#1724 テスト期間突入!学生よりも先生が悩んでる!
2月23日、月曜日からは期末テストが始まる。
三学期だけは前日までダンジョンが開放されているため、テストの準備期間が無い。いや、無いと言うより自己責任というのが正しいか。
ダンジョン週間中に勉強するも良し、ダンジョンに入るも良しというスタイルだ。
〈エデン〉に限って言えば、他のAランクギルドやSランクギルドの牽引を担当してくれたメンバーも、牽引後のダンジョン週間の後半は勉強に集中していた人が多い。
さすがはAランクギルドやSランクギルドのメンバーたち、しばらく付き添ってやり方を伝授すれば、それをすぐにものにして自分のスタイルに昇華していくんだよ。
故に後半ともなれば〈エデン〉が面倒を見ることもさほど多くなく、勉強に集中できたというわけだ。
まあ、当のAランクギルドやSランクギルドは、かなり大変だったみたいだが。主に六段階目ツリーの開放と期末テスト勉強の両立で。
うむ、普段はテストの1週間前からダンジョンを閉鎖しなくちゃいけないのも分かるな。
「ふんふふ~ん♪ 今日も良い感じだったよ~♪」
「そうか~、そいつは良かったなハンナ」
「もうね、アルストリアさんの言ったところが面白いようにテストに出てね、これは過去一番の点数になる予感なんだよ!」
ちなみに生産組のハンナはすごく平和だ。
ダンジョン週間なんてかなりテスト勉強に費やしたらしい。
俺の部屋に勉強にやって来たハンナがルンルンとしながらやってきて会話に花咲かせる。ハンナが興奮するほどよく解けたみたいだな。しかし。
「はぁ、でもこのテストが終わったらミーア先輩ともいよいよお別れなんだよね、寂しいよ」
「〈生徒会〉の活動、まだミリアス先輩は参加しているんだっけ?」
「うん。本当はもう引退してもいいんだけどね。ほら、今年はなんかバタバタしてたから引き継ぎが上手くいかなかったというか、ミーア先輩は引き継ぎが苦手というか」
「ああ、うん。確かにミリアス先輩ってそんな感じするな」
先のことを思い出したようでハンナが憂う。
慕っていた、というか仲の良かったミリアス先輩が〈生徒会〉を脱退する日が迫ってきて、とても寂しいのだ。
ミリアス先輩の〈生徒会〉作業自体はダンジョン週間で満了している……はずだったのだが、引き継ぎが終わっていないのでテスト明けも〈生徒会〉に集まるのだそうだ。
だが、それが今年度〈生徒会〉メンバーの、今度こそ最後の活動日らしい。
「だけどミリアス先輩ってこの学園都市でお弁当屋を始めるんだろ? いつでも会えるんだから良かったじゃないか」
「それはそうなんだけどね、でもそれもいつになるか分からないんだって」
また、ミリアス先輩はここ学園都市にて自分のお弁当屋をオープンさせる予定らしい。
予定というのは、学園でもミリアス先輩という六段階目ツリーを開放した生産職というのは貴重で、まずはその力を研究させて欲しいと研究所から依頼されているためだ。それが一段落したら、という話だな。
まあ、もしくはそのまま〈調理課〉の教員になる可能性もあるらしいが。
「〈生徒会〉は大丈夫なのか? ミリアス先輩の後任や、役員以外の所属メンバーのこととか」
「あ、うん。役員には無事タネテちゃんが就いてくれたんだ。今はアルストリアさんが副隊長になっているから、タネテちゃんはアルストリアさんの後を受け継いで会計の役員になっているけど、次期生産隊長として育てるつもり」
「ハンナの後任か~、そりゃあ大変そうだ」
さすがはタネテちゃん。
確かにあの性格は上に就く者向けだろう。物怖じしない性格とか生産隊長にぴったりだ。ハンナは2年連続生産隊長に決まっているし、後任はハンナと比べられるだろうから気弱な人には就かせられない。
また、今のうちから「タネテちゃんが次期生産隊長です」と謳ってハンナと一緒に行動させるみたいで、後任としてハンナと比べられる機会を減らそうと動き始めているそうだ。ちなみにこれはサトルの案な。
「サトル君と言えば、〈生徒会〉に新しく入ってきてくれた人たちの陣頭指揮を執ってくれているよ。あれこれ指示を出して情報を纏めたり、問題を解決したりとパパッとやっちゃうんだ。みんなからもかなり慕われているんだよ」
「サトルはマジハイスペックだよな。最近は特に」
「お仕事できる人はかっこいいもんね。後輩ちゃんからは特に人気みたいだよ? 女子でもサトル君を慕っている子いるし」
「え、マジで?」
おいおいマジかよサトル。モテ期到来じゃん。
「とは言ってもサトル君、すごく仕事人間だし、忙しそうだから、慕われているだけみたいだけど」
「サトルめ、なんて勿体ない」
「…………」
近くに自分を慕ってくれている女子がいるというのに仕事の方が大事とか。
そう思って拳を前に出して握りしめていると、ハンナからなんだかジトッとした目で見られている予感。
「ハ、ハンナ?」
「……なんでもないよ。はぁ」
まさかハンナのジト目、と震える声で聞いてみればハンナは溜め息を吐いてジト目をリセットしてしまった。そ、そんな~。
「それじゃあ、そろそろ勉強しよう? ゼフィルス君、教えてもらっても良い?」
「あ、ああ。もちろんだ!」
こうしておしゃべりはここで終了。目的だったテスト勉強に戻ったのだった。
◇ ◇ ◇
テスト期間もあっという間に過ぎていき、最終日木曜日。
多くの学生が待ちに待った、テスト終了のお知らせだ。
「はーい、そこまでよ~」
――――ざわざわ、ざわざわ。
フィリス先生の元気な終了のお声に俺たちも少しざわめきが巻き起こった。
安堵もそうだが、うん、安堵が9割くらいかもしれないな。
今日は実技。
だがもはや〈1組〉の実技を図ることなんか不可能だということが、ここで判明したのだ。
とあるダンジョンの中で行なわれた、スキルや魔法の実技試験。
地上だと色々とんでもないことになりかねないということでダンジョンで試験をすることになったのだが、マジで正解だった。
こんなものを地上でぶっ放せる場所はアリーナくらいだろう。
それくらいとんでもない威力をしている。
「いやはや、あんたたち、派手にやったねぇ」
ラダベナ先生がなんだか呆れた声を出している気がする。
「ほぼ全員が六段階目ツリーの開放者だなんて、みんな頑張りましたね」
フィリス先生は賞賛全開だ。なんだか明るくなったよなフィリス先生。
きっと例の【炎国姫】に就いたことが良い感じに影響しているのだろう。その笑顔には余裕があった。
「はぁ。こんなの、3年生にも見せられないかもねぇ」
ラダベナ先生の言葉もごもっとも。
いや、今なら3年生も結構六段階目ツリーの開放者が増えてきているので安心してください。安心要素が皆無かもしれないが。
ダンジョンでぶっ放されたスキルや魔法の数々は、ここのフィールドのモンスターを一掃。試験会場は上級下位の〈岩ダン〉で、耐久値に定評のあるゴーレム系モンスターだったはずだが、見事にどれも一撃で屠り、そこら中にあった岩や巨石は全て破壊されて消えている。
残っているのは破壊不能オブジェクトだけだ。
ラダベナ先生が「こりゃ、あたしもそろそろ引退かねぇ」と呟いているのがとても気になったんだぜ。
「ラダベナ先生、これはどう計れば良いのでしょう? 点数の付け方は?」
「もう実技の戦闘力は全員満点でいいさ。それくらいの実力だよまったく。あとは〈指定のドロップ回収〉で点差を付けるしかないね」
うむ、テストを受ける生徒ではなく、テストをする先生の方がテストに動揺しているような気がする不思議。
こうしてテスト期間は、とりあえず何事も無く(?)終わりを告げたのだった。
「よし、今日からはダンジョンも通常解禁されるな! みんな集めてSSランク戦の最終調整に向かうぞ!」
「「「おおー!」」」
テスト期間が終われば、土曜日からSSランク戦だ。
明日はテスト返却だけなので今日と明日の放課後は時間がある。
早速ボス周回を始めよう!
「うーむ、今後〈1組〉の実技テストをどこで、どんな風に受けさせるか、それが問題さね」
「みんな強くなりすぎちゃいましたからね」
なお、テストから解放されて喜ぶ学生たちとは裏腹に、今後のテストについてとても悩む先生方が印象的だったんだぜ。
あとがき失礼いたします。お知らせ。
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今回はリカの加入話です!




