#1734 〈SSランクギルドカップ〉開幕、第1試合準備
―――〈SSランクギルドカップ〉、通称:SSランク戦。
卒業式の前である2月28日、3月1日、3月2日の3日間を丸々使った、学園でトップのギルドを決めるギルドバトルだ。
その方式はなんと1対1の〈城取り〉。
出場するのはCランク以上の180ものギルド!
ランダムで対戦相手が選ばれ、トーナメント形式で優勝を目指すのだ。
そして俺たち〈エデン〉は、第一アリーナの会場に来ていた。
すごいぞ、周りを見渡せば人、人、人だ。
会場には180ものギルドが集まり、観客席では満席以上、立ち見客まででているように見て取れる。
まさに大盛況。
学園が年度の最後に企画した一大イベントとあって、全国から人が集まり大注目されているのだ。
もうすぐ卒業してしまう3年生、そして元居た学園に帰ってしまう留学生は、ここが本校に来て学び成長した自分の力を出し切る場面。
誰もが気合い入りまくっていた。
「時間だよ! 中央に注目!!」
ラダベナ先生の大きな迫力ある声が会場中に響き渡った。
瞬間、それまでざわめいていた会場が静かになる。
そして会場の中央が盛り上がると、演壇が建ち、そこにこの学園のトップ、学園長が転移してきた。
転移してきた学園長は正面をキリッとした表情で見つめると、バッと手を広げて発言する。
「よくぞ集ってくれた! わしはここ、〈国立ダンジョン探索支援学園・本校〉が長―――ヴァンダムド・ファグナーである!!」
――――――わあああああああああ!!
まずは名乗り。
それだけで大気が震えるほどの大歓声だ。
学園長、大人気だな! 大歓声の直撃を受けまくっている学園長がやや仰け反っているように見えるが、きっと気のせいだろう。
歓声が収まると、学園長が再び口を開く。
「ここで対戦するのは180のギルド。お互い切磋琢磨し鎬を削り、この学園で最も強いギルドを決める。ここに――〈SSランクギルドカップ〉の開催を宣言する!!」
―――――うおおおおおおおおおお!!!!
学園長はいつも端的だ。
だが、それがいい。
学園長の宣言に会場のボルテージはマックス。
こんなところで試合できるとか、最高しかないな!
そうだ、観客席に手を振っておこう!
おお、なんだかあそこ「勇者君がんばれ」なる横断幕がすごいことになってる!
よし、あそこに手を振っておこう。
「これより3日間、7つのアリーナでそれぞれ試合が始まる! 1回戦から5回戦までは試合時間は40分。6回戦、準決勝、決勝は試合時間を1時間とする! みなの健闘を祈る! 存分にこの学園で学んだ成果を見せるのじゃ!!」
――――わあああああああ!!!!
試合時間に関してはそこそこタイトなスケジュールだ。
なにせ試合に出るギルドは180もあるんだから。
優勝1ギルドを決めるのだからその試合数は単純計算で179試合になる。
これを3日間でこなすと、1日約60試合。7つの会場ですれば平均8試合か9試合になる。1試合につきインターバルなんかを含めて1時間使うと考えれば、ほとんど半日がかりだな。
そのため、本日は21時まで試合が組まれている。
学園長の宣言の後、そう説明がなされ、各アリーナの組み合わせが発表されたのだ。
――――――わああああああああああああああああああ!!
またも大気を震わせる大歓声。
組み合わせが表示された超巨大上空スクリーンに、会場はまたも震えたんだ。
〈エデン〉の第一回戦の対戦相手は――〈サクセスブレーン〉が表示されていた。
しかもここ、第一アリーナで行なわれる!
「全ギルドの学生たちよ、移動を開始するのじゃ!」
学園長の言葉にほぼ全ギルドが移動を開始する。そして、
「〈エデン〉、〈サクセスブレーン〉の出場選手は集まりな!」
またもラダベナ先生の声が響く。
俺たち〈エデン〉と〈サクセスブレーン〉は移動せず、会場内に留まるのだ。
そして他の全ギルドが移動し、〈エデン〉と〈サクセスブレーン〉だけが会場に残された。
「ではこれより、第一アリーナにて〈エデン〉対〈サクセスブレーン〉の試合を開始する! 両者礼!」
「「「「「よろしくお願いいたします!」」」」」
―――――わあああああああああ!!
そう、記念すべき第一アリーナでの第1回戦、第1試合は――〈エデン〉対〈サクセスブレーン〉。大盛り上がり間違い無しの試合に観客席のテンションはマックスのままだ。
時間もタイトなので試合に出場する選手は挨拶後、即転移させられる。
一度控え室に転移され、最後の準備だ。
いつの間にかラダベナ先生の側に居たムカイ先生が、タブレットをポチポチ。
「フィールドを変更するよ。第1回戦は――〈バベルの塔〉フィールドだ!」
そして、フィールドも試合開始10分前から15分前にランダムで決まる。
まさに、俺たちギルドの連携力が試されているな。
会場がグラついたかと思うと、フィールドが変わっていく。
1分ほどで落ち着けば、そこは――〈バベルの塔〉フィールドに変わっていた。
「それでは両者、健闘を祈るよ! これより本拠地に転移する! 忘れ物はするんじゃないよ!」
ムカイ先生がタブレットをポチすると俺たちの足下に転移陣が現れ、俺たちは見慣れた本拠地の前に居た。
上空スクリーンでは、試合開始までのカウントダウンがすでに始まっている。
10分で〈バベルの塔〉フィールドの作戦を通達しなければならない。
「全員聞いてくれ! 第一アリーナの〈バベルの塔〉フィールドの攻略法を説明する! 再確認するぞ!」
俺は転移直後、35人の第1回戦のメンバーに通達。
再確認の言葉の通り、実はすでにギルドメンバーには〈バベルの塔〉フィールドの攻略の仕方は教えてある。というかほぼ全てのフィールドはすでに攻略法を伝授済みだ。
後は誰がどこの担当になるかだな。
「俺、カルア、レグラム、オリヒメさんが例のぶった切り作戦狙いの〈スタダロード戦法〉を担当する。配置はこうだ。次に――」
俺は素早く〈バベルの塔〉フィールドの地図が描かれた紙を広げて共有し復習する。
この地図は、試合開始前にスキルが使えず〈竜の箱庭〉では共有できないため持ってきた小道具だ。
ルートを次々指示して全員に納得の表情が浮かぶのを確認する。
カルアだけ不安だが、俺が一緒に行動するのできっと大丈夫だろう。大丈夫であってほしい。
〈バベルの塔〉は南北に伸びる、俯瞰するとまさに塔の形をしたフィールドで、以前〈ミーティア〉対〈百鬼夜行〉戦でも使用された場所だ。
南側にお互いの本拠地、南西に〈エデン〉の白本拠地があり、南東に〈サクセスブレーン〉の赤本拠地が存在する。
フィールドは南側が一番東西のマスが多く、北側になっていくほどマスが少なくなっていく。
巨城の数は9城。
3城ずつ連なった巨城が3段階に渡り、塔に配置されている形。
本拠地から一番近いのは南側の3城で、白本拠地からは6マスで隣接が取れる位置にあるほど近い。
ここが南側と呼ばれている〈南西巨城〉〈南巨城〉〈南東巨城〉だ。
中央付近には〈西巨城〉〈中央巨城〉〈東巨城〉が存在し、
北側には〈北西巨城〉〈北巨城〉〈北東巨城〉がそれぞれ東西に並びながら存在している、面白い地形だな。
下手をすれば、この横並びの3城を全てゲット可能という、凄まじい宝箱のような地形。
しかし、巨城に惑わされると足を掬われるフィールドでもある。
それが本拠地の位置だ。本拠地はお互い南側にあるのがミソ。北側の巨城との距離は40マス、直線距離で2キロメートル以上だ。北側に遠征に出た部隊の隙を突いてガラ空きの本拠地を落とすというのは、このフィールドでかなりポピュラーな戦法である。
どういう戦法で行くのか、プレイヤーの腕が試されるな。
もちろん、この攻略法は分かっている。
要は、本拠地と北側、両方が安全に取れれば良いんだよ。




