています!」
「輪で確認したわ。35人中、16人がZ観客席の南側。つまり、赤本拠地の近辺へと侵攻しているわ。そっちには赤本拠地しか無いわよ」
「つまりこれはーーーー! 〈エデン〉は赤本拠地にアタックを仕掛けるつもりかーーー!?」
「このタイミングでですか!? 〈ギルバドヨッシャー〉も激しく動き始めました。さすがは伝達能力がトップクラスのギルド、動きが早いです!」
実況席がまたも熱くなる。
一進一退、〈エデン〉と〈ギルバドヨッシャー〉の戦いは新鮮で驚きの連続。
見るべきものが多く、その数々の戦法、戦術、作戦に研究所の白衣たちが2人ほど意識を失ったとか。メモの取りすぎで、だろうか?
「〈エデン〉がまた何かする気ね。〈ギルバドヨッシャー〉の防衛陣は【ジャイアントハンドキーパー】が4人よ。東西南北からの攻撃から本拠地を守る鉄壁のメンバー、だけど、〈エデン〉16人には厳しいわ」
〈エデン〉が赤本拠地の攻略に入る。
立ち塞がるのは【ジャイアントハンドキーパー】が4人。
またカタリナとロゼッタによってドナドナされてしまうのか!? と思いきや〈エデン〉の狙いはむしろ【ジャイアントハンドキーパー】の4人だったのだ。
「ああっと! 西側を守っていたトリタ選手が退場ーー! さらに東側のウササ選手、南側のホース選手も次々と討ち取られていくーーー!? 残りは北側のレンチュウ選手だが、ここで〈ギルバドヨッシャー〉からテイマーでしょうか!? なんと〈リヴァイアサン〉と〈ワイバーン〉の援軍が到着だーーー!! でもスティーブン君、このままじゃ赤本拠地が落とされちゃうよ!」
「〈ギルバドヨッシャー〉なら赤本拠地を素通りさせるかもと思ったのだけど、ここでガチ対決なの?」
「自分も、むしろ〈ギルバドヨッシャー〉は本拠地をこのタイミングで落とされることは歓迎すると思っておりました。本拠地が復活すれば、そのHPは1.5倍に増えます」
「加えて最終的に6城保有していれば勝ちの〈ギルバドヨッシャー〉からすれば、一旦ここで4城を〈エデン〉に渡し、さらに〈巨城ちょい残し戦法〉を使って一撃で落とせる5城に+1城にすればかなり有利になるはず。ここでむしろ落とされる方が良いと思うのだけど?」
そう、本来ならユミキの言う通り。現在〈ギルバドヨッシャー〉が4城、〈エデン〉が5城保有している。
ここで赤本拠地が落とされた場合、〈ギルバドヨッシャー〉が0城、〈エデン〉が9城になる。(内ちょい残しが5城)
つまり〈ギルバドヨッシャー〉的には〈ちょい残し〉ができる巨城が増えることになるのだ。
〈ちょい残し〉が6城になれば、残り2分で6城落として逆転勝ちが狙える。
故に〈ギルバドヨッシャー〉的にはむしろこのタイミングの赤本拠地の陥落は望むところなのだ。
「いえ、わかったわ。これは本拠地をちょい残しする作戦なのよ!」
「! なるほど! ちょい残しするのは巨城だけではない、本拠地もちょい残しの対象ということですか!」
逆転の発想!
本拠地の防衛力は普通残り2分に一番高くなる。
だからこそ、その前にHPを削っておこうという作戦だ。
後は残り2分で陥落させてしまえば良い。
だが、これにはリスクが付きまとう。
もしうっかり落としてしまうと先ほど言ったように、〈ギルバドヨッシャー〉に逆転の節目を与えかねないのだ。故に絶妙なちょい残しが要求される。
だが、そこはゼフィルスだ。こんなことでミスなんかしない。
今のうちに防衛力を削いでおき、残り2分で悠々と赤本拠地を落とす気なのだ。
「ああー! 最後の【ジャイアントキーパー】、レンチュウ選手がやられたー!? 〈エデン〉がガラ空きの赤本拠地を削って行くーー! 〈ギルバドヨッシャー〉万事休すかーーー!?」
「いえ、あれは!?」
「こ、これは、〈ギルバドヨッシャー〉がまた何かやりました!」
「ええ!? うそ、あのアイコンってもしかして!? ああ!? 一転して〈エデン〉がピンチかーーーーー!?」
◇
こちらは〈ギルバドヨッシャー〉、インサー。
「よし、予想通り城を削ってきたなゼフィルス氏! 覚悟してもらうぞ!」
ここでインサーが、対〈エデン〉用の奥の手を発動させた。




