#1713 〈巣多ダン〉最奥に続々集結、次世代紹介も!
「ここが、61層か(つ、ついに来てしまった。魔境の極地に……)」
「そうだカイエン先輩。ここから先が61層、またの名を〈六ノ入口〉だ」
「〈六ノ入口〉……」
60層守護型ボスを倒した俺たちは、階層門を見事に潜り抜け、ついに61層まで到達した。
見た目的にはかなり森が深まっている印象。
その光景を見渡し、〈サクセスブレーン〉〈ミーティア〉〈筋肉は最強だ〉の面々もさすがに圧倒されたように……というか圧倒されていた。
「〈六ノ入口〉? そんな呼び名があったんだったか?」
「いや、俺は聞いたことがないが……」
なお、俺の台詞にメルトとラウが後ろでコソコソ話していたようなのだが、俺には聞こえなかった。
ちなみに〈六ノ入口〉とはそのまんま六段階目ツリーの入り口、ここから先でようやく六段階目ツリーを開放できるよという意味だ。ゲームではみんなよく使ってたんだよ、なんか語呂がかっこいいから。
でもなぜか俺の自重さんが直感さんと揉めている。はて、いったいどうしたのだろう? 自重さんが「俺は旅に出る!」とか言っている気がする。がんばれ直感さん! 引き留めて!
「さあ、エリアボスを周回して、みんなで六段階目ツリーを開放するぞ! ここからどれだけ強くなれるかは各ギルドの努力次第だ!」
「! そうだったな。――ゼフィルスさん、改めて礼を言わせてほしい。ここまでキャリーしてくれたこと、誠に感謝している(メンバーに弱いギルドマスターだと思われたくない! こ、ここで頑張らないと……)」
「ゼフィルス君、感謝感謝だよ~!」
最初に礼を言いに来たのは〈サクセスブレーン〉のカイエン先輩とナギだった。
深くお辞儀の礼を取ると、バサッとマントを翻しダンジョンの奥を真剣な表情で見つめるカイエン先輩。かっこいい! 仕草1つ1つからかっこよさが滲み出ている気がするぜ!
「行くぞナギ!」
「アイサー!」
「ではゼフィルスさん、わたくしももう少し彼らについていきますわ!」
「がんばれよー!」
そう、かっこいいカイエン先輩やナギたち〈サクセスブレーン〉とリーナを見送る。
残りのダンジョン週間は5日。
この期間にどれだけ育成できるかがキモだ。
まだ深層では慣れていないだろうからとついていくリーナにも手を振り、〈サクセスブレーン〉とリーナ班を見送った。
「ゼフィルスさん。ありがとうございました。SSランク戦ではきっと悔いのない戦いをしてみせますわ」
「アンジェ先輩! 応援してるぜ! そしてギルドバトルも楽しみにしてる!」
〈ミーティア〉は代表でアンジェ先輩から挨拶があった。
後ろでは規則正しく〈ミーティア〉所属の麗しき女子たちが一斉に礼を取り、美しい規律を生み出している。
「何か困ったことがあったら言ってほしいのだわ。在学期間はもうあまり無いけれど、卒業後は〈攻略先生委員会〉にいると思うから、いつでも声を掛けてね」
「ありがとうマナエラ先輩」
サブマスターマナエラ先輩から言われたのは、どうやら〈ミーティア〉の総意の様子だ。
〈ミーティア〉は現3年生ギルドと言われ、3年生をメインにして構築されているギルドである。その多くが卒業を控えていた。
だが同時に卒業しても実に9割以上が学園で教師の道に進むらしい。
素晴らしい。まさに俺や学園長の狙い通りだ!
最上級ダンジョンにも潜れるよう、しっかり六段階目ツリーを開放せねば。
また、マナエラ先輩は顔も広くてらっしゃるようで。
「あれ? おかしいのだわ。ここに冒険者がいるように見えるのだわ。きっと気のせいね」
「気のせいじゃねぇから! お、俺だってバッチリこの61層に進出してきてるから!」
「うそよ。そんな、少し前まで学園の底辺を独走していた冒険者が今やこんなところにいるなんて信じられないのだわ。冒険者に抜かれたりなんてしたら、学生の多くが失神してしまうのだわ」
「それってどういう意味!?」
オルクとマナエラ先輩って、仲が良かったんだな。意外な組み合わせだよ。
ギルド同士での交流も盛んで大変良きだ。
「ゼフィルスよ、俺の筋肉が必要になったらいつでも来い。我らはゼフィルスを歓迎する!」
「お、おう。アランの筋肉が必要になったらその時は頼むな」
最後にこれでもかと筋肉を膨らませたアランが礼を言いに来た。
意味はよく分からなかったが、きっと助けになりたいという意味だろう。そうであってほしい。
それから本日はエリアボス周回と〈巣多ダン〉の巣の攻略を敢行した。
〈サクセスブレーン〉は61層で、〈ミーティア〉は62層で、〈筋肉は最強だ〉だけは65層でレベル上げだ。
とりあえずエリアボスや巣の攻略方法は身に着けられたようなので、六段階目ツリーを開放できるのも時間の問題だろう。
その日からAランクギルド及び、Sランクギルドが次々と〈巣多ダン〉の深層に到着してきた。
Sランクギルド〈千剣フラカル〉〈百鬼夜行〉〈ギルバドヨッシャー〉。
Aランクギルド〈獣王ガルタイガ〉〈集え・テイマーサモナー〉〈カオスアビス〉〈世界の熊〉〈氷の城塞〉〈天下一パイレーツ〉の9ギルドである。
内〈天下一パイレーツ〉だけは実力不足で遅れ中。
シズに調教(?)されながら猛スピードで攻略しているとは報告を受けているが、調教ってなんだろう? まあ、もうちょっと掛かりそうな予感だ。
「リカちゃん! ここまでキャリーしてくれて本当にありがとうですよ! お姉ちゃんも頑張りますから! あとフィリス姉様のことお願いします!」
「どういたしましてリン姉様。フィリス姉様のことは私に任せてくれ。ゼフィルスも空き時間を確保出来たようなのでな」
〈千剣フラカル〉にはリカ班がキャリーを担当していた。
ギルドマスターのリン先輩とリカは姉妹だし、仲が良い様子だからな。
加えて剣の使い方を学びたいということでクイナダ、ノーア、クラリスが同行していた。
「ゼフィルス、久しぶりだな」
「お、セーダンじゃないか! 久しぶりだな!」
「ああ。ゼフィルスが今回の企画を考えてくれたと聞いた。とても助かった。あの戦艦のキャリーがなければ、とても間に合わなかったと思う」
「喜んでもらえてよかったよ。それよりセーダンはどうなんだ? 〈千剣フラカル〉の次代を任せる的な話が来たと聞いたが?」
俺のところにやってきたのはセーダンだ。
なんとセーダン、〈千剣フラカル〉のギルドマスターにならないかとリン先輩から誘いを受けたらしい。だが、
「いや、剣を持たない俺が〈千剣フラカル〉の次期ギルドマスターは務まらないだろう。エレメースをギルマスに推薦し、俺はこのままサブマスを継続する。だがレベルが追いつくのであればサブマスはナツキでも良いと思ってな。現在交渉中だ」
「そうなのか?」
爽やかな顔で首を振りセーダンはそう答える。
エレメースとナツキといえば、リーナと元同級生の〈1年51組〉女子。
エレメースは「男爵」カテゴリーで【剣姫】へ、ナツキは「侯爵」カテゴリー持ちで【炎武侯】に〈転職〉して、〈転職制度〉を受けた子だ。
この前の2年生クラス対抗戦では、エレメースは【撃滅の剣姫】に、ナツキは【炎刀大名】に〈上級転職〉していたのを確認しているし、実際かなり強かったらしい。
セーダンは1年生の初期から〈千剣フラカル〉に加入し、重用されてきたが、トップは荷が重く、初代ギルドマスターのカノン先生に習い、同じ「男爵」で【剣姫】系統に就いているエレメースと「侯爵」のナツキを推しているのだという。
「〈千剣フラカル〉はまだまだ強くなる。SSランク戦を楽しみにしているぞ」
「俺もだ! セーダンが強くなるの楽しみにしているぞ!」
そう、拳を合わせてセーダンを見送ると、次に到着したのは〈百鬼夜行〉だ。
「ようやく着いたなの、とっても強行軍だったの」
「ホシ先輩はほんま体力がありまへんなぁ。そんなんやとSSランク戦大丈夫か不安になりますえ? ほれ、ミサトはんやアリスはんのあの健脚を見習いなはれ」
「うう、ヒーラーや魔法使いって、普通そんなに健脚は必要無いと思うの」
「そんなんキキョウはんに笑われてまうえ~」
「後輩ちゃんの前では、頑張るのよ……!」
「ホシ先輩、ハク、お疲れ様」
そう労って手を振ると、俺に気が付いた2人も手を振ってくる。
あと2人から少し離れて警戒していた様子のミサトもだ。あ、メルトに抱きついた。
「メルト様ー! ようやく癒やしの場を見つけたよー!」
「な! ミサト、いきなり抱きついてくるんじゃない!」
「いいじゃんメルト様ー」
おっとミサトがいつもでは考えられないくらいメルトに甘えている。
少しメルトと離しすぎたか、それとも〈百鬼夜行〉に配属させたのが原因か。
「そういえばハクのところはホシ先輩が卒業したらどうするんだ? ギルドマスターはやっぱりハクがなるのか?」
「そんなん当然や。今は卒業してしもうたヨウカ先輩の後を継ぎ、うちが〈百鬼夜行〉を引っ張りますぅ! サブマスについては、まあ適当に?」
「適当なんだ?」
やっぱり〈百鬼夜行〉の次期ギルドマスターはハクらしい。
1年生の頃から続く自信たっぷりな言動は頼もしさすら感じるぜ。さすがは2年1組所属。
ちなみにここはミサト班、キキョウとアリス、ルルにシェリアが担当している。
最初にキキョウが同じ【嫉妬】のホシ先輩からいろんな事を学びたいと言い、アリスがキキョウに付いていって、ならばとお姉さん風を吹かせるルルが合流し、シェリアも付いていった、という流れだ。ちなみにミサトはハクのリクエスト。
どうやらミサトはたくさんハクと交流しまくったらしい。
たわいない話をしつつ見送ると、次に来たのは〈ギルバドヨッシャー〉の面々だ。
「はーっはっはっは! ゼフィルス氏よ! ここまで連れてきてくれてありがとう!」
「「「「「ありがとう!」」」」」
「混沌!」「マージ感謝!」「震えました」
「インサー先輩じゃないか! 〈ギルバドヨッシャー〉も着いたのか!」
高笑いしながらも溢れんばかりの感謝を携えたインサー先輩が走ってきたので熱くガシッと握手する。
後ろのメンバーたちもテンションが高い。
まるで初めて〈六ノ入口〉に到着した俺を思い出す光景だ。
良いテンションである。
「うむ。彼らとの話はとても有意義だったよ。色々な研究が捗った」
「お、ニーコもおかえり」
ちなみに〈ギルバドヨッシャー〉をキャリーしてきたのはニーコ班。
ニーコの話では〈ギルバドヨッシャー〉と大変話が合って盛り上がったらしい。
まあ、良きかな?
ちなみに同行したメンバーはエリサ、フィナ、ルキア、カイリだ。
みんな話が大いに盛り上がったそうである。特にエリサの〈良い夢をごちそう様〉戦法の完成版や、ルキアの『タイムストップ』は大注目。『タイムストップ』や『クロノス』はその後の行動によって大いに戦法の幅が広がるため、研究熱心なギルドにとって垂涎の的だったようだ。
カイリのダンジョン攻略術も大変興味を持たれた様子でなにより。
なお、フィナはしれっと〈ギルバドヨッシャー〉に混じってエリサをいじる係だったらしいとはあとで知った。なんでも〈エリサ爆撃戦法〉の新バージョンを開発したのだとか。なにそれ、すげぇ見たいんだけど!
「そうだ、ゼフィルス氏よ。一応紹介しておこう。この度サブマスターのオスカー君が次期のギルドマスターに就任することに決まったぞ」
「混沌!」
「お、そうなのか! さすがだなオスカー君! これからもよろしくな!」
「混沌!」
サブマスター。はて? なぜかその言葉に一瞬引っかかりを覚えるのと一瞬オサムス先輩が視界に入った気がしたが、気のせいだったか?
「それと、オスカー君の補佐、サブマスターはチルミ君に任せる予定だ」
「精一杯頑張るよー!」
「混沌!」
そして次期サブマスターには【ワールドマッパー】のチルミが就くらしい。
なるほど【エウレカカオス】とも相性が良い。なかなか良い人選と言えるだろう。
「それと、オスカー君の弟子も紹介だ。まだ新人だがすでに【エウレカカオス】に就いているシンジ氏だ」
「えっっっっと!? よ、よろしく? お願いします?」
「まさかの次世代! 確かこの前ユミキ先輩とインタビューに来てた人だよな。よろしくな!」
なぜか困惑しているシンジとも挨拶を交わす。
こうしてSランクギルドとの邂逅も終わり、それぞれを各階層まで連れていったのだった。




