#1716 ゼフィルス見回りの旅!ベニテとオルク再会!
各ギルドは61層から76層で周回を開始した。
77層から79層は徘徊型が出る為、危険なのでその日徘徊型が倒されるまでは行かないでもらう。
というのは建前で、徘徊型は〈エデン〉のものだ!
徘徊型の報酬は渡さん! なんちゃって。
まあ六段階目ツリーを開放しないと危険なのも確かなので、〈エデン〉が独り占めしたいからというのは半分くらいジョークである。
また、〈巣多ダン〉では今言った通り、徘徊型ボスは77層以降に出現する。
これは六段階目ツリーを開放してから挑めという開発陣のメッセージだな。
普通の徘徊型は深層に入る61層から出没する圏内に入るので、このダンジョンは特殊なのだ。
〈エデン〉は毎朝77層、78層、79層に転移し、いずれかにいる徘徊型をまず撃破。
安全を確保して各ギルドに快適なレベリング空間を提供しているというわけだ。
俺は時々見回りをしつつ最適な狩り場を案内していく。
例えば〈氷の城塞〉が守りやすい立地とかな。
「こんなところはどうだ?」
「いいわね! 守りやすく、誘い込みやすく、反撃もしやすい。ここに城を建てれば良い狩り場になるわ!」
早速レイテルたちを案内すれば、キラキラした目でレイテルが感想を述べた。
うむ、城を建てる戦法で狩るならこの場所一択だ。〈フルート〉を吹いてモンスターをおびき寄せ、一気に撃破して逃がさない。レベル上げウハウハになるだろうな。
ただ、問題もある。
「ただ、ここ65層はすでに他のギルドが使っていてな」
そう、案内したのは別ギルドがすでに狩りに使っている階層だったのだ。
ここを〈氷の城塞〉がエリアボス狩りに使いたいとなれば、共闘するか、追い出すしかない。
そう考えたところで、俺たちの近くにビームが通り過ぎた。
「はははははは! 新しい観客か?」
「おう、〈氷の城塞〉じゃないか!」
「俺たちの筋肉を見に来たのか?」
「き、〈筋肉は最強だ〉…………!」
そして筋肉たちもやって来た。そう、65層を使っているのって、〈筋肉は最強だ〉なんだよ。
「悪いがレイテル、ここを使いたければアランたちと交渉が必要だ」
「うそでしょゼフィルス?」
「いや、マジなんだこれが。――アラン、ちょっといいか?」
「おお、ゼフィルスも一緒か!」
うむ。アランにも声を掛け、〈氷の城塞〉の戦法にここの立地がとても合っていることを説明し、レイテルにも来てもらって譲ってもらえないか交渉する。
なお、その裏では。
「ああ、あああ! やっと会えた! 冒険者せんぱ~~い!」
「ベニテ!? おお! ベニテじゃないか! 俺がここに居て驚かなかった住民は、ベニテだけだ!」
「きゃは! そんなの当然じゃないですか~。もう~勇者さんは本当に良い仕事をしてくれました! ねえ冒険者先輩、よければ私と一緒に狩りしようよ!」
「ええ!? 共闘のお誘いか!? マジか、ついに筋肉にも女の子たちが!」
「もう冒険者先輩ったら~、ど~こ見ているんですか~? 聞きましたよ? ここに来るまでに冒険者先輩が戦闘不能になった回数を!」
「そんなの聞いちゃったの!?」
「はい! ここの女子全員に、すでに周知済みです!」
「そんなの広めないで!?」
「でも安心して下さい! このベニテが来たからには安心です! 冒険者先輩は、私が守ってあげますから!」
ベニテがオルクと感動的な再会(?)をしていた。もちろんこっちにもバッチリ聞こえている。
「なるほど、共闘という手があるな」
「はいはーい! レイテル! 私それさんせーい!」
「うそでしょ?」
ベニテ強し。
アランが膨らました腕を組んで共闘に可能性を見いだせば、ベニテが賛同。
その後もトントン拍子に話が進み、ついに〈筋肉は最強だ〉と〈氷の城塞〉は共闘で65層を狩り場にすることに決定したのだった。
〈筋肉は最強だ〉も15人しかおらず、ここ以外では他のギルドの助けがないと厳しいため、共闘というのは悪く無い。ベニテもすげぇ喜んでる。レイテルは笑顔が引きつっているが。
「やったやった! ついに冒険者先輩と組めるよ~!!」
「良かったですねベニテ」
「うん! 夢が叶うよマースィ!」
「ところで、深層には〈天下一パイレーツ〉の方々も来るそうですが、ベニテ的にはそちらはいいのですか? あちらもかなりのレベルだと思いますが」(ダメンズレベルの話です)
「そんなのまだまだだよ! 冒険者先輩と比べるなんて、おこがましいレベルなんだよ! 私は、冒険者先輩を守りたいの!」(ダメンズレベルの話です)
「べ、ベニテ~」
うむうむ。なんの話かよく分からないが、ベニテとマースィの会話にオルクが感動しているな。
多分、良い話なんだろう。
しばらく〈筋肉は最強だ〉と〈氷の城塞〉に効率的な狩り方の指導をして、他のギルドの下にも向かったのだった。
「どうだカリン先輩、快適だろう?」
「全然快適じゃないし!? というか危な!? ええいガイちゃん踏み潰して!」
「ゴオオオオオオオオ!」
74層でレベリング中の〈集え・テイマーサモナー〉を見かけたので感想を聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。
ちなみに現在〈集え・テイマーサモナー〉のモンスター軍団VS〈巣多ダン〉のスタンピード対決の真っ最中である。
60層を超えてくると〈巣多ダン〉はマジスタンピードが増える。
陣地に引きこもっていたはずのモンスター群が、合流して仕掛けてくるのである。
その数は100を超え、300を超える大津波になることもある。
とにかく範囲攻撃などで潰さないとタンクすら持たない。最高のレベル上げ環境だな。
〈集え・テイマーサモナー〉のモンスターたちは優秀。
よく鍛えられているため、深層で登場する敵性モンスターにも全く見劣りしない。モンスター群VSモンスター群という大迫力の光景が見られてとても満足です。やっぱりここが一番迫力あるなぁ。
筋肉がボディから出るビームでモンスターを薙ぎ払う絵は、やっぱりなにかがおかしいと思うんだ。
そんなことを考えている間に何回目かになるスタンピードも終わる。
「お疲れ様カリン先輩、エイリン先輩も」
「ふぃ~~。レベルは上がりやすいし経験値的には美味しいんだけど、やっぱりこの大集団を相手にするのキツいよ~」
「うん。被害も結構出る。でもギルドバトルを想定すると悪くない」
「そうだけどさ~」
エイリン先輩としてはこの大集団のバトルは悪く無いらしい。
ギルドバトルを想定するのなら、次の〈教会ダン〉に連れて行ってみるのもいいな。
とはいえ、それも六段階目ツリーを開放してからだが。
「お、進化が始まったな」
「よーし、どんどん進化しちゃいなさい!」
戦闘が終わると、至る所でモンスターの進化が始まるのも〈集え・テイマーサモナー〉の素晴らしいところ。
特に集団戦は経験値が美味しいので、1戦ごとにどこかしら進化している気さえする。
モンスターのレベルもたくさん上がるのだ。弱いモンスターを後方に出すだけでもかなりの経験値を稼ぐことができる。
まあ、何かしらの防御対策が無ければ〈パージトラキ〉の餌食になるけどな。
「あ! 私のバンちゃんも進化できる! 〈暗黒竜〉出たーーーー!!!!」
「マジか! よーし、〈暗黒竜〉に進化したれカリン先輩!」
「いえーい!」
カリン先輩が何もない空間を人差し指でポチした瞬間、〈ワイバーン〉から〈ダークレッドナイトワイバーン〉に進化していたバンちゃんが、ついに〈竜〉である〈暗黒竜〉に進化したのである。
「ギャアアアアアアアアオ!」
「ふおおおおおおお!? なにこれかっこよ! 禍々しい感じがエクセレントなんだよ! バンちゃん最高ーーー!!」
カリン先輩のバンちゃんもとっても気に入ったようで雄叫びを放っている。
いやぁ、ほんとここは良いものが見れるぜ。
「これは面白そう、フラーラ先輩に騎士風の人形を作ってもらえば合わせて〈暗黒竜騎士モード〉もいける? うん、新しい戦術は決まった」
一方エイリン先輩が小声でブツブツ戦術を練っていた。全部聞こえてるよ! というか、もしかして今までの合体戦法ってエイリン先輩が練ってたの!?
ケルベロス、ヒュドラと来て、今度は竜騎士の合体技を披露するらしい。しかも暗黒竜騎士とかネーミングセンスもバッチリだ!
これは、ちょっと完成が楽しみなんだぜ!
〈集え・テイマーサモナー〉のレベリングは超順調なようなので次に向かう。
73層では〈カオスアビス〉と〈世界の熊〉のレベリングが行なわれていた。
「『暴食の闇と無慈悲な荒野』!」
「全員構えろ! 突撃準備―――今だ! 『ベアードライブ』!」
「「「「「『ベアードライブ』!」」」」」
迫り来るモンスターの大津波、対するはロデン先輩の闇の津波だ。
先頭に出たロデン先輩、そのマントから噴き出した闇の空腹はモンスターに命中するとその身体に絡みつき、根こそぎ闇へと引きずり込もうとする。〈束縛〉〈拘束〉〈石化〉〈呪い〉と状態異常のオンパレードを付与しまくり、弱らせて食べようとしていた。
モンスターの進行が止まると、そこへ次の手であるガロウザス先輩に率いられた〈世界の熊〉の面々が騎乗したクマで一気に突撃したのである。
思わず「おお!」と手に汗握ったよ。
【暴食】は相手に攻撃を直撃させると身動きを封じ、大量の状態異常を付与しながら弱らせ、光にしてしまう凶悪な大罪職だ。
当然のようにHPとMPを吸収回復するので、こういう大集団戦では永遠に攻撃できるのだ。なんて罪深い。
加えてその攻撃のほとんどが範囲攻撃の魔法系なので、対策が無いと大群で攻めても意味を成さず、こうして止められてしまうのである。悪ければ全滅だ。
そう、【暴食】は対大群用殲滅職業なのである。
〈ダン活〉では上級のランク4は物量型。ならそれ対策の職業も用意されているのが〈ダン活〉だ。いやぁロデン先輩が生き生きしているなぁ。
そこにガロウザス先輩たちが加わると、殲滅力が格段どころかエグいレベルでアップ。
300ものモンスターも、ほとんど被害を出さないで倒せてしまうのだ。
「う~ん、いいんだねいいんだね。とても美味しいんだね」
「美味しい狩り場な。言葉足らずだぞロデン。そんなだから怖がられるんだ」
「怖がられるのはガロウザスも同じだね」
そんな会話をしながら一仕事終えた雰囲気を出している2人に声を掛ける。
「ロデン先輩にガロウザス先輩、順調なようだな」
「おお! ゼフィルス君なんだね、こんな良い狩り場を教えてもらえて本当に感謝なんだね」
「いやぁ、全くロデンの言う通りだぜ! モンスターの数もそうだが、立地も素晴らしい。モンスターは一方向からしか来ない上に、俺たちの熊騎乗戦法が使いやすい! まるで天国のような狩り場だ!」
「喜んでもらえているようでよかったよ」
俺に気が付いたロデン先輩とガロウザス先輩が感謝を込めて言ってくる。
この〈巣多ダン〉は聞いての通りモンスターが大群で押し寄せるものだから、狩り場として非常に注目されたダンジョンでもあるんだ。
特に〈六ノ入口〉以降の階層はどこにどんな狩り場があって、どこなら効率よく狩れるかがよく研究された。
ロデン先輩とガロウザス先輩は2つのギルドなので、ハイリスクハイリターン。
確かに一方向からしかモンスターは来ないが、普通なら物量に押し切られかねない数のモンスターが来るような、そんなハイリスクな狩り場を教えて上げたんだ。
結果はこの通り、天国扱いである。これも【暴食】がいるからこそだな。
2つのギルドに相性ぴったりだと思ったんだよ。
特にここは2つのギルドが一緒に行動しているせいでレベル上げが大変なので、より狩れる場所は大歓迎な様子だ。
「ロデン先輩はもうLV54か!」
「ここに着いた当初はLV46しか無かったからね、とても脅威的なんだね。レベルが上がらなくなるまでずっとここで狩りをするんだね」
「俺もさっきLV53に届いたぜ、本当にここはレベルが上がりやすい。たった1日や2日でLVが4とか5も上がるなんて聞いたことないぜ」
「その調子ならダンジョン週間が終わるまでには六段階目ツリーの開放も夢じゃなさそうだな!」
「全くなんだね」
「ゼフィルスには大きな借りが出来ちまったな! だが、SSランク戦じゃ手加減はしないぜ?」
「それは望むところだ! 全力で掛かってこい! 〈エデン〉は全力で迎え撃つぜ!」
「それは勘弁してもらいたいんだね」
「がははははは!」
「はーっはっはっは!」
あまり交流の無かった〈カオスアビス〉ではあったが、【暴食】のロデン先輩は見た目によらず、結構親しみ深い人だった。
さて、次はどこに向かうかな。




