#1723 フィリス先生【炎国姫】完了!色々完了!!
「ふう。ゼフィルスに頼んで正解だったのか、間違いだったのか……」
「ええ……えええ? リカちゃん、リカちゃん。見て、私の目がおかしいのかな、ジョブ一覧に【炎国姫】があるんだよ」
「うむ。私の目にも同じものが見えるよ……」
姉妹揃って目をコシコシする様子がそっくり。
でもフィリス先生の言葉使いが少し幼児退行している気がする。
いや、きっと気のせいだろう。
なお、現在測定室。
【上侍】から【箱入り娘】【深窓の令嬢】ときて【炎国姫】まで1日だったな。
俺もリカもずっとは見てあげることができないので、途中の〈道場〉によるレベル上げはフィリス先生のパーティに任せたのだが、さすがは〈攻略先生委員会〉のメンバー。もう【深窓の令嬢LV75】になってた。オール〈道場〉がパナイ。
よって俺の残りの仕事は、【炎国姫】の発現条件を調えるだけとなり、今ココ状態だな。
「でもリカ、〈攻略先生委員会〉ってすごいな。まさか〈道場〉が無料で使いたい放題だとは夢にも思わなかったぜ」
「いや、ゼフィルスが注目するところはそこなのか? あと別に使いたい放題じゃないぞ? 学園からの手当の一環であってだな」
驚いたのが〈道場〉だ!
エクストラダンジョンというのは、学生が利用する際、多額のQPが掛かる。
だがQPとは本来学生に対する学園側からのご褒美だ。
クエストという名の学園の手伝いをたくさんしてくれたから、学園からありがとう、これで学園の施設を利用してね、と褒美で渡されるものがQPである。
じゃあ先生方は?
教員として学園に貢献している先生方は、なんとエクストラダンジョンの利用が無料だったんだよ! これも福利厚生の一環らしい。なお、これは20歳を超えると手に入る経験値が少なくなってしまうため、それ故の措置でもあるとのことだ。
手に入る経験値が少なくなる? じゃあ〈道場〉を使うといいよ。と、そういう訳だ。
すごいな学園! もちろん使用するには色々守らなくちゃいけないことが多いらしいが、ほとんど使い放題と同義だ! なんて羨ましい!
え? じゃあ臨時教員である俺は?
学生である俺はそこまでの福利厚生は無い。その代わりQPが貰える仕様だ。
うん、俺的にはこっちでもありがたい!
「いえ、ゼフィルス君、リカちゃん? 私、今とても重要な人生の岐路みたいな時なのだけど、ちょっと軽くない?」
「げふんげふん! そんなことありませんよ! ちゃんと見てますってフィリス先生! さあ、【炎国姫】をポチッとしちゃってください!」
「うむ。ゼフィルスがこうなのはいつものことだ。私たちの時もこんな感じだったからな」
「そうなんだ……」
〈竜の像〉に手を触れ、ジョブ一覧が現れ、そこにバッチリと【炎国姫】の名があったという場面で、フィリス先生は未だ固まっている状態だった。
おかしいな。要望通り【炎国姫】の発現条件を満たしてあげたというのに。
「なんとなく今ゼフィルスが考えていることが分かるぞ。これはかなり大事だという自覚がまったく無いことも含めてな」
「うん?」
そういえば【炎国姫】って未発見って言ってたっけ。
…………。
でもヒントあったし、きっとセーフだろう多分。
【炎国姫】の発現条件で一番難しいのは【深窓の令嬢】に就くことだ。
ゲーム時代、これの発見がなかなかされなかった影響で【炎国姫】への〈上級転職〉もずっとできなかった時代があったんだよ。
だがそれも昔だ。
今では効率的な【炎国姫】の就き方は攻略サイトにバッチリ載っている。
ちなみに【炎国姫】の発現条件は〈【深窓の令嬢LV75】〉〈INT500以上、RES500以下〉〈〈天聖の宝玉〉の使用〉〈火属性武器でモンスター300体倒す〉〈上級火属性アイテム100個以上所持〉である。
【深窓の令嬢】を除けば、〈上級姫職〉の発現条件の中では割と簡単な方だ。
気をつけなくちゃいけないのはINTをRESよりも優先して育てなくちゃいけないところだな。
【深窓の令嬢】は魔法タンク。基本RESをメインに育てる職業だから、必要以上にRESに振りすぎてしまい失敗することがあるんだ。
後は〈火属性武器でモンスター300体倒す〉は、火属性の杖があるので簡単。
スラリポマラソンを使ってあっという間に満たしてしまった。
最後の〈上級火属性アイテム100個以上所持〉は「手に持つ」ではなく「所持」なので、普通に上級火爆弾を〈空間収納鞄〉にたくさん入れておけばOKだ。
こうして晴れてフィリス先生には【炎国姫】が発現したのだった。
「フィリス姉様、いつまでも固まってないで押してほしい」
「そ、そうね。びっくりしちゃってたわ。すぅ、はぁ……。いくわね!」
リカに後押しされ、一度深呼吸を挟んでポチッと押すと【炎国姫】がフィリス先生の上に輝いた。これでフィリス先生も【炎国姫】だ。
そして来る覚醒の光。俺のスクショが久しぶりに光る! パシャパシャパシャパシャ!
「ひゃ、え? なに? ゼフィルス君、何しているのです!?」
「記録を残してます! 初の【炎国姫】誕生の瞬間を!!」
「うむ。フィリス姉様、ポーズを取るのだ」
「リカちゃんがすっかり〈エデン〉に染まってるわ!」
覚醒の光の中のフィリス先生を激写すると、とても良いものがたくさん撮れた。
顔を赤くしてあわあわしているのとか、その赤い顔のままリカに言われてポーズを取ってるのとか。お宝写真が満載だ!
リカやリン先輩、そしてキリちゃん先輩にも後で現像したものを渡そう。
きっと喜んでくれるだろう。フィリス先生の晴れ舞台だ!
「うう、なんだか恥ずかしいわ……」
なお、覚醒の光が収まり、少し落ち着いたフィリス先生が恥ずかしがっている姿がとてもグッときたのは秘密にしておこう。
チラッと自分の上を見て【炎国姫】の文字が輝いているのを確認するフィリス先生。
「本当に【炎国姫】に就いちゃったのね……」
ふっふっふ、俺に不可能はない。
ちょっと茫然としているが、喜んでいる様子が伝わって来たよ。
よし、次だ!
「フィリス先生、フィリス先生」
「え? 何かしらゼフィルス君」
「フィリス先生は上級中位ダンジョンの攻略者の証を5つ持っているんですよね?」
「ええ。行き詰まったのは上級上位ダンジョンに入ってからだから」
「なら〈道場〉をランク13まで使えますね」
「そうね、〈道場〉をランク13まで―――え?」
――〈道場〉。
そこは攻略者の証によって入れるランクが決まるエクストラダンジョン。
そして上級中位ダンジョンの攻略者の証を5つ持っていると、ランク13まで入る事ができるのだ。
そしてランク13とは――上級職LV50まで上げられるランクである。
さっきまでランク8でレベル上げをしていたフィリス先生は、そのままランク9へ突入することになった。
もちろんSP振りは任せてほしい! おかげで四段階目ツリーを十全に使えるようになったフィリス先生は一気にモンスターを殲滅できるようになったんだ。
「囲われて燃え尽きなさい――『結囲・炎侯絶光』!」
フィリス先生が魔法を発動し、シルバーモンスターたちを結界で囲い、逃げられなくして炎で確実に倒していく。耐性も貫通だ!
うむうむ。フィリス先生もノリノリだな! 気に入ってもらえたようでよかったよ!
「思った以上に強いわよこれ?」
でもその表情がなぜか半笑いだった気がしたのは、きっと気のせいだろう。
やはりフィリス先生は魔法使いの方が向いているんだなぁと改めて思ったよ。
そしてダンジョン週間最終日までにフィリス先生に五段階目ツリーを開放させ、さらに〈下級転職〉前の元々のLVだった【炎国姫LV50】まで戻すことに成功したんだぜ!
爆速レベルアップ! これがレベルアップダンジョンの実力だ!
「…………そうか。リカよ、もう一度聞かせてくれないか?」
そしてフィリス先生とリカと臨時メンバーで〈攻略先生委員会〉のギルドに戻ると、キリちゃん先輩が出迎えてくれたんだ。当然のように報告すると、なぜか聞き返される。
「うむ。キリエ姉様、信じがたいことだと思うが受け入れてほしい。フィリス姉様が【炎国姫】に就いて、今日LV50になったのだ」
「その通りなのよキリちゃん。正直、私も未だに信じられないのだけど」
「…………??」
リカの懇切丁寧な説明は、どうやらキリちゃん先輩には受け入れがたいみたいだった。フィリス先生も自分でも信じられていないのでさもありなん。
「がんばれキリちゃーん」
「むむ、まさかそんなことになっていたなんて、ちょっと妬けちゃうわ」
なお、聞いていたのはキリちゃん先輩だけではなく、カノン先輩にタバサ先生もこの場にいる。
ちなみにキリちゃん先輩とカノン先輩も先生になったので以前までは先生呼びしていたのだが、なんだかしっくりこなかったので今は先輩と呼ばせてもらっている。
キリちゃんって言ったら、やっぱり先輩なんだよなぁ。(キリちゃん先輩済み)
すると、タバサ先生が俺の所までやって来て、おもむろに服を引っ張った。
「ゼフィルスさん、ずるいわ」
「い、いやぁ、ずるいわって言われてもなぁ」
行動が可愛すぎですタバサ先生!
その上目遣い、素晴らしいと思います!
「あ(しまった。これがあるからゼフィルスを〈攻略先生委員会〉のギルドハウスへ連れていかないようにシエラに言われていたんだった。このままではまた私がシエラに!)」
俺がタバサ先生のデレにテンションを上げていると、それを見たリカが「あ」みたいな声を上げていた。そこからすぐにリカが行動を起こす。
「こほん。すまんが我々は明日からテストがあるのでこれにて失礼する」
「もうちょっとゆっくりしていっても良いんじゃない? ね、リカさん?」
「うっ、い、いや、そうもいかないのだタバサ先生。なにせ、今週はあまり勉強時間がなかったものでな」
「……そう言われると仕方ないわね。でもそれなら私が個人レッスンを」
「ではこれにて失礼する! ――ゼフィルス、行くぞ! シエラに怒られないうちにな!」
俺がタバサ先生の言葉の誘惑に傾きかけていると、ガッと腕を強く掴んだリカに連れて行かれてしまったのだった。俺は手を振ることしか出来なかったよ。
◇
そして俺たちは、テスト期間に突入した。
大半のAランクギルド以上の学生が碌にテスト勉強していない状態でテスト期間になってしまったが、赤点を出すとSSランク戦に出場できないという、とんでもないペナルティが待ち受けていたので全員が己の限界を超えた。
俺? 俺はもちろん満点狙いだ!
今回も満点を取ってやるぜ!
なお、その裏で、
「お爺様、私、【炎国姫】に就きました! あ、これゼフィルス君から貰った記念写真です!」
「……ほ?」
この世で初の【炎国姫】誕生=孫娘。
学園長が予想外の所から爆弾投げられて意識を飛ばし、医者とメイドに蘇生薬をグイッと飲まされて無事戻って来たのは別の話である。
なお、その後に六段階目ツリー開放者が数百人誕生したという追撃も入ったとか。




